日本企業はチャネル構築を強化せよ

森辺一樹とゲストの特別対談シリーズ【グローバルの流儀】
第1弾のゲストは明治大学 経営学部 教授 グローバル・マーケティング研究の第1人者 大石芳裕氏をお迎えします。ページ5の1

グローバル・マーケティングこそ日本企業の課題

森辺: グローバル・マーケティングとはどういうことですか?

大石: まず国際マーケティングとグローバル・マーケティングを区別するところから入るとわかりやすいと思います。

国際マーケティングの「国際」とはインターナショナルですから、国際マーケティングというのは国境を超えたマーケティングの事ですね。 ただし、国際マーケティングという言葉がつくられたのは国内から初めて海外に出て行くときで、「マーケティングの国内から海外へ」ということを意味していました。 今でもこういう狭い認識(狭義)で使う人がいます。

対談風景 本当は国境を越えて色々な国を跨いでやるマーケティングが国際マーケティングです。こちらが広義になります。

グローバル・マーケティングというのは広義の国際マーケティングの現代的な姿です。 国際マーケティングの中でもグローバルな規模で実施されるようなマーケティング、 例えば少なくとも日米欧の3地域でやっているとか本当に地球規模でやっているマーケティングがグローバル・マーケティングですね。

国際マーケティングを考える場合、1つの誤解があります。 「国内マーケティングだって東京と大阪でやり方が違うではないか、広告のやり方も違うし営業のやり方も違う。 国際マーケティングといっても中国とインドネシアの違いは東京と大阪の違いに過ぎない」というものです。

国境を超えるというのはそういう事ではありません。 国際マーケティングが国内マーケティングと決定的に違うのは、「国を越える」ということです。 国によって制度も違えば文化も違うし、商習慣も違う、消費者のメンタリティーや行動パターンも違う。 国内にはない為替相場という問題もあるし、移転価格の問題もあります。 つまり、そこには新しい領域の問題点が出てくるのです。

実務的な問題でいうと国内で優れたマーケティングをやっている企業でさえ、 グローバルに出て行くと上手くいかないという事が多々あって、ここがいまの日本企業の課題であると思う訳です。

去年、経産省の方々が今年の『通商白書』にグローバル・マーケティングを強調したいのでお話を伺いたいという事でおいでになりました。 これはすごくいいことだと思いました。 経産省は今までメーカーのものづくりを中心にやってきましたが、それがグローバル・マーケティングの弱さに気づいたというのは、 そしてこれを何とかしなくてはいけないと考えたことはすごい前進です。

そこで日頃私が考えていることをお話ししました。 実際、今年6月に発行された『通商白書』はグローバル・マーケティングの重要性を強調したものになっています。

グローバル・マーケティングの4Pは「Place(流通、つまりチャネル)」から始まる

大石: これはある意味日本企業の現実を示しています。 ものづくりは大事なので今後も強化していかなければなりませんが、一方でグローバル・マーケティングを強化しなくてはいけません。

具体的にはマーケティングと言えば4Pと言われるように製品、価格、流通、プロモーションの4つがあります。 国内マーケティングの場合は4Pといえば最初に「product 製品」がきますね。 しかし、グローバル・マーケティングの場合は最初に「Place 流通」、つまりチャネルが最初にきます。 ここが決定的に違います。 国内マーケティングで育った人はどうしても製品が前に来てしまいます。

対談風景 森辺: 大石先生、それすごく分かりやすいです(笑) そうですね、グローバル・マーケティングで最初に来るのはチャネルですね。

最近、弊社では「ものづくりからチャネルづくり」というメッセージを出しているのですが、こちらの表現の仕方の方が伝わりやすいですね。

大石: グローバル・マーケティングとは国際マーケティングの定義からして国境を越えてやるものだけれども、 国境を越える時に、多くの企業が最初は母国(日本)で持っている製品を持っていくわけですね。製品は既にある。

それでは何が一番肝心かというとチャネルづくりです。 チャネルづくりを上手くやれるかどうか、ここが勝負です。 国内マーケティングとグローバル・マーケティングでは似たところもたくさんありますが、決定的に違うところもあります。 グローバル・マーケティングの初期では、まずチャネルづくりを徹底的に強化しなさいという事です。 これがグローバル・マーケティングにおける第1のメッセージです。

グローバルの流儀 特別対談シリーズ(ページ2に続く)

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森辺一樹

スパイダー・イニシアティブ株式会社 代表取締役社長 ファウンダー
森辺一樹

1974年生まれ。
幼少期をシンガポールで過ごす。アメリカン・スクール卒。
帰国後、法政大学経営学部を卒業し、大手医療機器メーカーに入社。
2002年、中国・香港にて、新興国に特化した市場調査会社を創業し代表取締役社長に就任。
2013年、市場調査会社を売却し、日本企業の海外販路構築を支援するスパイダー・イニシアティブ株式会社を設立。

専門はグローバル・マーケティング。
海外販路構築を強みとし、市場参入戦略やチャネル構築の支援を得意とする。
15年で1,000社以上の新興国展開の支援実績を持つ。
著書に、『「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法』(中経出版[KADOKAWA])、『わかりやすい現地に寄り添うアジアビジネスの教科書』(白桃書房)などがある。

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