海外ビジネス談

『日本はサル山、欧米はサバンナ』のビジネス観

株式会社アルゴバース 代表取締役社長 瀧田 理康

『日本はサル山、欧米はサバンナ』のビジネス観

半導体素材ベンチャー事業をやっていたとき、あるイタリアの企業とアライアンスを組むことになりました。イタリアというと一般的にはデザインや食、建築分野をイメージする方が多いと思いますが、実は有名なフェラーリがあるように半導体や機械の分野でも超一流の技術力も持つ国なのです。



このとき、いい意味での個人主義をものすごく感じました。会議で議論をしているとき、出席者はそれぞれ強い主張をします。しかし同時に他人の意見も尊重します。だからといって、組織内で他人をカバーするということもあまり感じないのです。

例えば、このときのビジネスは相手がイタリアの会社なので多くはイタリア人ですが、中にはドイツ人とフランス人もいます。打ち合わせにはイタリア人の社長も出席していますが、議論は社員が主導して進められていきます。そして仮に社長の若い息子さんがちょっとずれたことを発言しても社長が直接それを正すわけでもなく、出席者の議論の中で問題解決していくのです。また、イタリア人とドイツ人、フランス人は一言でいえばヨーロッパ人ですが、全然気質が違います。イタリアの中でも北と南では違います。だから意見が折り合いません。その中で議論が続いていきます。個人主義でありながらお互いの尊重と人のつながりを重視しているといえます。しかし、これは良い面だけではありません。違う気質の出席者が複数いるとそれぞれが意見を出すので、なかなか話が進みません。相当な忍耐強さが必要です。日本でありがちな社長が発言すると皆黙ってしまってそれに決まるという感覚はほとんど感じられませんでした。

日本の組織には一定の役割に応じたルールがあります。もちろんイタリアにもあるのですが、責任の持たせ方や考え方の違いが明らかにあります。

これを例えていうと、日本のビジネス現場はサル山で、イタリアを含む欧米はサバンナといえるでしょう。

この傾向はヨーロッパよりもアメリカの方がさらに強いようにも思います。もちろん地域によって度合いは異なりますが。比ゆ的に言えば、欧米はライオンやキリン、ゾウ、ハイエナ・・色々な動物がいてそれぞれが違う生き方、考え方をしています。それぞれの動物にはそれぞれのルールと価値観があるのです。そこから何が正解かが導かれているので、サバンナでは必ずしも正解はひとつにならないのです。これを理解してその現場にいないと、なぜこのような議論のやり方なるのか、なぜこんなに話が進まないのか、あるいはなぜ自分が考える正解ではない方向に話が進むのか、これらがわからなくてフラストレーションの塊になります。日本だったらサル山のボスザルが決めたことは絶対ですし、暗黙のうちにボスザルが何を考え、何を言い、またその場にいる他の人が何を求めているのかを理解して物事が進みます。いわゆる空気を読むということが重要なのです。しかし、サバンナに入ったサルにはこの進め方が通用しません。サファリの掟を尊重してコミュニケーションをとり、物事を進めていかないと、自分が大けがをしてしまうのです。



昨今、オンラインによるコミュニケーションも頻繁に行われるようになりました。オンラインのコミュニケーションは、出張しなくてよく、進め方も無駄話がなくきわめて合理的です。しかし、ノンバーバル(言葉を使わない)コミュニケーションができない分、グローバルビジネスでは本当の意思疎通が難しいと感じることも多くあります。もっとツールが進化して、ホログラムなどを使ってノンバーバルコミュニケーションもオンラインで伝わる時代が近い将来来ることを期待しています。

瀧田 理康

瀧田 理康

株式会社アルゴバース 代表取締役社長

映像プロデューサー
東京理科大学電気工学科卒。その後武蔵野美術大学でプロダクトデザインを学ぶ。自動車関連部材メーカーで半導体素材の社内ベンチャーの立ち上げに従事し事業売却にてイグジットさせる。現在代表をつとめる株式会社アルゴマーケティングソリューションズでは、半導体でかかわったナノの世界の経験をベースに、「人々が見えないもの描いて、そして魅了させる」をコンセプトにしたコンピュータグラフィックを駆使したデジタル世界の映像制作とPRの事業を展開している。
・中小企業診断士、リスクマネジメントプランナー(一般財団法人リスクマネジメント協会)、PRプランナー(PRSJ)
・著書は「新規事業開発」「経営基本管理/マーケティング」(ともに日本マンパワー出版)等

株式会社アルゴバース

最先端の3DCG技術を駆使した映像制作とPRを行う会社。東京・丸の内に本社を置き、イタリア、アメリカ、中国とのネットワークを持つ。

Webサイト:https://argo-ms.com/

イノベーションズアイ会員情報:株式会社アルゴバース

海外ビジネス談は、イノベーションズアイ会員企業を対象に取材しています。