海外ビジネスに関連するコラム

にっぽん人よ、したたかになれ! 第1回

中国語ができれば世界が変わる。

株式会社WEIC 代表取締役社長 内山雄輝

 

あらゆる問題を解決する鍵は中国語である

私は、中国語を話してみんなで日中友好を語ろうなどと暢気な気持ちでこれを書くのではない。そもそも、領土問題に関しての報道、お互いの国が実施する消極的な部分ばかりを強調した報道に毎日悶々としている。

偏ったネガティブキャンペーンを毎日見せ付けられることにより、何が真実かを見失いつつある。ナショナリズムを煽り立てることで恩恵を被るのは、権力を持ったもの、すなわち政治に携わるものだけなのに。

私は、経済人や庶民にとって何の生産性も感じられないあまりにも情けないこの現状を打破できる方法を吟味している。お互いが「理」をもって「利」をなすべく、今やるべきことは何なのか。

日本からも中国からも恨まれるかもしれないが、「意」を持って世間にお伝えしたいことがある。我々が中国にやられっぱなしだと感じるのは、中国を知ろうとしなかった我々の責任だ。だから端的に言おう、領土、反日、中国市場開拓の失敗、日中間に存在するあらゆる問題を解決する鍵は中国語である。

中国人は理がなく、利のみを求め、中国人に騙されてきたという嫌悪が心の中に存在している日本人。いったいそのイメージはどこから来ているのか。

日本で活躍する中国人で日本語を操れない人を見た事がない

以前、中国人3人と日本人3人が討論し合う番組を見た。尖閣諸島は誰のものであるのかというテーマに対して、出演する中国人は、「尖閣問題は世界から見れば小さな問題であって、戦争を起こすことは双方大きな犠牲が伴うことを慎重に考えるべき」との回答。それに対して出演する日本人は、「領土問題は小さな問題ではない。中国は日本の領土を掠め取ろうとしている。中国はうそばっかりついている。中国人はうそばっかりだ。」と大変な剣幕で中国人をまくし立てる。

こんな、プロパガンダを見せ付けられてしまっては、見る人が見れば中国人は悪い奴だとなるのは普通である。くだらないプロパンダはどうでもいいのだが、私が注目したいのは、どちらの主張が正しいとかそんなことではない。注目すべきなのは、すべての討論は日本語で行われているということである。しかも、日本語はナチュラルスピードであり、中国人の発言もすべて何を言っているのか理解できるということである。つまり、日本人が何を言っているかをそこに出席した中国人はその場でしっかりと理解し、ある程度空気をよんで発言しているということである。

私の記憶では、中国のテレビ討論番組に出て、中国語でコメントできる日本人は数人しか見たことがない。しかし、この中国人達は、かくも的確に発言をするのである。日本の文化を知り、日本人を知り、今の中国と中国の問題点を日本語で討論している。おまけに、興奮した日本の出演者に対して、「煽らない、煽らない」となだめてもいる。すべての発言を聞いてこう思ってしまった。「中国人だけでなく日本人も偏ってるな」と。

「入乡随俗(郷に入りては郷に従え)」という言葉が中国にもある。私は、日本に来て活躍する中国人で日本語を操れない人を見たことがない。徹底的に日本を研究し、日本の文化を研究し、日本から日本人から何を吸収できるのか、日本人と親しくなって何を自分のために如何にしてビジネスチャンスを見つけ出そうか、真摯に徹底的に我々を分析して中国人達は近づいてくる。人生を賭して家族を背負って来ているのだ。必死さが違う。

我々日本人はどうか、中国でのビジネスでは通訳は必須であり、中国人の文化もよく知らない。中国人家族がどう付き合っているのか、どれほどの絆で結びついているのか、何を求めて生きているのか、何に苦しんでいるのか、そんなことを知る必要もないし、そもそも中国人とつきあうことに興味がない。自分たちとはレベルが違うと思っているのだから。でも物は中国人に買ってもらって稼ぎたい。しかも売れると思っている。だからマーケティングもこう考える。日本製のものを中国に持っていけば、中国人は日本製が絶対にほしいから売れるに違いない。顔も同じだし、米も食っているんだから。

日本人が欧米でビジネスや政治をするときに、英語が話せない人が赴任させられることはあるだろうか。答えは明白、そんなことをすれば、いい人材がいないんだねというレッテルが貼られ笑いものだ。しかし、中国ビジネスに携わる人が中国語を話せないのは普通である。中国に秩序はない、法律も金で買える。金の為なら道徳も関係ない。権利も、愛も、技術もすべてが金で動く。人口比例で考えれば悪い人も日本の10倍はいるだろう。貧富が激しく、秩序は発展途上の国なのだ。そんな状況なのに、言葉もできない平和ボケした日本人が中国人の強かさに勝てるはずがない。

