ファッションは世界共通語 第5回 「好き」の力。 音楽がつなぐ縁 ~北アイルランドまでVan Morrisonのライヴを観に行く~

岡田亮二
 
ファッションを生業にしている身ですが、ファッションと同じくらいに音楽が好きです。
そして、どんなことでもリストを作るのが好きです。
とりわけ音楽関連のリストについては、例えば「無人島に持っていくべき音源(Desert Island Discs)5選」とか「RYOJI OKADAのスーツをステージで着て欲しいミュージシャン10人」とか「本年のベスト20ディスク」とか「理想のラインナップ30:自身で音楽フェスを開催出来るとしたら」とか、思いついたらすぐにノートに書きこんでしまう習性があります。

ちなみにDesert Island Discsは、この25年ほど候補こそ挙がれどいまだに最終選定まで至っていない超難問で、これはきっと全音楽マニアにとっての永遠のテーマ、究極の問いかけに違いないと確信しています。

ところで、5年ほど前に「死ぬまでに絶対に生ライヴを観たい3大ミュージシャン」という新リストの作成を思いつきました。

その際、そのミュージシャンの音楽を心から愛していることや、そのミュージシャンの生ライヴを一度も観たことがないといった大前提以外に、Desert Island Discsに「ベスト盤やライヴ盤を含んではいけない」というルールが存在するように、新リストにも3つのルールを設けました。

• 60歳前後、あるいはそれ以上の高齢である(≒残りの活動期間が短い=生ライヴを観るチャンスはそう多くは訪れない)こと。
• 新譜を一定頻度でリリースしているなど、「現在進行形」の活動をしていること。
• 様々な事情から日本に来る確率が低いこと。

以上です。


加えて、観るとすればフェスではなくワンマンライヴであるという条件も課しました。
故Miles Davis、故Dollar Brand、故B.B. King、故Junior Wells、故James Brown、故Nusrat Fateh Ali Khan、故Lou Reed、故Michael Jackson、Otis Rush、Buddy Guy、John Hammond、The Neville Brothers、Dr.John、Jimmy Cliff、Prince、Bob Dylan、Paul Brady、The Rolling Stones、Bruce Springsteen、Eric Clapton、Huey Lewis & The News、U2などなど、多くのレジェンドたちの生ライヴを観てきた僕が、どうしても生ライヴを観たい!と思いリストアップしたミュージシャンは以下の3人でした。

• Leonard Cohen:1934年9月21日生まれ
• Van Morrison:1945年8月31日生まれ
• John Hiatt:1952年8月20日生まれ

2015年11月現在で80代、70代、60代の3人。
Leonard CohenとVan Morrisonは来日公演を一度もしたことがなく(そして、今後も来日公演実現の可能性は限りなく「0」に近く)、John Hiattは1988年に一度来日したきり日本に来ておりません。

それゆえか、日本における知名度はさほど高くない人たちばかりですが、世界的には皆さん、相当の偉人です。

そして、彼らは、最近になってもかなりの頻度で素晴らしい作品をリリースし続けています。
死ぬまでに絶対に観る!と決意を固めるに相応しい3人ですよね。


この高難易度リストの一角を崩すチャンスが最初に訪れたのは2年前でした。
フィレンツェ滞在がメインのイタリア出張のスケジューリングをしていたら、予定日程の最終日前日にLeonard Cohenがローマでライヴを行うことを発見、早速最終滞在地をミラノからローマに変更しました。

極上だった当時のニューアルバム”Old Ideas”を携えてのヨーロッパツアーのローマ公演、逃す手はありません!

ミラノでしようと考えていた仕事を諦めて趣味の音楽を取るという、かなりの公私混同っぷりですが「死ぬまでに絶対に観たい」のだから仕方がありません(笑)。

実は会場がローマの中心地からかなり離れていたり、地下鉄がストライキをしていたり、21:00スタートの二部制で終演が24:00過ぎだったり、かなりいろいろあって諸々焦りもしたのですが、なんとか無事にライヴを堪能出来、ツアーTシャツも購入出来、終演後はスムーズにホテルまで帰ることが出来ました。

会場はローマオリンピックで何かの競技用に作ったらしい大きな施設で、フルキャパシティでこそありませんでしたが、5,000人くらいは入っていたと思います。


Leornad Cohenがここ日本で1公演あたり5,000人を、いや、3,000人でも動員するのはまず不可能でしょうし、ソロ形式の公演はあり得ないでしょうし、レギュラーバンドは大所帯だしで、やっぱりどう考えても日本公演は難しそうですよね。。。
それはともかくとして、夢にまで見た生Leonard Cohen、本当に最高でした!

