グローバルの流儀

日本企業のグローバル・チャンネル戦略を考える

日本企業のグローバル・チャンネル戦略を考える

Vol.2 アクセンチュア株式会社 執行役員 戦略コンサルティング本部 統括本部長 清水新氏

森辺: グロバール経営でどんなことが重要になりますか?

清水: 経営で重要なことはキャッシュを生み出すことです。 その為にいかにユニークな方法で儲けられるかどうかが大切です。 商品の差別化が難しくなってきたので、結局、チャネル重要性が増してきました。 ユニークな儲け方はやはりチャネル(販売網)が必要ですし、 その中でユニークなポジションを作るために自社の強みを海外におけるチャネルにもってくるべきです。

対談風景 森辺: 清水さんがおっしゃ海外におけるチャネルとは、グローバル・チャネル戦略になると思いますが、何が一番重要だと思いますか?

清水: 私は一番重要なのは、事業ポジショニンングだと思います。

森辺: 商品でいうとスニッカーズやレッドブル、プリングルスなどは、正にそのポジショニングが明確な商品だと思いますが、 欧米企業はポジショニング明確な気がしますが何が違うのでしょうか?

清水: 1つは見る幅が違います。日本企業はどうしても国内に目が行きがちです。 もともとリスクをとることは良くないというのが日本企業です。 欧米企業はリスクをマネジメントするものをという考えをもっています。更にリスクを数字で表します。

森辺: 難しいですよね。例えばアメリカだってマーケットとしては日本以上に大きいわけだし、 なぜ米国企業は海外を見て、日本企業は見なかったのか?その見る幅はどう違うのでしょうか?

清水: 結局経営はグローズ(成長)かスプレッド(利益)です、利益か成長かを株主も求めている。 アメリカのマーケットだろうと、日本のマーケットだろうと、終焉を迎えるわけです。 だから持続的な成長を考えて経営を突き詰めていけば次の手を打つのが自然の流れです。 それがBOPビジネスで10年かけて収益化しようという発想につながる訳です。 足元の収益を見るか、長期的な視野でみるか、その視野の違いは非常に大きいです。

対談風景 森辺: アクセンチュアではハイパフォーマンス企業という言葉を使われますが、 ハイパフォーマンス企業とはどのような定義なのでしょうか?

清水: 私なりにまとめてみると、アクセンチュアがいうハイパフォーマンス企業は『持続的に成長していく、 そのための取り組みを惜しまない企業』です。 歴史的に見ても常にトップに入っているGEや3Mなどハイパフォーマンス企業は必ず作っているものの改良だけではなく、 抜本的なイノベーションを生み出さない事業は売却しています。 日本企業はどちらかというと、限りが見えてどうにかしなければとなります。 更に最後には固定費が残って撤退という結果になる。どうやって持続的なイノベーションを出すかというと、 当然商品のポートフォリオも見ているし、同時に市場を横に展開することもやっています。

森辺: 日本企業のグローバル戦略をどうみますか?

清水: 日本の大企業はグローバリゼーションをかなり手広くやる。 だからシェアを取れている国もあればそうでない国もあるという具合に勝率が高くなる。 一方、欧米企業はかなりフォーカスします。

アジアの中でもしっかりとターゲットを絞りフォーカスする戦略性を持ち合わせています。 最終的には自社ブランドを諦めて現地のブランドを買収し、参入した国では必ずうまくシェアをとります。

森辺: そうですね、特にグローバル・チャネル戦略が曖昧な気がします。 日本企業にも是非頑張って頂きたいですね。

森辺 一樹 (もりべ かずき)


森辺 一樹 (もりべ かずき)

スパイダー・イニシアティブ株式会社 代表取締役社長兼CEO
法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科 特任講師

1974年生まれ。幼少期をシンガポールで過ごす。アメリカン・スクール卒。帰国後、法政大学経営学部を卒業し、大手医療機器メーカーに入社。2002年、中国・香港にて、新興国に特化した市場調査会社を創業し代表取締役社長に就任。2013年、市場調査会社を売却し、日本企業の海外販路構築を支援するスパイダー・イニシアティブ株式会社を設立。専門はグローバル・マーケティング。海外販路構築を強みとし、市場参入戦略やチャネル構築の支援を得意とする。大手を中心に18年で1,000社以上の新興国展開の支援実績を持つ。著書に、『「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法』中経出版[KADOKAWA])、『わかりやすい現地に寄り添うアジアビジネスの教科書』白桃書房)などがある。