海外ビジネスに関連するコラム

グローバルなおもてなし 第1回

日本人の独特の「おもてなしの心」=相手に対する気遣い

一般社団法人 日本CA協会 会長 /株式会社ビジヨンテツク 代表取締役  真山美雪

 

そもそも、「おもてなし」とはなんでしょう?

おもてなしO-MO-TE-NA-SHIは2013年の流行語大賞にも選ばれて、海外でも日本のOmotenashiはすばらしい。と言われるようになってきました。

JALで教えられた「最高のおもてなし」

私が、JAL(日本航空株式会社)に国際線客室乗務員として、入社したときのことです。

当時は、機内サービスだけではなく、すべてのお客様に「最高のもてなし」をする航空会社でなくてはいけないと訓練所で教えられたことを思い出します。

訓練所では保安要員としての緊急訓練、食事や飲み物のサービスの訓練のほかに、着物の着付け、そして茶道の勉強もさせてもらしました。

はじめは、どうして茶道まで勉強するのか。と思いましたが、後になってわかったことですが、そこに日本人としての「もてなし」の心を身につけた客室乗務員を育てたいということだったのでしょう。茶道の精神を通して気づきをもち、身につけることのできる相手の立場に立った丁寧な応対。お客様と接するには単なる「サービス」をするのではなくお客様との一期一会*を大切にすることこそが日本航空の客室乗務員に必要なことである。訓練所ではその一期一会の「最高のもてなし」の心を持つことの必要性を教えられたのです。残念ながら、6か月以上にわたる、茶道や着物の着付けといった訓練は多額の訓練費用がかかるため、かなり前に打ち切られてしまったということです。私は、訓練所でそのような勉強の機会を与えてもらったことを本当に感謝しています。

*一期一会(いちごいちえ)とは、茶道に由来することわざ。
『あなたとこうして出会っているこの時間は、二度と巡っては来ないたった一度きりのものです。だから、この一瞬を大切に思い、今出来る最高のおもてなしをしましょう』と言う意味の、千利休の茶道の筆頭の心得である。平たく言えば、これからも何度でも会うことはあるだろうが、もしかしたら二度とは会えないかもしれないという覚悟で人には接しなさい、ということである。
(wikipediaより)

グローバル企業も一目置く日本のおもてなし

もてなす という言葉は辞書では下記のように書いてあります。

1 客を取り扱うこと。待遇。「手厚い―を受ける」

2 食事や茶菓のごちそう。饗応。「茶菓の―を受ける」

3 身に備わったものごし。身のこなし。

4 とりはからい。処置。取り扱い。

茶道を勉強していなくても、日本人ならだれもが「おもてなし」という言葉や意味をなんとなく思い浮かべることができると思います。具体的におもてなしを受ける、あるいはおもてなしをするというとホテルや旅館、料亭、レストランなどの応対、パーティーでの応対、接待での応対、あるいは友人宅へ招かれた時でしょうか。

飛行機に乗ったときの応対などはおもてなしというよりは「サービス」というイメージかもしれません。いずれにしても、日本人にとってのおもてなしは特別に茶道などを勉強して学ぶというより、日常の家庭生活の中でなんとなく、自然なかたちで親や年長者の振る舞いなどに触れることによって培われた感覚なのだと思います。

オリンピック招致のプレゼンで話題にあがったように、日本人はもてなしの感覚を自然に理解し対応することができる人が多いように思います。「もてなす」という茶道の精神から受け継がれている世界に誇れる素晴らしおもてなし文化をもっているのです。

オリンピック招致のプレゼンの少し前から、海外の人が、日本のサービスの高さを理解し始めたと思います。海外にいる友人たちが日本に来ると、毎回、日本のホスピタリティーはすばらしい、人間が正直でやさしい。とほめてくれます。グローバル企業にも、そのおもてなしの精神がだんだん理解されてきています。

世界の航空会社の中でも日系の航空会社のサービスを評価してくれる人が増えました。世界にパビリオンを持つディズニーランドのキャストのサービスも世界の中で日本のレベルがとても高いと評価されてきています。

自分も相手も楽しむこと

「もてなし」と「サービス」とは少し意味が違うのです。似ていますが、辞書によるとサービスの語源はラテン語の servitus。そもそもservitusには「奴隷」というニュアンスが含まれ、提供する側とされる側に主従関係が発生します。お客様が上、スタッフ側が下と上下関係がはっきりするものと言われています。お客様がある一定の対応を受ける(=目的)のに主従関係を発生させるために、サービスチャージやチップが存在すると考えることができます。それに対して「もてなす」は英語のホスピタリティーマインドに近く、語源はラテン語のhospesでホスピタリティは病院(Hospital)と語源を共にし自分の家に訪ねてくる人(=お客様)をお迎え・お世話することなので、当然対価や見返りを求めない自然発生的な対応と認識することができます。巡礼する異邦人を歓待することを意味したそうです。家族と接するように、見返りを求めない対応と言われています。自分も相手も楽しむことであり、茶道からくる「もてなす」という意味に近いと思われます。