次にチャンスが訪れたのは今年の5月でした。
なんと、2014年7月に充実のニューアルバム”Terms Of My Surrender”をリリースしたばかりのJohn Hiattが来日するというではありませんか!
まさにJohn Hiattの北米ツアーのスケジュールをチェックしていたタイミング、なんとも嬉しいニュースでした。

残念ながらバンドではなくソロ公演ではあるものの27年振りの日本公演、しかも住居から自転車で10分もあれば行ける六本木のライヴハウスでの公演です、「死ぬまでに絶対に生ライヴを観たい3大ミュージシャン」の一角を崩すチャンスがこんなにもラッキーな条件で訪れるなんてほとんど奇跡です、迷わずチケットを購入しました。

あまりの感動のため、そして、プライヴェイトでちょっとした問題を抱えていたせいもあったのでしょうか、ライヴの中盤あたりで涙腺が決壊したのも記憶に新しいです。

そして、最後にして最大の難関としてリストに残ったのはVan The ManことVan Morrison。
ポピュラーミュージック/ロック史上では3人の中で最もレジェンダリーな人物、そして、Leonard Cohen以上に日本に来ることがあり得ない(と思われる)孤高のシンガー。。。
が、しかし、どうしても、なんとしても、この偉人が70歳になる前に生ライヴを観たくなってしまい、8月に北アイルランドまで行ってきました!

しかも、わずか200人くらいのキャパシティで行われるディナーショウ形式のスペシャル2daysライヴを2日とも!!

しかもしかも、2日目の座席はフロントロウのセンターテーブル!!!
毎年即日完売になるこのスペシャルライヴのプラチナチケット、しかも、フロントロウの座席をどうして取れたのか、
これには理由があります。

Florianさん、ドイツで建設会社やフィルムプロダクションを経営するお得意様です。
ジャパニーズアートのコレクターとしてもとても熱心かつマニアックな御仁で、上記の3人のミュージシャンたちとは異なり(笑)、頻繁に日本にいらっしゃる方です。

これまた音楽マニアの友人にFlorianさんを紹介してもらったのは2年前のお正月のこと、以来、来日の度にジャケットやシャツをオーダーして下さっています。

そのFlorianさんが、年間10本以上のライヴを観に行っているほど猛烈なVan Morrisonファンだと知ったきっかけは、店で流していたHothouse Flowersというアイリッシュバンドの音源だったと思います。

確か、1年半ほど前の話です。
「このバンド、僕が世界で最も好きなバンドのひとつHothouse Flowersの2ndアルバムです。アイルランド出身のバンド。アイリッシュミュージックはやっぱりいいですよね~~~!」みたいな話になって。

「アイリッシュミュージック、いいよね!じゃあVan MorrisonやChristy MooreやAltanなんかも好きなの?」。
「もちろん!そういえば、去年もPaul Bradyのライヴを観ましたよ」。
「へ~~~!私もVan Morrisonは心底好きだよ!つい最近もロンドンとダブリンのライヴを観に行ったよ」。
「まじでっっ!?」という具合に盛り上がったのですが、それ以来、Florianさんからいただくオーダーを含めた服の話が中心だったふたりの会話の割合はガラリと変わりました。

具体的には、20%が以前の会話の中心だった服の話、15%が彼が作った映画や共通の友人Sのおかしなエピソードなどの四方山話、そして、残る65%がVan Morrisonを筆頭にした音楽の話、くらいになったでしょうか。

会食に行った時には音楽の割合は更に高まります。
以前も、せっかく5人で食事に行ったのに、3時間くらい延々とふたりでVan Morrisonの話に夢中になってしまい、他の3人に呆れられたことがあります(笑)。

もちろん変わったのは会話の割合だけでなく、ふたりの距離感も変わり、その時以来、お互いが古くからの友人のような感覚を持つようになりました。

それが証拠に、それ以降Florianさんから「Ryojiさん、このライヴとこのライヴのチケットをプレゼント出来るからヨーロッパ出張が作れればついでに足を伸ばしなよ」「このライヴはとてもスペシャルなんだけれどチケット取れるから観に来ない?招待するよ」というお誘いが頻繁に届くようになりました。

