こどもが変われば世界が変わる〜教育ビジネスの可能性 第1回 途上国・新興国の教育事情

村上綾野
 

はじめに

こどもたちへの「教育は投資だ」とよくいわれますが、次世代の社会を形作る人々を育てるということを考えると、まさに「教育」とは「次世代の世界づくり」なのだと感じます。

このコラムでは、様々な国における教育事情や、そこで展開される教育ビジネスの様子をお伝えしていきます。毎回読み切り、専門的になりすぎない内容にしたいと思いますので、お仕事への関連有無に関わらず、是非お時間のあるときにご覧ください。


途上国の教育課題

第1回目のコラムは、これからの教育ビジネスの進出先として注目されている途上国・新興国の教育課題について簡単にご説明します。途上国における教育課題は大きく3点に集約されると思います。もちろん国によってそれぞれの深刻度も、現在の解決状況も異なりますが、教育整備にあたってのハードルを確認すると、必ずと言っていいほどこれらの課題に行きあたります。

【途上国の教育課題】

1.学びの「場」の不足・不平等

2.「教科書」の不足・わかりづらさ

3.「先生」の不足・質の低さ


課題1:学びの「場」の不足・不平等

「場」の不足と聞いて、まず創造されるのは「学校」そのものが不足しているというケースではないでしょうか。実際に学校自体がないという地域も沢山あります。また、たとえ学校があったとしても、生徒人数に対して規模が小さすぎ、午前と午後で生徒を入れ替えざるを得ないという状況もよくみられます。日本とは異なり、「公教育が行きわたっていない」ということが、まず1つの大きな課題となっています。

また、貧富の差が大きな国ほど、「学校以外の学びの場」の問題が顕著に現れます。いわゆる「塾」や「予備校」の問題です。公教育の非充実・質の低さを補うために塾や予備校のビジネスが盛んな国は実は多いのですが、当然ながら良質なものは価格が高く、途上国の中でも富裕層のこどもたちしかサービスを享受することができません。富裕層向けの公教育以外の教育サービスの拡充により、ますます中間層・貧困層との教育格差が開く結果となっているのです。


▼ミャンマーの寺子屋で学ぶこどもたち

▼バングラの小学校で授業開始を待つこどもたち


課題2:「教科書」の不足・わかりづらさ

日本では「一人一冊」が当然の教科書ですが、途上国では次の学年の子ども次々と譲り渡すなどの「使いまわし」が一般的に行われています。また、教科書自体もこどもにとってのわかりやすさへの考慮不足が目立ちます。学齢に関係なく細かい文字がぎっしり詰まった図版の少ない教科書は、大人でも読み解くのが困難なほどです。また、中学校以降の理数系の教科書は全て母国語ではなく、英語のものが配られている国もあり、母国語での授業を受けないと書いてあることさえ理解できない状況も生まれています。


▼学校に教科書をもらいにきたバングラデシュのこどもたち


課題3:「先生」の不足・質の低さ

公教育における「先生」の人材不足もまた、大きな課題です。先生は公務員ですが、途上国での給与レベルは低く、非常に厳しい生活を送っているようです。生活費のために学校の先生と予備校や塾の講師を兼任する先生も多く、予備校や塾に生徒を来させるために、授業の一部をわざと教えずに置くというアンモラルな状況が容認されています。

また、授業自体の構成も日本と違いほぼ一方通行。先生は前の席に座ったまま、ただ教科書を読みあげるだけで、こどもたちからも質問が出ない光景がよく見られます。当然、目の前に座っている数人のこどもとしか対話も成立せず、後方や離れたところに座っているこどもたちに対しては、声をかけたり、理解状況を確認したり、ということもほぼありません。わからない子、できない子は勝手に脱落していくという感覚なのかもしれません。


「教育」におけるビジネスチャンス

このような解決すべき課題が山積みの途上国において、教育ビジネスはまだまだ大きなチャンスが眠っている市場です。携帯電話やインターネットなどのインフラが想像以上の速度で整い、彼らの生活環境も5年後、10年後には大きく変わり、既存の「教育」の枠組みを超えた様々なビジネスが生まれることが想像されます。

世界で教育を受けることができていないこどもはまだ約6100万人もいます。新しい教育ビジネスにより、全てのこどもたちに均等に、教育の機会とチャンスがもたらされる日は遠くないかもしれません。

 
 

村上綾野

任意団体こどものみらい代表
村上綾野

1978年京都府生まれ。
神戸大学発達科学部で発達心理学を学び、2000年卒業。
システムエンジニア、新卒採用コンサルなどを経て、現在は教育系出版社に勤務。
育成と業務設計を専門とし、国内外の子供のために活動中。
https://www.facebook.com/Page.Kodomonomirai

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