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世界は身近にあるもんだ ~国歌研究家 日本で海外の魅力を探す~ 第16回

“多彩”にして“多才” 多くのポテンシャルを持つボリビア多民族国を知る

国歌研究家 国歌の輪プロジェクト代表 浅見良太

 
“ボリビア” は日本でも聞き馴染みのある国の1つではないでしょうか。
アンデス文明やウユニ塩湖の写真などその名に触れる理由は様々。また1899年から始まった日本人の移民がボリビアに住み現在も多くの日系ボリビア人がいることも親近感を持つ理由かも知れません。しかし、私たちが知るボリビアの多くは文化や歴史です。
日本は他国の情報を得る機会が極端に少ない国で、特に経済に関しては弱いと言えます。
南米の内陸国ボリビア経済にはどのような動きがあるのか。
港区にあるボリビア大使館にて、ホセ・バスケス書記官にお話を聞きました。


今回取材に応じてくれたホセ・バスケス二等書記官


知られざる多彩な魅力

正式名称は“ボリビア多民族国”ですが、この“多民族”とついている理由は?

私たちの国は色々な意味で“多彩”です。36の先住民がいますので人種はもちろん、音楽や食事をはじめとする文化など地域によって変わってきます。
2009年に現在の国名になったわけですが、以前はボリビア共和国という名前でした。
共和国時代ではスペイン語が公用語だったのが現在は37の言語が認められています。もちろん、先住民だけでなく他の国から移住してきた方々もボリビア人として認めたんですね。
各個人のアイデンティや文化が認められるようになったんです。また、都市を中心にしてきた国の政策を地方にも目を向けるようになりました。

日本ではウユニ塩湖が有名です

恋人と行くならウユニ塩湖ですね(笑) 私も来年行く予定です。
実はボリビアは昨年、ワールド・トラベル・アワードで“世界で最も魅力的な文化的観光地”に選ばれました。それほど魅力的な場所なんです。
ボリビアは先程も申し上げたように“多彩”なんですね。それは民族に限らず自然も例外ではありません。標高のある山岳地帯や熱帯雨林の地域があったりと場所によって全く違う魅力が見れますので一周してほしいですね。
例えば、世界で最も高地にある湖“チチカカ湖”や熱帯のアマゾン。ユネスコの世界遺産にも登録されているティワナクの遺跡はインカ帝国の前に発展したプレ・インカの遺跡・文化を見ることができます。



ボリビア経済の今

ボリビアの経済状況は?

過去10年で経済はかなり良くなりました。4%の成長率で堅調です。1番の理由は、リチウムなどの天然資源をこれまで外資資本の企業が行っていたのを、10年前から国内会社が行うようになったためです。これまで大半の利益が海外に流れていたものを100%国内利益になりました。
またボリビア政府は海外からの投資を積極的に呼び掛けていています。ボリビアの電気や土地はとても安いので投資をする上で魅力的なんです。

駐日ボリビア大使館の最優先課題は何でしょうか?

大使館は様々な業務があるので1つに絞るというのは難しいですが、貿易は力を入れている分野の1つです。
日本と距離があるため、これまで貿易に関しての進展があまりありませんでした。
今まではどういった市場があるのか見えていなかったので、日本人がどのような物に興味を持つのか分析をしています。
また、昨年はスーパーフードで注目されるボリビア産のキヌアを紹介するイベントを行いました。今年も積極的に行って、単に紹介するだけでなく貿易に繋げたいです。
これまでは個人でバラバラに輸出入を行っていたのを出来る限り大使館がサポートするようにしたいと思っています。日本人がボリビアから輸入するとなると金などの鉱物が多いのですが、先ほど申し上げたようなキヌアやチアなどのスーパーフード、カカオやコーヒーなど沢山魅力的な物があるので、そちらにも関心を持ってもらいたいですね。