残念ながら、最初の頃はうまく日程が合わなかったりして、なかなかお誘いに便乗出来ずにいたのですが、John Hiattのライヴを観て感動したことでいよいよVan Morrisonのライヴを観ずにはいられない気持ちになってしまい、店の3周年イヴェント等が終わって忙しさが落ち着いた7月中旬に以前から誘われていた北アイルランド行きを遂に決意、Florianさんにコンタクトをして、その日の内に航空券を抑えました。

「ロンドン2泊 → ダブリン1泊 → (ライヴ会場がある北アイルランドの)ニューキャッスル2泊 → ダブリン1泊」の旅程を組んだ(結局帰りのフライトでトラブルがあってロンドンにもう1泊しましたけれど。。。)のですが、Florianさんが「わざわざ日本から来る大事なVan Morrisonフレンドなんだから、それくらいはさせてよ!」と、ライヴのチケットだけではなくロンドン以外の宿泊とディナーをすべてプレゼントしてくれるという男気あふれる申し出をしてくれたのには心底びっくり、そして、深く感激しました。

音楽がつなぐ縁、絆、友情、恐るべし!!!です。
そんな贅沢な幸福に満ちたVan Morrison生ライヴ観戦ツアー。
主たる目的であったライヴはいうまでもなく鳥肌モノの素晴らしさでしたけれど、ダブリンからニューキャッスルへの史跡を巡りながらの車での移動、ニューキャッスルの美しくものどかな海岸や緑地の散策、Van Morrisonの誕生地ベルファストへの弾丸訪問、ダブリンでの極上ディナー、そして、その間に延々と繰り広げられたVan Morrisonを中心とする音楽の話、旅のすべてが本当に得難いものでした。
こんなにもプレシャスな時間をプレゼントして下さったFlorianさんには感謝しかありません。


今回のケースは音楽でしたけれど、「好き」の力って本当に底知れませんよね!
「好き」がFlorianさんと引き合わせてくれて、「好き」がVan Morrisonの極めてスペシャルなライヴに誘ってくれて、「好き」がプレシャスな時間をプレゼントしてくれました。

「好き」の力。
「好き」がつなぐ縁。
純粋な「好き」という気持ちは、人生をとても美しく豊かに彩ってくれます。

このコラムの第一回目で「ファッションは世界共通語」と書きましたけれど、「好き」は世界共通にして最強のコミュニケーションツールかもしれませんね。

今回の旅を思い返してそんな風に思いました。
そして、これからも「好き」を大切に日々を過ごしたいと思いました。

さて、今回の旅で「死ぬまでに絶対に生ライヴを観たい3大ミュージシャン」を制覇したので、早速リストを更新することにしました。

素晴らしいニューアルバムを出したばかりのLos Lobos
アメリカンロック界の良心Tom Petty And The Heartbreakers
この2組は即時に決まったのですが、もう1組が。。。
Nick CaveかTom Waitsか。。。あるいは他の誰かか。。。
う~~~ん、悩みます!!
 
 

岡田亮二

LOUD GARDEN Creative Director ,RYOJI OKADA Designer
岡田亮二

LOUD GARDEN Creative Director ,RYOJI OKADA Designer岡田亮二1971年 東京生まれ。
1995年より、イギリスを代表する老舗テーラー、GIEVES & HAWKESの日本展開における企画責任者として活躍。
2002年10月に自身のブランド/テーラーショップ、A WORKROOMをメンズアパレル企業と共同で立ち上げる。
A WORKROOMは、アヴァンギャルドなテーラーとして直ぐに頭角を現し、ミュージシャン、俳優、フォトグラファー、アスリート等、クリエイティヴな職業に就く数多くの著名人を顧客名簿に持つブランドへと急成長する。
2010年に、既製品のコレクションライン、A WORKROOM by Ryoji Okadaを立ち上げ、世界最大の紳士服見本市PITTI IMMAGINE UOMO(フィレンツェにて半年に一度開催)にて発表。
ヨーロッパの小売店に自身がデザインした服を卸すという長年の夢を実現させるとともに、イタリアで最大部数を誇る日刊紙Corriere della Seraで取り上げられる等、ヨーロッパのファッション業界に大きなインパクトを残すことに成功する。
PITTI IMMAGINE UOMOへの出展を4シーズン続けた後に「敢えて茨の路へ!」と決意、完全なインディペンデントの立場を得るためにA WORKROOMを解散させ、2012年に自身のテーラーショップLOUD GARDENと自身のブランドRYOJI OKADAを設立。
「独力での日本発世界」を目指して、”Love, Passion and The Heart of Rock’n Roll!”な日々を生きている。

LOUD GARDEN official website www.loudgarden.com
RYOJI OKADA official website www.ryojiokada.com

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