ファッションは世界共通語 第2回 本能に従って尖ること

岡田亮二
 


2014年のロックの日(6月9日)で、僕がやっているTailor兼BoutiqueのLOUD GARDEN/ラウドガーデンは2周年を迎えます。




この2年間というもの、Collectionラインの始動やデザイン請負の仕事など、山ほどある構想や野望はひとまず横に置いて、Tailor部門に傾注しました。

その甲斐があってか、お得意様からたくさんの温かいサポートを得ることが出来、数多のエキサイティングでユニークな服を作る機会に恵まれました。

イギリス、フランス、ドイツ、ジャマイカ、シンガポール、クウェート、中国などなど、世界各国からわざわざLOUD GARDENでオーダーすることを目的のひとつに来日なさる方達がいらっしゃったり、何本かの映画やTV番組で衣裳を担当する機会をいただいたり、たくさんの音楽家に店に集ってもらえたり、ゴールデンタイムのTV番組で紹介されたり、ヨーロッパの媒体から取材が入ったり、勢いのあるカジュアル系の小売店さんからコラボレーションの依頼が届いたり。

個人経営ですからしんどい思いをすることも多々ありましたけれど、その一方で、かように素敵な現象がいくつも生まれた、極めて充実した2年間でした。

ことあるごとに、リンクしていく様々なご縁がラッキーでもありました。

 

ただ、これらの現象はたまたま偶然にだけ起こったラッキーではなく、ある程度必然に起こった、言い換えれば、狙っていたことでもありました。

今から2年とちょっと前、僕は「LOUD GARDENを単なる小売店ではなく、エキサイティングな現象がたくさん誘発されるようなスペシャルな空間に育てていきたい!」という熱い想いに駆られて、グランドオープンの2012年6月9日に向けて動いていました。


具体的には、品揃え以外(置いてある商品がクール&アヴァンギャルドであることは大前提です!)に以下の3つに強くこだわっていました。


1.    ウィンドウを持っていてある程度の広さがある好立地の1階物件を確保すること


2.    洋服屋である前にカルチャーを発信出来る空間を作ること


3.    ユニークな編成のチームを構築すること


小売店の売上は「客数×客単価」で決まりますが、僕は、客単価よりも客数を上げることに一生懸命でありたいと考えていました。

そのためには、新しいお客様とたくさん出会える環境や仕組み、そして、お得意様が1シーズンの内に何度も足を運びたくなる寛ぎや仕掛けが必要になります。

また、店が軌道に乗り次第、Tailor部門以外の構想を実現するための策を一気果敢に打ちたいとも考えていました。

そのためには、クリエイティヴィティを極限まで発揮するのに最適な環境と仲間が必要になります。

そして、たくさんのお得意様と交わる一方で、Nick CaveやLeonard CohenやJim Jarmuschや山口洋といった、敬愛して止まない表現者たちの服を手掛けるという夢も加速度的に実現していきたいとも考えていました。

そのためには、商品と店とスタッフ、そして、ショップ名からメディアでの露出までを含めたイメージ全体が、エモーショナルであることが必要になります。

少々幼稚かもしれませんが、「3つのこだわり」にはこのような想いが背景にあって生まれたものです。

そして、2年が経った今では、その3つのこだわりはますます強固になってきています。

 

ところで、一般的に、Tailor業の大きなメリットとして「お得意様中心の商売」「手持ち在庫があまりいらない商売」「外にも売りに行きやすい商売」といった側面が挙げられます。

それ故、物件はビルの上層階でも、かなり手狭でも構わないと考える人が多いようです。

また、どんな層からも受け入れやすいように、あるいは外販をメインと割り切って、内装はシンプルあるいはクラシックにする、場合によっては事務所のように簡易にするケースが少なくないようです。

そして、これはどの業界でもそうかもしれませんが、スタッフは経験者を揃えれば間違いが少ないとされています。

 

つまるところ、僕はTailor業の一般論とは正反対の部分にこだわっていた訳です。

加えて、僕のこだわりは初期投資も大きくしがちなのでリスクも伴います。

普通なら逡巡しそうなところですが、「一般的な考えに則って作った店には一般的な現象しか起こせない」という確信がありましたし、「Tailor部門だけで終わるようなことは絶対にない」という決意も持っていましたので、上層階物件にはまったく興味がありませんでした。