来日したばかりにも関わらず、会話の端々に日本語を話す書記官

日本でボリビアコーヒーはあまり聞かないですね

ボリビア産コーヒーはコーヒーファンからはとても親しまれています。高地で作られているのが特徴で、それにより魅力的な香りや味を作り出しているんです。無農薬でオーガニックなのも好まれているポイントですね。
毎年ボリビアコーヒーのコンペがあって、現大統領の名前が付いた“エボ・モラレス大統領賞”があるんです。これは輸出用で政府が積極的にコーヒーの品質を上げる支援の一環なんですよ。
おっしゃる通り日本への輸入量はそれほど多くありません。
理由はボリビアにコーヒーのエクスポーターがいないことです。輸出するシステムが確立されていないんですね。現状では輸入する側が現地に行って仕入れるしか方法がない。
また距離も大きな問題です。海に面していないことが貿易をするうえで障害となっています。
ボリビアでは貿易省を設けて、これらの問題解決のため取り組んでいます。


大使館に飾られていたエボ・モラレス大統領の写真


内陸国の問題解消のカギを握る 南米大陸横断鉄道建設プロジェクト

内陸国ですがチリとの鉄道があり、それで海と繋がっていると聞きましたが

1904年にチリとの間で海の経路を残すという条約を結びました。しかし現在、その鉄道はチリの国有ではなく企業が運営しているので、その鉄道を使用する場合は使用料を払わなくてはいけなくなってしまっているんです。
その問題を解消するために “トレン ビオ オセアニコ”(日本名:南米大陸横断鉄道建設プロジェクト)というプロジェクトが進行中です。
これはペル―、ボリビア、ブラジルを鉄道で繋ぎ、太平洋と大西洋を横断するという巨大プロジェクトで、船便で日本までパナマ経由で60日間かかっていたものを、完成すれば半分で済む予定です。
プロジェクトは2年前から始まって、現在各国と調整を行っています。
各国が様々な国に支援を求めていて、先日もボリビアの大統領がオーストリアに行き支援を求めました。
新幹線のテクノロジーなど日本からの支援も求めています。


実は去年の1月に日本で2人目のお子さんが生まればかりというお父さんな一面も


隠れた多才を持つ国 ボリビア

いかがでしたか?
太平洋と大西洋を鉄道で結ぶという壮大なプロジェクトが進行中だという南米ボリビア。
このプロジェクトの完成は3つの当事国だけでなく、周辺国の流通にも大きな影響を与える事は間違いありません。そのど真ん中に位置するボリビアの存在感は今後増していくことでしょう。
また、日本では知名度が低いもののボリビア産の農業製品はかなりポテンシャルがあると言えます。しかし、その魅力を十分に紹介しきれていないのはもったいない。多才でありながらその魅力を発信しきれていないのは残念です。
記事はボリビアの表面を触れただけにすぎません。これをきっかけに多彩な魅力を知って頂けたら幸いです。
 

浅見良太

国歌研究家国歌の輪プロジェクト代表
浅見良太

埼玉県出身。テレビ番組制作会社を経て現職。
大学2年の時、ヒッチハイクで埼玉~屋久島間を19台乗り継ぎ往復し、自分の知らない世界に触れ、様々な人に出会える旅の面白さを知る。
2007年、初めての海外旅行でインド・ネパールを1ヶ月周ったことをキッカケに就職するまでにバックパッカーで計30カ国を訪問。
旅中、出会った人に出身国の国歌を歌ってもらい、それをボイスレコーダーで録音する“国歌録音活動”を始め、数多くの国歌を収録。国歌の奥深さ、面白さにはまる。
2010年、名古屋の東海テレビプロダクションに入社。情報番組、バラエティ番組、スポーツ番組などでディレクターを務める。同社在社中も仕事の合間をぬって国歌録音、執筆活動を継続。

2015年に退社後、”国歌研究家”として「国歌を通じた国際交流」の普及を目的に、国歌に関する執筆活動や講演、イベント運営などを行っている。
同年4月、国歌を通じた国際交流の普及を目的とした団体「国歌の輪プロジェクト」を立ち上げ、代表を務める。