山中 一郎の
中堅企業にも求められる移転価格税制対応

<p>山中 一郎</p>

 中堅企業の経営・管理に携わる皆様は、移転価格税制と言えば、名だたる超大規模企業だけの問題ととらえておられないでしょうか?

  • 第1回 移転価格調査は中堅企業もターゲット

     中堅企業の経営・管理に携わる皆様は、移転価格税制と言えば、名だたる超大規模企業だけの問題ととらえておられないでしょうか?確かにこれまでは、「XX 株式会社が海外子 会社との取引で、〇〇億円の移転価格課税を受ける」というような、有名上場企業に係る ニュースが新聞紙上を賑わせて来ました。ところが、最近は風向きが変わり、税務当局は 海外子会社との取引がある中堅企業も移転価格税制の対象として注目しています。

  • 第2回 移転価格文書-ローカルファイルとは?

     海外子会社や親会社を通じてグローバルにビジネスを展開している中堅企業の皆様は、「移転価格文書化」や「ローカルファイル」と言った言葉をお聞きになったことがあるの ではないでしょうか?「うちは規模が大きくないので関係ない」、「あれは海外子会社等と の取引規模が大きい(50 億円以上)企業だけの問題じゃないか?」と何も対策を立ててい ない方が多いのですが、例えば海外子会社との取引金額がそれほど大きくない場合でも、ローカルファイルに相当する書類を作成して、それを当局に提出しなくてはならない場合 があるのです。今回は、このローカルファイル、または、それに相当する書類の作成義務 を見て行きましょう。

  • 第3回 トップマネジメントがリードすべき移転価格税制対応

     皆様は、「移転価格税制への対応」は、経理・税務部門の課題と位置づけておられるのではないでしょうか?確かに、移転価格税制に基づき課税所得を正しく計算する役割を担う当該部門は、多くの企業で移転価格税制の所轄部門となっています。しかし、海外子会社等との取引に係る取引価格(移転価格)は事業・営業部門の事業戦略に基づいて設定され、最終的にトップマネジメントが承認を下すものです。よって、移転価格税制への対応はトップマネジメントの関与が必要になってきます。

  • 第4回 移転価格税制と業績管理

     移転価格税制では、「独立企業間価格」を使うことが求められますが、これが企業グループの業績管理上の取引価格と異なるときはどのように対処すれば良いのでしょうか?

  • 第5回 企業はどのように移転価格税制におけるリスクを回避すべきか

     移転価格税制における企業の一番大きなリスクは、所在国の税務当局から移転価格調査で申告漏れを指摘されて、過去にさかのぼって所得を更正されて多額の税負担が発生し、それが企業グループ損益に影響を与えることです。また、移転価格に関する文書化作成の義務を怠ったり、同一取引について国ごとに異なる説明をしたりすることで、コンプライアンス上の問題に発展することも、企業にとってのリスクです。

  • 第6回 海外子会社との共同研究開発も移転価格税制の対象に

     研究活動を行う際、海外子会社と費用分担契約(コストシェアリング契約)を結んで、親会社・子会社それぞれが研究開発費用を分担するケースが見受けられます。費用の分担と成果物である無形資産の持分の分配は、国境を越えて行われる取引ですので、これは移転価格税制の対象となります。

  • 第7回 移転価格税制の基礎 (1) はじめに

     かつては、移転価格調査と言えば、主に大規模な上場企業に対して行われ、新聞紙上を賑わして来ました。しかし、近年では、調査対象は中堅企業にも及んでいます。今後は大規模な多国籍企業のみならず、グローバルにビジネスを展開する中堅企業も、移転価格文書化を含めた税務コンプライアンスを遵守し、移転価格調査に備えることが、重要な課題と言えるでしょう。そこで、これから9回にわたって、移転価格税制の基礎を解説いたします。移転価格の算定方法、「比較対象取引」の意味、税務当局の調査の執行状況、平成28年度税制改正で再整備された同時文書化義務等のコンプライアンス制度についてご理解いただき、経営リスクの1つである移転価格税制に係わるリスクを回避していただきたいと思います。

  • 第8回 第8回 移転価格税制の基礎(2)~ 知っておきたい移転価格税制

     近年、日本を含む各国税務当局、特に、中国、インド、東南アジアの国々などの新興国は、移転価格に係わる税務調査に力を入れ、多額の税金の追徴を行うことも少なくありません。今や、移転価格税制の知識は、グローバルに事業を展開する企業にとって欠かせないものと言っても過言ではないでしょう。

  • 第9回 移転価格税制の基本的しくみ

     平成28年度税制改正では、OECD(経済協力開発機構)の「BEPSプロジェクト」の勧告を踏まえ、移転価格文書化制度が再整備されました。貴社が海外の関連企業(国外関連者)と取引を行う場合には、本年4月1日以後に開始する事業年度分の税務申告について、この新しい制度が適用になりますので、アクションが必要です。今回は、そもそも移転価格税制の基本的しくみはどうなっているのか、ご説明いたします。

  • 第10回 移転価格税制の基礎(4)「Arm’s Length Price ~ 腕の長さの価格とは?」

     移転価格税制では、海外の関連企業(国外関連者)との取引が独立企業間価格(Arm’s Length Price:ALP)で行われたか否かが問題となります。Arm’s Lengthを直訳すると、「腕の長さ」という面白い表現ですが、これは、「一定の距離をおいた」、つまり、「関連者間でない」という意味があります。当税制では、最も重要な概念です。

  • 第11回 移転価格文書化義務違反のペナルティは?

