失敗を失敗で終わらせない。大阪王将の餃子を日本が誇る世界のブランドへ。

森辺一樹とゲストの特別対談シリーズ【グローバルの流儀】
第22弾のゲストはイートアンド株式会社 代表取締役社長 仲田浩康氏をお迎えしての対談です。

「生活食文化を創造するフルライン型フードメーカー」を経営基本方針に掲げ、 「大阪王将」をはじめ数々の店舗をフランチャイズ展開するイートアンド株式会社。 国内に439店舗、海外に52店舗(2018年12月末現在)を構える。 他にも冷凍食品の製造や全国の生協、量販店向けの商品の販売、加盟店向けの食材の製造・卸および販売も行い、 中でも冷凍餃子では国内シェア第2位を誇っている。 自社工場製造が大きな特徴だ。 今年、2019年9月には創業50周年を迎えるイートアンド。 この50年の歩みや国内、海外での事業展開について、そして将来の展望を代表取締役社長 仲田浩康氏に聞いた。

創業50周年。単におなかを満たすだけではなく、「真の幸せ」を提供

森辺: 最初に御社の事業内容と沿革をお伺いできますか?

仲田: 当社は冷凍食品や加盟店向けの食材の製造・販売を行うとともに、 餃子専門店「大阪王将」、らーめん専門店「よってこや」、太陽の恵み味「太陽のトマト麺」などを展開しています。 1969年、大阪の京橋に大阪王将の1号店を開店したのが始まりで、2019年で創業50周年になるんですよ。 創業者は文野新造、2代目が現会長の文野 直樹、私が3代目です。 1977年に大阪王将食品株式会社を設立しました。 創立当初は大阪王将を中心とした外食の会社でしたが、その後、大阪王将というブランドをご家庭でも楽しめるよう、 生協や量販店向けに冷凍餃子を出そうということで、冷凍食品事業に進出していったんです。

2002年に社名をイートアンド株式会社へ変更。 2013年には大阪にあった本社機能を東京に移し、東京ヘッドオフィスを構えました。 海外では2004年、海外初となる香港に1号店を開店しています。 現在ではアジアを中心に9カ国に52店舗を展開し、今後も増やしていこうと取り組んでいるところです。

森辺: 「イートアンド」という社名にはどんな意味が込められているのでしょうか?

対談風景 仲田: 社名を変更したきっかけは、当時すでに食品事業やラーメン業態、レストラン業態をやっていたので、 大阪王将という社名は実態と即していないという懸念があったことに加え、本社を大阪の枚方から大阪市内に移したことです。 社名に込めた想いは、単におなかを満たす「食:EAT」の提案だけではなく、日常の生活食文化に貢献する+「&」を創造すること。 おいしさの追求の本質は、単に「食べもの」や「サービス」の提供にとどまりません。 「食:EAT」を通じて感じるさまざまな感動や喜び、生活のあり方、働き方、遊び方、 自然や都市へのかかわり方が「真の幸せ」につながるという考え方から、社名を変更しました。

森辺: 御社は大きく分けて3つの事業を展開されていますね。 外食事業で140億強の売上があり、食品事業も同じぐらいの売上を達成しています。 そしてその根底を支えているのが生産事業。この3つの事業をそれぞれご説明いただけますか?

仲田: まず外食事業では大阪王将、ラーメン、ベーカリーカフェを展開しています。 先ほどおっしゃられた140億強にはフランチャイズ店舗における売上は入っていません。 あくまで食材を供給するなどフランチャイズ本部としての売上になります。

対談風景 森辺: 大阪王将は大阪初の餃子専門店チェーンとして知られていますね。 私も若い頃はかなりお世話になりました。 あと、太陽のトマト麺も御社のお店なんですよね。 最初聞いた時には「トマトのラーメンって何だ?」と思いましたが、 帰省した時、母親に「おいしいラーメン屋があるから」と言って連れて行かれたのが、その太陽のトマト麺でした。 チーズをかけて食べたら本当においしかったですね。

仲田: うれしいですね。当社でラーメンの主流となるのは、京都の鶏がらとんこつを中心としたラーメンを提供する「よってこや」ですが、 今までにないラーメンを提供していこうということで「太陽のトマト麺」を出店しました。 特に東京では女性を中心にヒットしましたね。 外食事業は海外を含めて491店舗あり、王将がそのうち395店舗、残りは大まかに言うと半分がラーメン、残りの半分がベーカリーカフェになります。

