森辺一樹とゲストの特別対談シリーズ【グローバルの流儀】
第1弾のゲストは明治大学 経営学部 教授 グローバル・マーケティング研究の第1人者 大石芳裕氏をお迎えします。ページ5の2

森辺: ここが一番重要だという認識がありましたが、この表現方法はお見事です。 では、この模倣困難性が高いチャネルづくりにおいて3つ重要なことを挙げるとしたらどんな事でしょうか?

チャネル構築の3つのポイント
「良いパートナー」
「営業とチャネルの違いを理解する」
「資金回収の仕組みづくり」

大石: グローバル・マーケティングで重要なことの3つは「スピード」、「現地適合化」、「チャネル」とあちこちで言ってきましたが、ここではチャネルに特化してお答えします。

まず、チャネルというのは標準化/適合化の理論でも極めて標準化しにくいものだと言われてきました。 そして、そういう実証データもたくさんあります。 外国人が現地に行ってチャネルをつくるという事は極めて難しい事です。 いかに国内でチャネルをつくった経験があっても、条件が違うところでチャネルをつくることは非常に難しい。 ですから、良いパートナーを探すという事が1つ目です。

対談風景 日本企業に「途上国で何が困っていますか?」、「何が重要ですか?」と聞くと、 中国でもアジアでも「良いパートナーを見つけること」という回答が一番多いですね。 チャネルづくりのために良いパートナーは極めて重要だからです。

そもそもどうしてチャネルをつくらないといけないのか?を考えると良く分かります。 チャネルをつくらなければ、製品を消費者に届けることができません。 つまりチャネルなしには価値の実現ができないということです。

また、小売店に製品が並んでいないときに広告を打っても意味がないということがあります。 さらに、チャネルの看板やPOPは途上国では最強の広告にもなるということもあります。 ですから、流通業に強いとか財閥系であるとかは別にして、パートナーにはモノを流してもらうチャネルの構築をやってもらう必要があるのです。

経験を積んだ企業、例えば味の素とかは自前でチャネルを構築出来るようになります。 さらにタイでの成功事例をインドネシアに持っていくというような事もできるようになります。

しかし、多くの企業は海外進出当初、チャネルつくりで一番苦労するわけです。 パートナーがそれを助けてくれるなら、良いパートナーを探しましょう。

だから見た目である生態的にきったときにどちらがいいかはなかなか分からないのだけども、 要するにチャネルづくりに良いパートナーか自社の力量があるかどうかが大事です。

日本企業は営業とチャネルを混同してしまう

大石: 2つ目は普段見落としがちですが、営業とチャネルの違いがわかっていないという事です。

営業というのはマーケティングの4Pでいうと、チャネルではなくプロモーションに入ります。 プロモーションの中の広告や狭義の販売促進、つまり見本市やPOPと並ぶ「人的販売」が営業です。

営業とは「取引の締結」が仕事と考えられていますので不思議に思われるでしょうが、マーケティング的には「情報の流通」の一つと考えられています。 つまり情報をマスメディアを通して流すと広告と言われ、人を通して流すと人的販売、すなわち営業と言われる訳です。

実は情報を流す媒体が、マスメディアなのか、人なのかによって分かれているだけです。 ところが日本の場合はマーケティングに対して営業の位置づけが高く、販売すなわちモノを売ることが非常に重視されます。 営業は人が介在しますので「モノを売るより人を売れ」とか、「死ぬ気で頑張れ」とかいう人間論・精神論が幅をきかすわけですね。

もちろん海外でも営業は大切ですが、マーケティングにおけるチャネルの重要性は国内同様、軽視されてしまいがちです。 営業とチャネルを混同してしまう訳です。

対談風景 森辺:だから海外に行くとチャネルづくりが上手くいかない訳ですか?

チャネルづくりは「アーキテクチャ」である

大石: そう、いかない。 チャネルづくりというのは1つのアーキテクチャなのです。

どういう販路をつくりあげて、どういうディストリビューターからリテーラーまで持っていくのか、 都市部から流していくのか、農村部から流していくのか?

販路の全体像の構築し、維持・発展させることがチャネル戦略です。 チャネルを構築することと、つくったチャネルを管理することの2つの課題が有る訳です。

ここを明確に区別すれば営業ももちろん大事なのだけども、 チャネルの構築や維持にはまた別な能力が必要であることが分かって頂けると思います。

ところが営業とチャネルを混同している人は営業のセンスで日本から人を派遣して「お前死ぬ気で頑張れ」、 「とにかくどうにかして売ってこい」みたいなかたちでやる訳ですね。これが限界なのです。

森辺: 本当にそうです。 僕は大石先生が言っていることは100%アグリーです。

グローバルの流儀 特別対談シリーズ(ページ3に続く)

PREV

NEXT

森辺 一樹 (もりべ かずき)

 
森辺 一樹 (もりべ かずき)

スパイダー・イニシアティブ株式会社 代表取締役社長兼CEO
法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科 特任講師

1974年生まれ。幼少期をシンガポールで過ごす。アメリカン・スクール卒。帰国後、法政大学経営学部を卒業し、大手医療機器メーカーに入社。2002年、中国・香港にて、新興国に特化した市場調査会社を創業し代表取締役社長に就任。2013年、市場調査会社を売却し、日本企業の海外販路構築を支援するスパイダー・イニシアティブ株式会社を設立。専門はグローバル・マーケティング。海外販路構築を強みとし、市場参入戦略やチャネル構築の支援を得意とする。大手を中心に17年で1,000社以上の新興国展開の支援実績を持つ。著書に、『「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法』中経出版[KADOKAWA])、『わかりやすい現地に寄り添うアジアビジネスの教科書』白桃書房)などがある。


キーワードから企業を探す
地域から企業を探す
新聞社が教える SPECIAL CONTENTS
プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。