こどもが変われば世界が変わる〜教育ビジネスの可能性 第4回 世界で求められる「これから」の教育

村上綾野
 

はじめに

「PISA」という学力調査をご存知ですか?「PISA」とは「Programme for International Student Assessment」の略で2000年から3年毎に、OECDが行っている国際的な学力調査です。これまで主に、「読解力」「数学的知識」「科学的知識」「問題解決力」が問われてきました。


初回の2000年、参加国は32か国。日本は読解力が8位、数学的リテラシーが1位、科学的リテラシーは2位と、非常に高い結果を残しました。しかし2003年、全41か国のうち、特に数学的リテラシーと、読解力において日本の順位は急落。「日本人の学力低下」として大きく報道され、「脱ゆとり」に代表される、様々な教育改革が行われました。その結果、2006年に最も落ち込んだ順位は、2009年、2012年と徐々に回復しています。



▼日本のPISAの順位



このPISAで測られる「学力」の元になっているのが、OECDによって実施された「DeSeCo」というプログラム(1997~2003)の中で提唱された「キー・コンピテンシー」です。これは教育の成果と影響に関する情報への関心の高まりを受けて、「主要能力」を特定し、各国共通基準を設けるために検討されたものになります。つまり、これから世界で生きていく中で必要となる能力が定義されたということです。その概念をもとに枠組みがつくられたPISAは、さしずめ、世界共通でこれから求められる力を測るテストということになるのでしょうか。



これからの世界で求められる「能力」


このOECDの動きを踏まえ、世界全体でも、新たに「これからの世界を生き抜くために必要な力」を考える動きが生まれました。EUでは「キー・コンピテンシー」をもとに独自に教育にて伸ばすべき力を定義し、またアメリカやオーストラリアなど6ヶ国の政府と大学・産業界が協力して組織された「ATC21s(The Assessment and Teaching of 21st-Century Skills)」によって「21世紀型スキル」が定義され、注目を集めています。

▼ATC21sによって定義された「21世紀型スキル」




これらの定義を見てみると、我々が学んできた「学校教育」だけでは補えないスキルが非常に多いことがわかります。日本の教育は、確かに知識の習得をはじめとした基礎教育には優れています。世界の中でもトップクラスであることは間違いありません。しかし、その一方で、基礎教育以外に必要とされるスキルがこのように定義され、そしてそれらが日本の学校教育では十分に身につかない状況であることは、危惧すべき大きな課題なのだと思います。


21世紀を生き抜く力



2011年8月、アメリカのデューク大学の研究者であるキャシー・デビッドソン氏がニューヨークタイムズ紙のインタビューにこたえ、「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」とコメントしました。少し乱暴に言い換えると、2027年、今から約13年後には、現在存在している仕事は半分以上がなくなり、新たな「働き方」をする時代がやってくるということなのかもしれません。


そのような時代を生き抜くために必要とされるのが先に述べたような

「21世紀型スキル」です。


この21世紀型スキルを子どもたちが身につけることができるよう、各国では様々な工夫がなされています。国家全体で、教育というものに真摯に向き合った結果が徐々に出てきているのかもしれません。


しかし、日本は今だ、知識偏重型の教育・評価から抜け出すことができていません。文科省からの指導要領に沿って行われる昔ながらの教育、受験制度、そして若者よりも高齢者に税金を使う国家のありようなど、日本の教育改革には様々な壁が立ちはだかっています。しかし、だからといってこのままの教育制度を続けていては、いつしか破たんすることは目に見えています。 未来を見据えて教育を変える。そんな時期がすぐそこに来ています。これまで続いてきた教育のシステム自体を大きく変えること、教育というもの自体のありようについて、全く違う視点から考えていくことが必要なのかもしれません。

 
 

村上綾野

任意団体こどものみらい代表
村上綾野

1978年京都府生まれ。
神戸大学発達科学部で発達心理学を学び、2000年卒業。
システムエンジニア、新卒採用コンサルなどを経て、現在は教育系出版社に勤務。
育成と業務設計を専門とし、国内外の子供のために活動中。
https://www.facebook.com/Page.Kodomonomirai

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