中国語で中国人と話し、中国語で中国と議論する。勝つために中国人を知ろうとする、そんな人材が日本には少なすぎるのだ。金と愛想と知的財産を振りまきながら、笑顔でいいところを持っていかれる。めんどくさいし何されるかわからないから、とりあえずやられたらあきらめる。こんな理不尽が実際に生じているのは事実だ。しかし、そんな野蛮な中国人に勝てない日本人がいるのも事実だ。

中学卒業レベルの英語力と同じ中国語力を持つ日本人を増やしなさい!

中国語は日本人にとって最も習得することが簡単な言語である。ペラペラになることを求める必要はない。まずは、中学卒業レベルの英語力と同じ程度の中国語力を身につけてほしい。日本国民の10人に1人がその中国語レベルを習得できたとき、面子が最も重要な大国中国と中国人から自分たちの文化を知ろうと努力してくれたことを真に尊敬され、そして若干恐れられるだろう。友達として手をつながなければいけないと再認識する。経済力、技術力、秩序、思いやり、おもてなしに加え、中国の文化を知った日本人は中国におけるビジネスチャンスを再認識する。日本の技術力は中国の社会を安定化させ、公害を減らし、食の安全を推し進めることができる。双方が経済的にも社会的にも安定すれば、ネガティブキャンペーンは必要なくなり、お互いの力を使って中国国内や世界で共に稼いだ「利」をwinwinでシェアできるようになる。共に稼げるようになったとき、中国は、「朋友」となった日本を色々な面で助けるだろう。さらに経済は安定し、世界を変える経済力をアジアで得るに違いない。

面子か利か領土か、我々はいったい何がほしいのか?子供の将来、老後の社会保障、夢ある社会の実現のために今何を成し遂げるべきなのか?

中学卒業レベルの英語力と同じ中国語力を持つ日本人が増えるだけで、日本はかなりのビジネスチャンスを得ることができると私は断言する。なぜなら、そのとき日本人の10人に1人が中国人の文化を理解しているからだ。歴史上、文化を理解したものが勝つ。しかし、お互いが文化を理解するならば友になり最高のビジネスパートナーとなる。それでも相手は世界の中心になるべきだと考えている中国だ。仲良くなりすぎる必要などない。単なるビジネスパートナーでいいのである。微笑みながら実利を取る。それは今度こそ我々日本人であるべきだ。

筆者の空想に過ぎない。中国とうまくやれるはずがない。別にASEANがあるから中国で稼がなくても良い。この売国奴め!とのお叱りも聞こえる気がする。何とでも言ってくれ。でも経験と情報を持つものとして、私は信じている。領土、反日、中国市場開拓の失敗、日中間に存在するあらゆる問題を解決する鍵は中国語である。文化を理解すれば「利」に繋がる。

これは、机上の空論ではない。少なくとも私は、国籍の違う愛する家族とそれを実現しているのだから。

 

内山雄輝

株式会社WEIC代表取締役社長
内山雄輝

早稲田大学第一文学部 総合人文学科
中国語・中国文学専修

【役職】
株式会社WEIC 代表取締役社長
维酷(上海)信息科技有限公司 董事長

MIJSコンソーシアム(Made In Japan Software Consortium)理事 
中華人民共和国 四川省成都市情報産業局 ソフトウェア業界協会顧問
一般財団法人国際IT財団 評議員
一般社団法人日本中華総商会 幹事
中小企業庁地域中小企業海外人材確保定着支援事業運営委員会委員

【プロフィール】
早稲田大学第一文学部中国語・中国文学専修卒業後、WEICを設立。人間が言葉を覚える過程の言語学理論をシステム化し、中国語をはじめとする語学eラーニングサービスを日中両国で展開。中国でのビジネス経験と人脈を活かし、日本企業の中国進出を支援。地方政府および現地企業との戦略提携及びグローバル人材育成戦略の豊富なノウハウに定評がある。日本の中国語学習者1000万人創出とITによる外国語教育の改革を目指す。「世界で活躍できる人材を創る」をモットーに、事業家と日中間コネクターの両面で活躍中。夫人は中国人で、数多くの日本企業の中国法務を代弁する著名な弁護士を義理の父に持つ。