相手に対する気遣い=おもてなしの心

日本の文化との違いもありますが、あえて、英語で比較するならば「サービス」と「ホスピタリティー」だと、「おもてなしの心」はより「ホスピタリティーマインド」に近いものと言えます。

日本人の独特のホスピタリティーマインド「おもてなしの心」は相手にたいする気遣いといったらよいのでしょうか。チップや料金で表せないもの。おもてなしの気持ちは感じて

もらうしかないのです。暑い夏には冷たいお茶を。寒い冬には暖かい飲み物を用意したり、決してマニュアルにとらわれない気遣いのできること。もうすぐ、クリスマス。

ご自宅でホームパーティーをひらいたり、プレゼントの交換もクリスマスに行われる大事なおもてなしの一つです。相手に楽しんでもらい、自分も楽しむ。相手に何を送ろうかと考え、それを受け取ったひとが喜ぶだけでなく、自分も嬉しい。そんなお互いを思いやることが「おもてなし」自分も相手も幸せになることなのです。

写真協力:磯部久美子

 

真山美雪

一般社団法人 日本CA協会 会長 /株式会社ビジヨンテツク 代表取締役
真山美雪

株式会社 ビジヨンテツク代表取締役 / 一般社団法人 日本CA協会会長 / NPO法人 国際ホリスティックフェイス協会 理事 /医療法人社団厚誠会 顧問 / コーピングインスティテュートコーチ /日本交流分析協会会員/ NTT ユーザ協会 電話応対技能検定指導者 /日本仲裁人協会 調停員(メディエーション)養成講座終了/ フェイスエクササイズトレーナー(英国予防医学フェイスエクササイズ協会認定)/ 財団法人 女性労働協会認定講師

東京都立駒場高校卒業後、渡米。CSULB、UCLAに留学。帰国後、日本航空株式会社に国際線客室乗務員として勤務。
1980年オランダのべアトリックス女王即位式典出席の皇室フライト(三笠宮崇仁親王、百合子妃)のファーストクラス担当乗務員を経験。退職後、企業研修、社員教育などで、ホスピタリティーマインド、コミュニケーションスキル、キャリアやライフプランなどの研修講師、人材育成コンサルタントとして数々の研修、セミナーを受け持つ。「ストレスに負けないしなやかな心の作り方」講演多数。官公庁、地方自治体、企業、専門学校、短大、大学などで就職対策講座などで就職活動を支援している。出講した主な大学、学校は九州大学、早稲田大学、慶応大学、新潟薬科大学、東京家政女子大、武蔵野女子大、駒澤大学、東横女子短大、創価大学、東洋大学、埼玉県立高校、東京都立高校など。
1998年長野冬季オリンピック「あさま」パーサーへの英語マナー研修を担当。
2005年国際万国博覧会「愛・地球博」で「日本館」アテンダントの研修を担当。
2006年3月 ホノルルにてJALスマイル&スポーツのスタッフ教育を実施。
2006年5月より 上海にて ビジネスマナー養成講座研修を実施。
2007年4月より亜細亜大学でキャリアセンター、学部の講座、講演を実施。
2007年8月コーピングインスティテュートコーチ資格を取得。
2008年10月より九州大学大学院 生物資源環境学府「生物産業創成コース」ヒューマンスキル、コミュニケーションスキル担当講師
2010年上海万博の教育担当養成講座の講師、ペイパル、ebayのコールセンターの研修を担当。厚生労働省「就職支援事業」講師。

1993年アメリカ、イギリスの滞在経験を生かした 共著にヨーロッパカルチャーガイド1英国(トラベルジャーナル)ワールドカルチャーガイド15  アメリカ(トラベルジャーナル) きみにもできる国際交流 アメリカ編(偕成社)監修本に1997年西東社「カンペキ、女性のビジネスマナー」、1998年主婦の友社「これで解決!オフィスの好印象マナー」「これで解決!伝わるメールと手紙の書き方」
著書に2012年6月「能力はあるのにもったいない言葉遣いのルール」明日香出版社。 TBS、テレビ朝日、テレビ埼玉、FM「J-Wave」「Nack5」、AMラジオ日本、文化放送。読売新聞、中日東京新聞、産経新聞、フジサンケイビジネスアイ、サンケイリビング、シティーリビング、マガジンハウス「anan」、講談社「WITH」、日経BP「日経ウーマン」「シンプルライフ」、「OZマガジン」などマスコミ掲載多数。
一般社団法人 日本CA協会 http://ca-jpn.net/
株式会社ビジヨンテツクhttp://www.visiontech.co.jp/