次に食品事業についてお話ししますと、食品事業を始めたのは、大阪王将というブランドを二次活用して、 ご家庭でも大阪王将の餃子を味わっていただきたいという想いからです。 今では餃子、から揚げ、炒飯、中華丼などの冷凍食品を約100種類ラインナップしています。

森辺: 餃子が嫌いな日本人ってほとんどいないですよね。 お店で食べた味が家でも楽しめるというのはうれしいです。 ビールの例でいうと、お店で出すビールはオンの市場、家庭で飲むために量販店で売るビールはオフの市場とよくいわれます。 御社の餃子もオンとオフの2つの市場で収益を上げて、シナジー効果を狙ったわけですね。

仲田: そうですね。この先も外食事業と食品事業、どちらかだけではなく、2本立てで発展させていこうと考えています。

森辺: 御社が食品事業を始めた時にはすでに外食産業の中で一定の地位を確立していました。 そこから新たに食品事業を手掛けるというのは、相当な苦難があったんじゃないですか?

対談風景 仲田: 食品事業を始めたのは、生協に供給し出した1993年です。 実は生協の売上は現在、50億円ぐらいあるんですよ。 最初は加盟店さんとの兼ね合いがあって、なかなか生協で販売することに賛同が得られませんでした。 そこで、まずはクローズドマーケットで始めてみようということで、コープ神戸だけで取扱いをスタート。 それが思ったよりも売れたので、全国の生協で取扱っていただけるようになりました。 最初は外部の工場に製造を委託していましたが、その後、量販店でも供給するようになると、いよいよ自社の工場に切り替えていったという経緯があります。

外食事業の店舗が関西に集中していた中、冷凍餃子は我々が強いエリアではなく、知名度のないエリアからスタートしました。 2001年に、外食の店舗を出すよりも早く、まず冷凍餃子を東京で販売。 そして北海道、東北、九州といった関西から遠い地域から徐々に関西へとエリアを広げ、一番最後に販売を開始したのが大阪です。

油いらず、水いらず、さらに“フタいらず”の画期的な焼き餃子が大ヒット

森辺: 今、御社でヒットしているのはどのような商品でしょうか?

仲田: 一番売れているのが「大阪王将羽根つき餃子」で、ほとんどの量販店の冷凍食品コーナーに並んでいます。 焼き餃子のシェアでいえば全国第2位ですね。 次に人気がある商品が「大阪王将ぷるもち水餃子」で、これは日本国内で一番売れている水餃子になります。

対談風景 森辺: 焼き餃子は多くの冷凍食品メーカーが激戦を繰り広げる中、第2位というのはすごいですよね。 1位が味の素さんだということは知っていましたが、御社が2位とは全然知らず失礼しました。

仲田: 冷凍餃子市場は味の素さんが約50%、当社が約35%、残りがその他のメーカーで、 味の素さんと当社の2社が業界をけん引しているといえるでしょう。 最初は味の素さんだけだったところに、当社が参入した形。 まだまだ味の素さんに追い付くことはできませんが、ずっと背中を追っていくつもりです。 1社の独占市場というものはなかなか大きくならないものですが、競争になったことで市場が伸びました。 だから、味の素さんにも当社の参入を歓迎していただいていています。

森辺: 鈴木奈々さんの「ギョパ!」というCMは、非常にインパクトが強いですよね。 油いらず、水いらず、フタいらずでできるというのは画期的だったんじゃないでしょうか。

仲田: 大阪王将シリーズは2018年にリニューアルしました。 焼き餃子は油いらず、水いらずというのは従来からでしたが、さらにフライパンの“フタいらず”の簡単調理で、 具材はジューシー、皮はもっちり、羽根はパリパリに仕上がるようになったんです。 洗いものの手間まで省けると、非常にウケています。一体どこまで進化するんやと(笑)。

森辺: 要は、油も水も適量が餃子の中に入っていて、 料理が苦手な独身男性であっても失敗せずに羽根つき餃子が作れるというわけですね。 これはありがたい!では、もう1つの生産事業について教えてください。

仲田: 生産事業は当社の製造部門にあたります。 全国3か所に製造工場を構えて、餃子やラーメンの麺などを製造しているわけです。 外食事業だけの企業だと証券コードが9000番台ですが、 当社の証券コードは2882で、これは食品製造業の分類。 製造部門で作った食品の出口が大阪王将という外食の店舗であったり、冷凍食品の量販店であったりすることから、 利益の源は製造部門にあるとして、食品製造業という分類をされたんだと思います。

