キムチの国から見たニッポン 第3回 就活スーツはペンギンみたい?

金成美
 


以前電車の中でスーツを着た女性二人が話しているのを隣で聞いてびっくりした記憶があります。彼女たちは、就活をしているようで、1人がちょっとしゃれた靴を履いているのを見て、他の1人が指摘しているようでした。

ふっと私も彼女の靴に目を向いてみると、なんと、ただの真っ黒の靴でした。光ってるのかなと隣の人と比較してみたら、確かに少し光ってるかも。

でもそんなに目立つものではありませんでした。

 

「就活スーツにはボタンの数か決められておりまして…」

 

外国人が見ると就活スーツはペンギンみたい??


友達がスーツを買いたいと言って、ある洋服店に一緒に行った時に聞かれた言葉です。友達も私も外国人で、就活用のスーツを買うつもりではなかったので、その言葉を聞いて2人とも驚きました。ちなみに店員さんは就活用じゃないスーツはもっと安いですよと言ってくれました。

 

「There are so many penguins!」

 

英語の授業でアメリカ人先生と日本の就活に関して話していた時、先生が笑いながら言った言葉です。就活のシーズンになると、真っ黒のスーツに真っ白のシャツを着てバス停や駅に並ぶ学生たちの様子がまるでペンギンのようだという話でした。

 

 私はそれを着ている学生たちを非難するつもりは全くありません。ただ、彼、彼女たちはなぜそれを着なければいけないのかなと疑問に思ってないのかなと言うのが気になりました。

ある日、日本人の学部生にこのことについて聞いてみました。皆が同じような服を着て、同じような髪型をしていると、面接官たちはどうやって応募者を見分けられるのかなと。なんで皆同じようなスーツを着なければいけないのかと。


彼は、

 

「当たり前のように思っていたからおかしいと思ってないんだよね…でも、見分ける必要なんかないんだよ。個性がなくても自分の会社に合わせられるような人材であれば良いからね。大学での専攻なんかも実は必要ないんだ。どうせ企業に入ったら一から新しく習うから」

 

それだと、大学で頑張って勉強したのがもったいないじゃないかと聞いたら、

 

「いや、日本の大学の役割は、頭のいい子たちを集めて、頭の中を白紙にすることだから大丈夫。どこの企業に行っても合わせられるような人材を育成するのが大事!」

 

大学の先生を目指している私は、この言葉を聞いてとてもショックを受けました。


日本の企業は問題を認識している


 

それでは、日本の企業の方々はこのスーツが変だと思ってないのでしょうか。私はそう思いません。前回も書いたのですが、日本の企業は問題を認識しています。このことについて考えていた私がたどり着いた結論は、日本企業の人事部は怠けているというところでした。変わりたい、変わらなければならない、でも変わらない。そこに欠けているのは行動だと思います。今まで何十年も新卒一括採用を行ってきて、毎年そこで選ばれた大勢の人を教育してきた企業の中には決まったマニュアルが整っているはずです。その通りにさえしていれば、少なくとも失敗はしないので、便利で楽なんでしょう。そして同じようなスーツを着た人々が沢山集まって着て、そこから目立つ人を抜いていく作業の方が、個性溢れる人々の中で自社と合うような人を選ぶことよりずっとやりやすいでしょうと。

 

しかし、私はむしろ、毎年そんな大人数に同じことを教える方が大変だと思います。そもそも毎年そんな大人数を同じ時期に一気で採用する必要ってあるのでしょうか。毎年の就活時期や新入社員たちが入ってくる4月になると、「あ、またか」と毎年同じ宿題をやっている気持ちになるかも知れません。面接についてもそうです。同じ服を着て決まったような答えばかりしてくる人々と何日もしゃべっているより、「服装:フォーマル」という言葉の中でも、少しでも自分を表現するために頑張っている応募者たちをみて、その人がどのようなことを考えているのか、なんであんな色を選んだのかなどを想像しながら面接を進めて行った方が自分でも楽しいと思います。

 

新入社員というのは日本だけ?


上でペンギンの話をしていたアメリカ人の先生に、アメリカはどのように新入社員の教育をさせているのかと聞いてみました。

すると、「しない」という返事が返ってきました。


「そもそも毎年、しかも同じ時期にそんな大人数が必要になることないし、必要な時に必要な人材を採用する。必要に応じて採用したので、その人はある程度任されたタスクをやりこなせる力を持っている。その人はただ、そのオフィスの雰囲気を読んで、自分に任されたタスクを何とかやってみる。その過程で自分の専攻を活かせることもできるし、その会社の中で仕事をやっていく力がついてくる。また、そこから上司より効率的なやり方が出てくるかも知れない。」


もちろん何年も積み重ねて来たことを急に変えることなんてあり得ないし、変わろうと動き出すその一歩自体も難しいと思います。組織は硬くなっていく一方だし、上にあがれば上がるほど、そこに慣れてしまう。変えるより現状維持の方が安全で便利、しかもそこに慣れてしまえば、それを一番効率いいものだと信じきってしまう。それで悪循環が繰り返されるだけだと思います。しかし、そこに従うだけの生活を何年もしているのって楽しいでしょうか。毎年同じことを積み重ねるより、毎年少しでも新しく、楽しいことを積み重ねていくのはどうでしょうか。

 
 

金成美

一橋大学大学院生
金成美

一橋大学商学研究科博士後期課程 一橋大学イノベーション研究センターリサーチャー
修士テーマは破壊的イノベーションと新興市場:POSCOのFINEX技術開発を事例にあげ、韓国鉄鋼産業の成立歴史/最新技術開発におけるイノベーションと日韓比較と言うダブルフィールドで経営ヒストリーとイノベーションを専攻とする。

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