こどもが変われば世界が変わる〜教育ビジネスの可能性 第3回 アメリカの養子縁組・里親制度 ~日本との違い~

村上綾野
 

はじめに

日本テレビで制作された児童養護施設を舞台としたドラマ「明日、ママがいない」。多くの抗議が寄せられ、スポンサー降板などにより注目を浴びていますが、そもそもの問題は日本において、子どもの「社会的養護」の問題があまり知られていないことだと思います。そこで、今回は「教育」という分野から少し離れ、日本とアメリカの児童養護対応の違いについて書いてみたいと思います。

 

日本の児童養護の現状

死別・貧困・虐待などの理由で家族と共に暮らすことができず、乳児院や児童養護施設などで生活する子どもたちは日本全国に約3万3千人。一方、里親などに委託され、家庭に近い環境で養育される子どもは5000人弱に過ぎません。まだまだ日本では里親制度は浸透しておらず、ほとんどの子どもたちが、全国に130カ所ある乳児院・590カ所ある児童養護施設で過ごしているのが現状です。

また、子どもたちのプライバシー保護などの観点から外部との関わりを望まない施設も多いため、児童養護施設で暮らす子どもたちの直面している問題について世の中に知られていないという課題もあります。施設で暮らす子どもの約半数が被虐待児であることや、施設職員の苛酷な労働状況、施設間格差、施設退所後の自立へのサポート不足など、日本の児童養護における「壁」は非常に高く、険しいものだといえます。

これらの問題が里親や養子縁組だけですべて解決できるとは思いません。また、「家制度」が重視される日本ではなかなか里親や養子縁組が浸透しづらい現実はあると思います。しかし、無条件に受け入れられ、愛され、そして将来にわたっての戻りどころになる「家庭」があるということは、子どもたちにとって必要なこと。厚生労働省も、里親や養子縁組などの制度拡充を目指していくという方針を掲げています。

 

アメリカの児童養護の現状

一方、アメリカでは年間12万組の養子縁組が行われています。要保護児童の実に77%が里親や養子縁組などの制度により新たな「家庭」を得ているのです。

このように養子縁組が浸透している背景には、いくつか理由がありますが、最大の要因は「親権剥奪」のしくみがあることかもしれません。アメリカでは児童虐待が疑われる場合、まずは警察により子どもが保護され、その後1ヶ月にわたり徹底的な調査が行われます。その後18カ月にわたり、家族機能を正常化するための援助プログラムが適用され、半年ごとにそのプログラムの効果が確認されます。18カ月たっても状況が改善しない場合は、親の意図に関わらず、子どもは親の手を離れ、里親や養子縁組などのパーマネンシーケアが適用されることになるのです。

今、アメリカでは「養子縁組」という選択肢はごく当たり前のものとなっており、養子として生活する子どもたちも特別視されることなく、親子共に屈託なくその事実を受け入れているケースも多いようです。

 

養子縁組をサポートする民間団体

このように養子縁組が一般化しているアメリカでは、養子縁組をサポートする民間団体の活動も盛んです。

カリフォルニア州のNPO、「Independent Adoption Center」(以下IAC)では、国内の主に新生児を対象にした養子縁組をあっせんしています。養子縁組の主導権を実母に持たせ、我が子を託す養育家庭を選択できるようにするとともに、実母と養親との交流もサポートしています。その結果、子どもたちは新しい家庭で育ちながらも、生みの親とも関係性を構築することができます。「実の親」の存在を隠すのではなく、その「親」の存在をも含めて受け入れること。それが、養子縁組における理想の形の一つなのかもしれません。


▼Independent Adoption Centerのホームページ


また、政府と民間が共同で立ち上げ、運営を行っている「Adopt US Kids」という団体では、家庭を必要とする子どもたちの顔写真とプロフィールをWebサイトで公開し、子どもを望む家庭とのマッチングを行っています。養子がほしい人が子どもを選ぶだけではなく、家庭が欲しい子どもからも養育家庭を選べるしくみです。子どもと家庭との相性を考えると「誰でもいい」というよりは「この子と家族になりたい」という想いがあるほうがうまくいくという考えに基づいた取り組みだそうです。日本ではまだまだ受け入れづらいしくみですが、一生の伴侶もWebサイトで探す時代、新しい家族をWebサイトで探すことも当たり前になっていくのでしょうか。


▼AdoptUSKidsのホームページ


日本での養子縁組の拡大に向けては、このような民間団体の活用も含め、様々な検討を重ね、議論していく必要があると思います。しかし、その議論に多くの人々が関わり、社会全体に養子縁組制度を浸透させていていくためにも、まずはこの「児童養護」の問題を周知していかなくてはならないのではないでしょうか。

 
 

村上綾野

任意団体こどものみらい代表
村上綾野

1978年京都府生まれ。
神戸大学発達科学部で発達心理学を学び、2000年卒業。
システムエンジニア、新卒採用コンサルなどを経て、現在は教育系出版社に勤務。
育成と業務設計を専門とし、国内外の子供のために活動中。
https://www.facebook.com/Page.Kodomonomirai

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