対談風景 森辺: 国内の事業は総じて順調ということでしょうか。

仲田: 2017年3月期と比べて、2018年3月期は外食事業、食品事業ともに増収増益にはなってはいますが、決して安泰なわけではありません。 冷凍食品市場がずっと伸びてきているので、今後コンビニにも売場を広げていこうと考えています。 冷凍食品のイメージは昔と大きく変わっているので、必要な時に簡単に作って食べられるというのはコンビニの業態にも合っているといえるでしょう。 なおかつ、冷凍食品は鮮度がいいということも認知されるようになってきたので、ますます広げていける状況だと思いますね。

台湾、シンガポールをはじめ、9つの国と地域に52店舗を展開

森辺: 国内の市場は人口減少と少子高齢化により縮小が加速し、IMF(国際通貨基金)の予測では、 2060年度には日本の人口は8,000万人ぐらいになるのではないかといわれています。 どうしても国内だけでは厳しいというのが、どの企業にとっても課題の1つでしょう。 御社はやはり海外には積極的に出ていかれるのでしょうか?

仲田: そうですね。当社はすでに中国、香港、台湾、インドネシア、タイ、シンガポール、 フィリピン、ベトナム、ミャンマーの9つの国と地域に、合わせて52店舗を展開しています。 一番店舗数が多いのが台湾で、次がシンガポールですね。 特にアジアの人口が非常に増えているので、今後はお店もやはりアジアに積極的に展開していくつもりです。 2021年までには、海外の店舗数を100まで増やそうと考えています。

森辺: 食品事業における海外展開はどのような状況ですか?

仲田: 食品事業はまだ香港とタイを中心に輸出をし始めたばかりです。

森辺: 日本の多くの食品メーカーがこぞって海外進出をしようとするものの、なかなかうまくいっていないという現状があり、 特に販売チャネルの作り方にすごく難しさを感じています。 最初は輸出から取り組むものの、当然、関税が乗ってくるので、ある程度、所得の高い国に輸出をしていかなければならない。 御社もそういう意味で、台湾やタイのバンコクにターゲットを絞っているということなのでしょうか? そこから今後、徐々にエリアを広げていくというイメージですか?

仲田: そうですね。実際、味の素さんはもうすでにヨーロッパやアメリカでも売り始められていて、現地に工場も持っています。 当社はまだ海外に工場はありません。 しかし、焼き餃子は世界中に広がっていくに違いないと確信しているので、そのうち当社も海外製造を始めるつもりです。

森辺: 餃子は中国発祥ではあるものの、実は中華圏の人って焼き餃子というよりも水餃子のイメージが強いじゃないですか。 焼き餃子は日本独自の進化を遂げてきた餃子だと思うんですよね。 これだけ焼き餃子の専門店がたくさんあるというのは日本だけです。 焼き餃子の世界展開は、日本の産業輸出に近いんじゃないかなという気がしています。

対談風景 仲田: ただ、メイドインジャパンは1つのステータスではあるものの、今でもまだ放射能の問題があり、日本で作った餃子を輸出できる国は限られています。 それと先ほどお話に出た価格の問題もあり、輸出するには本当に難しい環境にあるのは事実。 そこで、海外に工場拠点を作り、そこからアジア各国に輸出をしていくという戦略を練っているところです。

森辺: 海外展開はやればいいというものじゃなく、タイミングや方法を考える必要があります。 闇雲に出て失敗するというのが、過去30年の日本の大手企業の海外進出のやり方。 早く出たから、海外に法人があるから、工場があるからえらいとか、進んでいるとかということは全くありません。 仲田社長の、今やれることを着実にやっていって、将来、より多くの世界の胃袋を獲るために模索をしているというのは非常に素晴らしいことだと思います。

仲田: 社内でも、どこの国のどういう会社と、どういう形で組めばお互いが最もハッピーになれるのかを話し合っているところです。 アジアでもいろいろな食品メーカーがありますからね。

森辺: 製造業同士でパートナーを組む時に日本側が望むのは、こちらから製造技術を提供して、 現地メーカーからは販路を提供して欲しいということです。 しかし、向こうに技術だけ吸い取られて、挙句に合弁解消されて帰ってきた、なんていう事例は山ほどありますからね。 そういう意味でも慎重にやられている御社の姿勢は賢明だといえるでしょう。

アジア市場に積極的に出ていく決意。失敗を糧に戦略的な海外展開

森辺: 今後、グローバル展開をさらに進めていくために、御社が課題とするのはやはりパートナーについてでしょうか?