     脱税などの法人税法違反は究極のコンプライアンス義務違反ですが、移転価格文書化義務を怠るなど、制度を知らなかったために税法で定められた書類の作成を行わなかった場合も、もちろんコンプライアンス義務違反になります。海外子会社等と取引のある企業の皆様には、是非、制度を理解し、推定課税や同業者調査を受けないよう、ご注意いただきたいと思います。

  • 第12回 移転価格税制の基礎 (6)~「移転価格文書化(ローカルファイル)の記載内容は?」

     今回は、海外子会社等との国外関連取引を行った企業に作成が義務付けられているローカルファイルの記載内容について見て行きます。ローカルファイルの税法上の正式名称は、「独立企業間価格算定に必要と認められる書類」です。内容は、「海外子会社との取引の内容を記載した書類」と、「海外子会社との取引に係る独立企業間価格を算定するための書類」とに大きく分けられます。

  • 第13回 国税庁 移転価格ガイドブック公表 ~ 7月より企業訪問開始(移転価格税制の基礎(7))

     2017年(平成29年)6月9日、国税庁が「移転価格ガイドブック~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~」を公表しました。このガイドブックには、同時文書化対応ガイド(ローカルファイルの作成サンプル)が掲載されていますので、移転価格文書化を行う際の実務の手引きとして役立ちます。また、「ガイドブック」としながらも、本年(平成29年)7月に、国税局に同時文書化対象取引に関する「相談窓口」が開設されること、及び、同7月より、税務調査官が、移転価格文書化制度に関する指導、助言のために「企業訪問」を開始することの告知も行われています。海外子会社等との取引の年間受払合計が50億円以上(無形資産の場合は3億円以上)の企業は、企業訪問を「プレ税務調査」と位置づけ、それが税務調査の呼び水とならないよう同時文書化を推進することが肝要です。

  • 第14回 移転価格税制の基礎(8) 「マスターファイルとは?(事業概況報告事項とは?)」

     平成28年度の税制改正において、移転価格文書化制度が再整備され、連結総収入金額が一定額以上の多国籍企業グループに、最終親会社等届出事項、国別報告事項(CbCレポート)、及び、マスターファイル(事業概況報告事項)の国税当局への提供が義務付けられています。また、国外関連者との取引が一定額以上の法人には、ローカルファイルの同時文書化が義務づけられています。本ブログでは、マスターファイルについて見て行きます。マスターファイルとは、「税務当局が重要な移転価格リスクを特定できるよう、多国籍企業グループのグローバルな事業活動やポリシーに関する概要を記載したもの」です(財務省「国際課税関係資料」による)。

  • 第15回 移転価格税制の基礎(9) 国別報告事項とは?(CbCレポートとは?)

     国別報告事項とは、多国籍企業グループの国別の活動状況に関する情報のことです。英語では、Country-by-Country Report と言い、CbCR、CbC Reportなどと略されることもあります。本ブログでは、国別報告事項(CbCレポート)について見て行きます。現在、日本の国税当局は海外関連者取引をはじめとした国際的な課税問題に力を入れ、外国税務当局との情報交換を積極的に行っています。国別報告事項の情報交換もその一つです。グループ全体を見渡せる親会社は、税務上問題となりそうな海外拠点や関連者間取引を洗い出して、移転価格に係る税務リスクの検討、排除を主導することが求められます。

  • 第16回 移転価格税制の基礎(10) ~ 不服申立て、税務訴訟、相互協議とは?

     税務当局の所得の更正などの処分に不服な場合には、国内法で国税不服申立制度が租税条約上で相互協議の制度が権利救済制度として設けられています。しかし、このような事後手続は時間とコストがかかり、必ずしも権利救済につながるという保証はありません。よって、事前に移転価格の正当性を立証して、それを文書化しておき、税務調査に備えることが重要です。また、確定申告書の提出期限までに(取引金額が50億円未満の場合には、税務調査官が指定した日までに)、ローカルファイルを作成して、推定課税や同業者調査を回避し、移転価格に係わる所得更正金額を最小限に抑えることが望まれます。

プロフィール

朝日税理士法人
公認会計士・税理士 山中 一郎


朝日新和会計社(現あずさ監査法人)退職後、現在は朝日税理士法人代表社員および朝日ビジネスソリューション株式会社代表取締役。


国際税務業務、海外進出支援業務の他、株式上場支援業務、組織再編、ベンチャー支援等の税務・コンサルティングサービスを行っている。


主な著書: 「図解&ケース ASEAN諸国との国際税務」(共著/中央経済社)、「なるほど図解M&Aのしくみ」(共著/中央経済社)、


「事業計画策定マニュアル」(共著/PHP) など多数

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