海外ビジネスに関連するコラム

ベトナムで予防歯科の医院を作る

Smile Dental Center(ベトナム・ホーチミン)  内田 結貴

かつて高度経済成長を経験した日本では経済成長と同時期に共働きが増え、インスタント食品が登場し、親の帰りを待ちながらそうしたインスタント食品を食べる鍵っ子の増加など食生活をはじめとする生活習慣の大きな変化がありました。 このような環境下で生活をしてきた私たち日本人の口の中にはこれまでにないほど多くの虫歯ができるようになり、「虫歯の洪水」と呼ばれて歯医者の待合室に行列ができるような時代だったのです。 あれから何十年も経って、当時受けた治療をやり直さなければならなくなり、幼少時や働きざかりの頃に歯を悪くした人たちは今になって入れ歯に悩まされるなどその弊害は今も続いています。 そしてようやく私たちは気付いたのです。「治療してからでは遅い。予防しなければ始まらない。」と。 同じような状況がベトナムにもやってくるだろうと思いました。 共働きの家庭、あちこちで見かけるインスタント食品や清涼飲料水の広告、そして伸び行く経済。 私たち日本人が味わった苦労をベトナムの人たちにも経験させる必要があるだろうか? 同じ轍を踏ませる理由があるだろうか? 今になってようやく私たちが理解した「予防」という概念を、最初からベトナムに紹介することはできないだろうか? こうしたいきさつから、「ベトナムで予防歯科の医院を作る」ということを考えるようになり、興味を持って出資をしてくれそうな人に話を持ちかけました。
  • 第1回 虫歯の洪水を防ぎ、予防をベトナムに広める!

    2009年12月。「ベトナムで院長やらない?」という一言で私の人生は大きな転換期を迎えました。 中学生くらいから漠然と「海外で暮らすってどんなだろう。海外で働くってどんなだろう。」という憧れはあったものの、歯科医師という職業を選んで日本の大学に入った以上、日本で歯科医師免許を取って日本で歯科医師として暮らし、私はきっと海外で暮らすことはないだろう、と思って過ごしていた私にその一言は降ってきました。

  • 第2回 なぜ、ボランティア活動でなかったの?

    ベトナムでの開業のきっかけとして「予防歯科という概念をベトナムに持ち込みたかった」と言うと、「なぜボランティア活動ではなくて開業だったの?」と聞かれることが多々あります。 確かに、日本からは様々なボランティア団体がベトナム各地にボランティア活動に来ており、歯科においても同様に多くの日本人歯科医師たちが隊を組んで年に何度か無料診察や歯磨き指導などに来ています。 ボランティア活動にはボランティア活動の意義があると思います。 日本の人たちに別の国の現状を知ってもらうきっかけとなることや、現地で医療費が払えない人たちにも治療を無償提供できることなどのメリットがあるからです。

  • 第3回 ベトナム人の言語習得熱の高さ

    日本人は英語恐怖症? 私はベトナムに住んでもうすぐ4年になりますが、ほとんどベトナム語ができません。 理由(というより言い訳)はいくつもあり、発音が難しい、勉強する時間がない、英語・日本語を話すスタッフがいるので通訳してもらえる、などなど。 おかげで4年近くも住んでいるのに、いきつけのお店で店員さんとベトナム語で談笑、なんてことは夢のまた夢です。 日本人の「英語恐怖症」が叫ばれて久しいですが、日本人はどうにも新しい言語を覚えるのが苦手なようです。 最近でこそ留学も盛んになりましたし外国語を話せる人の数も増えてきていますが、「中学高校と6年間も英語を勉強したのにさっぱり使えない」という人もまだまだ多いのではないでしょうか。 一方、ベトナム人は言語能力が非常に高いと感じます。 まず、識字率は9割を越えています。そして「勉強好き」な人も多いです。

内田 結貴

Smile Dental Center(ベトナム・ホーチミン)
内田 結貴


1981年 東京都生まれ。
2歳より埼玉で育ち、大学進学を期に広島在住(広島大学歯学部歯学科卒)。
卒後は東京都内の大学病院や埼玉県内の歯科医院に勤務したのち、2010年5月よりベトナム・ホーチミン市在住、同年11月に同地にて歯科医院をオープンし現在に至る。

日本の高度経済成長期を彷彿とさせるベトナムの現状を知り、「日本人が高度経済成長に伴う生活環境変化の結果として味わった『歯の苦労』をベトナム人には味わってほしくない」という思いから予防歯科をベトナムに持ち込むべく開院を決意。

しかしながら、現在は「細かなニュアンスが母国語で通じる安心感」ということもあって患者の9割を在越邦人が占め、残り1割の中にベトナム人やその他の在住外国人を含んでいる。

9名のベトナム人スタッフとともに唯一の日本人として、日々ベトナム語、英語、日本語に囲まれながら診療にあたっている。