仲田: これまでは、合弁会社を作った国も現地資本で展開している国もあります。 結局、現実的にはパートナー次第で店舗展開が大きく変わっていくと思いますね。 もう1つ、海外で製造するにあたって、その国の法律に準拠した工場を作らなければなりません。 国ごとに異なる法律をしっかりと把握すること。今後、そこも非常に重要になると思っています。

対談風景 森辺: 日本の企業は出会い的な要素でパートナーを決めることが結構多いですよね。 パートナーを絞り込むプロセスにしっかりコストをかけると、選んだ後に失敗する可能性が確率論的に減るのに、 そこにコストをかけないので、後になってツケが回ってきます。 また法律も非常に重要で、外資規制がとにかく多い。 特に食品規制は大変難しいですね。 先ほどの放射能の話もそうですし、FDAの認可を取るなどというのも大変です。

仲田: パートナー選びについては、当社にも反省材料があります。 中国からは撤退したこともあり、授業料も払っているので、より反省を生かした海外展開ができるようにならないといけませんね。

森辺: 日本だと失敗することが悪のような考え方がありますが、世界の先進的な企業では、 誰よりも早く始めて、誰よりも早く失敗して、誰よりも早く学ぶ、ということを良しとしているんですよね。 だから、仲田社長のおっしゃった、授業料を払っているということは、私は海外展開において非常に価値のあることだと思います。 何もかもうまくいくなんてあり得ないので。私もこんな支援をやっていますが、 「全部できます、問題ありません、任せてください」なんて口が裂けても言えません。 仲田社長のそういう謙虚な姿勢、大変素晴らしいと思います。

仲田: いえいえ。海外に関しては森辺さんに教えていただかないといかんな(笑)。

森辺: では最後に、御社のグローバル市場における長期的な展望をお聞きできますか?

対談風景 仲田: 真の意味でのグローバル化というのは、まだまだ厳しいと思います。 日本で売れたブランドだから海外ですぐに売れるかといったら、そんなに甘くはない。 ただ、昔、失敗した頃と1つ違うのは、訪日客が非常に増えている点です。 訪日外国人が一番足を運ぶのは外食ですよね。 当社の店舗が台湾で一気に増えたのは、大阪の道頓堀の本店に来られた台湾のお客様が大阪王将のブランドを知っていただくようになり、 そのタイミングで台湾に出店したからに他なりません。 これが非常によく当たりました。 今、台湾には大阪王将が17店舗、太陽のトマト麺が5店舗あります。 このようなことが、アジアをはじめ世界にもっと進出していくきっかけになるのかもしれません。

森辺: ある餃子店に行ったところ、外国人、しかも白人ばかりが食べに来ていてびっくりしました。 最近では中国人も水餃子じゃなくて焼き餃子を食べるようになっている現象もあり、明らかに日本の影響だと思います。 餃子のポテンシャルというのは本当に高いので、これからますます市場が面白くなっていくでしょうね。

仲田: 先日、美食の街として知られるフランスのリヨンで行われた世界最大級の外食産業向け展示会、「シラ国際外食産業見本市2019」に行ってきました。 そこに餃子が出ていたんですよ。 ヨーロッパでも餃子は食べられ始めているという事実を改めて認識しましたね。 当社としてはやはり、特にアジア市場には積極的に出ていかなければならないと考えています。 それは厳しく難しい市場なので、過去の失敗から学んだことを生かし、今後はしっかりとデータ分析をして戦略を練った上で取り組んでいくつもりです。

グローバルの流儀 特別対談シリーズ

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森辺一樹

 
森辺 一樹 (もりべ かずき)

スパイダー・イニシアティブ株式会社 代表取締役社長兼CEO
法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科 特任講師

1974年生まれ。幼少期をシンガポールで過ごす。アメリカン・スクール卒。帰国後、法政大学経営学部を卒業し、大手医療機器メーカーに入社。2002年、中国・香港にて、新興国に特化した市場調査会社を創業し代表取締役社長に就任。2013年、市場調査会社を売却し、日本企業の海外販路構築を支援するスパイダー・イニシアティブ株式会社を設立。専門はグローバル・マーケティング。海外販路構築を強みとし、市場参入戦略やチャネル構築の支援を得意とする。大手を中心に17年で1,000社以上の新興国展開の支援実績を持つ。著書に、『「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法』中経出版[KADOKAWA])、『わかりやすい現地に寄り添うアジアビジネスの教科書』白桃書房)などがある。


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