2014年2月1日
クリスマスやお正月でおもてなし料理を召し上がったことでしょう。
「おもてなし」というとお客様への食事や接待がまず思い浮かびますが、「おもてなし」は相手にとっても自分にとっても嬉しいことをすること。ですから、ちょっとした、声がけをすることでも実践できるのです。
「目があったら、だれにでもハーイ!と声をかけ、すぐに名前を覚えてくれるアメリカ人」
高校を卒業して、アメリカ人と結婚している叔母(父の妹)の元で留学することになりました。18歳でアメリカに渡った私は、英会話ができないので、まずは、カリフォルニア大学のサマーセッションに参加し英語を勉強するためにと始めの3か月間はカリフォルニア大学ロングビーチ校のドミトリー(寮)に入いりました。ドミトリー(寮)は女性だけの棟と男性の棟とわかれていて、女性だけの棟は二人部屋が3つで1ユニット。3部屋の間にキッチンや居間、バスルーム、などがあり、6名で共有するようにできていましたが、広々としていて機能的で清潔なドミトリーでした。
声に出して表情豊かなコミュニケーション
毎日、真っ青なカリフォルニアの空、昼間は暑いのですが、日陰に入れば涼しいし、朝夕は寒いですが、そんな砂漠の気候もすぐに慣れました。キャンパスも東京の大学とはかなり印象が違いました。都立駒場高校に通っていたころすぐ近くには東大の教養学部がありました。当時の東京大学の駒場キャンパスは、教室の裏にはあちこちにゴミがあって、カラスがごみを漁っていたり、木や草が伸び放題、夏は花が枯れてぐったりしていたり、冬は枯れた草がそのまま放置されていました。ところが、カリフォルニア大学のキャンパスは、一面芝生で覆われていて、木々や花々はスプリンクラーで朝夕水をまかれて育てられ、たくさんのメキシコ人のガーディナーによって維持されていました。そして大学のキャンパスはゴミひとつ落ちていなくて本当に美しく清潔でした。カリフォルニア大学のロングビーチ校では、ドミトリーの美しさや設備だけではなく、キャンパスや建物が美しいだけでなく、そこにいる学生や先生、職員の対応も優しくて思いやりがあって、おもてなしの対応に溢れていました。
ドミトリーで朝、部屋から出て誰かに会うたびに皆、笑顔であいさつしてくれます
“ Hi ! Good morning, Miki ” (おはよう、ミキ!)
“ How are you today, Miki ? ” (今日はどんな調子?ミキ!)
“ How are you doing, Miki ? ”(体調はどう?ミキ)
“ Have a good day, Miki ? ”(すてきな一日に!ミキ!)
とほとんど一度しか会ったことのない人でも、名前を覚えてくれていて、挨拶とともに名前をしっかりと連呼してくれるのです。(カリフォルニアではmiyukiのニックネームはmikiでした)
この時、一日に何度も名前を呼ばれることがとても嬉しかったことを思い出します。
教室に行くまでキャンパスの通りを歩いていても、すれ違った人から
“ Good morning ! ”
“ How are you, today ? ”
“ Hi ! ”
“ I like your jacket ”(ジャケット素敵よ!)などと笑顔で全く知らない人からも声をかけられます。あいさつや人をほめることがとても上手なのです。
文化や人種、国籍が違う人が集まっているカリフォルニアでは、声にだして表情豊かなコミュニケーションが欠かせないのでしょう。
こうしたちょっとしたあいさつ、コミュニケーションの始まりは、自分から発信したほうも嬉しいし、挨拶をしてもらった人も嬉しい。朝から、なんとなく良い気分になります。
ストロークは『心の栄養素』
心理学者のエリック・バーンの交流分析の中に、「ストローク」という言葉が出てきます。エリック・バーンによると「ストローク」とは生物が生きていくために欠かせない「栄養素」。食物だけで栄養をとるのではなく、人との交流、関わりや働き掛けで人は元気に生きていくことができる。ストロークは「心の栄養素」と言っています。具体的には人は褒められたり、認められたり、あるいは抱きしめられたり、手を握られたりすることによって、嬉しくなったり、安心したりするのです。実際に、ミルクだけ与えられて、母親の育児放棄によって一度も抱きしめられず、声掛けをしてもらえなかった少女の発育が悪く、身長や体重が平均を大きく下回ったということがあったそうです。栄養だけではなく、他者からの何らかの働きかけがどんなに心を落ち着かせ、喜びとなるか、それは、ちょっとした「挨拶」でもあったのです。
その当時は分からなかったのですが、初めて一人で大学の寮で暮らした私は、英語も解らず心細かったのですが、ちょっとした日々の挨拶(声掛け)や名前を覚えてもらったことがとても嬉しかったのです。これは、肯定的なプラスのストローク(心への働きかけ、心の栄養素)だったということが、この後、心理学を勉強するうちにわかってきましたが、こんなちょっとしたことも相手にとっても自分にとっても嬉しい「おもてなし」の一つなのです。
知らない人にも普通に笑顔であいさつするアメリカ人
アメリカのスーパーマーケットではレジの人が、「今日は調子どう?」「これ、おいしいわよね」などと、知らない人にも普通に笑顔で話しかけてきます。客側もそれに対して言葉を交わします。日本のスーパーでは、お店の人が一方的に、マニュアルに沿って「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」「またのお越しをおまちしております」と目も合わせずに声をだし、客側も特に、それに対しコミュニケーションをとるようなことがないように思います。ちょっと、寂しい感じがします。
アメリカに行くと、お店や道をさがしてうろうろしていたら、「お手伝いしましょうか?」と知らない人が声をかけてくれることがよくあります。
相手にたいして良い交流をすると相手からも感謝されて、自分も嬉しい。プラスのストロークの交換は「おもてなし」の真髄だと思います。
来日した外国人が何か困っているようだったら、
“ Do you need help ? ” “ May I help you ? ”
(何かお手伝いしましょうか?)
と声をかけてみたらいかがでしょう。
一般社団法人 日本CA協会 会長 /株式会社ビジヨンテツク 代表取締役
真山美雪
株式会社 ビジヨンテツク代表取締役 / 一般社団法人 日本CA協会会長 / NPO法人 国際ホリスティックフェイス協会 理事 /医療法人社団厚誠会 顧問 / コーピングインスティテュートコーチ /日本交流分析協会会員/ NTT ユーザ協会 電話応対技能検定指導者 /日本仲裁人協会 調停員(メディエーション)養成講座終了/ フェイスエクササイズトレーナー(英国予防医学フェイスエクササイズ協会認定)/ 財団法人 女性労働協会認定講師
東京都立駒場高校卒業後、渡米。CSULB、UCLAに留学。帰国後、日本航空株式会社に国際線客室乗務員として勤務。
1980年オランダのべアトリックス女王即位式典出席の皇室フライト(三笠宮崇仁親王、百合子妃)のファーストクラス担当乗務員を経験。退職後、企業研修、社員教育などで、ホスピタリティーマインド、コミュニケーションスキル、キャリアやライフプランなどの研修講師、人材育成コンサルタントとして数々の研修、セミナーを受け持つ。「ストレスに負けないしなやかな心の作り方」講演多数。官公庁、地方自治体、企業、専門学校、短大、大学などで就職対策講座などで就職活動を支援している。出講した主な大学、学校は九州大学、早稲田大学、慶応大学、新潟薬科大学、東京家政女子大、武蔵野女子大、駒澤大学、東横女子短大、創価大学、東洋大学、埼玉県立高校、東京都立高校など。
1998年長野冬季オリンピック「あさま」パーサーへの英語マナー研修を担当。
2005年国際万国博覧会「愛・地球博」で「日本館」アテンダントの研修を担当。
2006年3月 ホノルルにてJALスマイル&スポーツのスタッフ教育を実施。
2006年5月より 上海にて ビジネスマナー養成講座研修を実施。
2007年4月より亜細亜大学でキャリアセンター、学部の講座、講演を実施。
2007年8月コーピングインスティテュートコーチ資格を取得。
2008年10月より九州大学大学院 生物資源環境学府「生物産業創成コース」ヒューマンスキル、コミュニケーションスキル担当講師
2010年上海万博の教育担当養成講座の講師、ペイパル、ebayのコールセンターの研修を担当。厚生労働省「就職支援事業」講師。
1993年アメリカ、イギリスの滞在経験を生かした 共著にヨーロッパカルチャーガイド1英国(トラベルジャーナル)ワールドカルチャーガイド15 アメリカ(トラベルジャーナル) きみにもできる国際交流 アメリカ編(偕成社)監修本に1997年西東社「カンペキ、女性のビジネスマナー」、1998年主婦の友社「これで解決!オフィスの好印象マナー」「これで解決!伝わるメールと手紙の書き方」
著書に2012年6月「能力はあるのにもったいない言葉遣いのルール」明日香出版社。 TBS、テレビ朝日、テレビ埼玉、FM「J-Wave」「Nack5」、AMラジオ日本、文化放送。読売新聞、中日東京新聞、産経新聞、フジサンケイビジネスアイ、サンケイリビング、シティーリビング、マガジンハウス「anan」、講談社「WITH」、日経BP「日経ウーマン」「シンプルライフ」、「OZマガジン」などマスコミ掲載多数。
一般社団法人 日本CA協会 http://ca-jpn.net/
株式会社ビジヨンテツクhttp://www.visiontech.co.jp/