「わざわざお世話になった会社と袂を分かって起業するのに、始めから根っこを譲っているようではお話しにならない」とも強く思っていましたから、根幹部分である3つのこだわりで迷うことはありませんでした。

 

そこがぶれなかったおかげで、我々の実力から考えれば、最高の立地にある最高の建物の1階物件と出会え、僕が大好きな某ブランドのフラッグシップショップを筆頭にエッヂーかつ丁寧な仕事で評価が高い業者さんに内装をお願いすることが出来、メンズどころかファッション業界自体が未経験の女性スタッフをチームに迎えることを躊躇せずにLOUD GARDENをスタートすることが出来ました。

 

オープンしたばかりの頃にご入店下さる方の定番的な言葉が「何屋さん?レコード屋さん?本屋さん?」だった時に「狙いのひとつは成功した!」と歓喜したものです(笑)。

 

そして、2年。

自分なりに、個性的でとがった商品、店舗、チーム、イメージにこだわり続けてきたからこそ、たくさんのエキサイティングな現象が生まれたに違いないと感じています。

昨年の11月には、新たなスタッフがひとり、日本を愛する、しかし、日本語をまだそこまでは自由に操れない若いドイツ人職人が加わりました。

ファッション業界未経験だった女性スタッフと日本語があまり喋れないドイツ人職人と風変わりな装いを好む僕。

「稼ぐ」にはもっと違う編成の方が高効率かもしれませんが、一般的な編成よりも格段に大きな広がりをイメージ出来るチームだと思っています。

2014 Spring/Summerシーズン用に作った広告ヴィジュアルを一般的なTailorのそれとはまったく違うテイストにしたのももちろんこだわりからです!






今回最も伝えたいことは、この「一般論とは真逆のこだわり」が、逆張り戦術から導かれた計算されたものでは無く、本能とでもいいましょうか、自然発生したということです。


自然だからこそ、LOUD GARDENが放つとがったRockなムードはリアルですし、反骨精神を持つRockなお得意様がコージーだと感じて下さるのだと、僕は信じています


自身でビジネスを始める際には、特にファッションのような自身の情熱や感性がダイレクトにお客様に届けられるビジネスを始める際には、そして、単に食べていくためだけに始めるビジネスでないのなら、「本能に従ってとがる」ことって、極めて重要ではないでしょうか。

起業して月日が経つにつれ、つくづく思うようになりました。

そして、まだまだ「とがり」が足りないとも思う今日この頃です(笑)。

 

もちろん、とがりが重要な一方で、その時点における、資金を含めた量的、質的な実力とのバランスが欠かせない、なんてことはきっと僕が言うまでもありませんね。

 

そして、本能に従えば、そろそろ既製服のCollectionをきっちりと作り込んで、世界市場へ再チャレンジすべき時期が近付いていることを強く感じます。

 

青山近辺にいらした際には、こんなLOUD GARDENをぜひ覗いてやって下さい。



 
 

岡田亮二

LOUD GARDEN Creative Director ,RYOJI OKADA Designer
岡田亮二

LOUD GARDEN Creative Director ,RYOJI OKADA Designer岡田亮二1971年 東京生まれ。
1995年より、イギリスを代表する老舗テーラー、GIEVES & HAWKESの日本展開における企画責任者として活躍。
2002年10月に自身のブランド/テーラーショップ、A WORKROOMをメンズアパレル企業と共同で立ち上げる。
A WORKROOMは、アヴァンギャルドなテーラーとして直ぐに頭角を現し、ミュージシャン、俳優、フォトグラファー、アスリート等、クリエイティヴな職業に就く数多くの著名人を顧客名簿に持つブランドへと急成長する。
2010年に、既製品のコレクションライン、A WORKROOM by Ryoji Okadaを立ち上げ、世界最大の紳士服見本市PITTI IMMAGINE UOMO(フィレンツェにて半年に一度開催)にて発表。
ヨーロッパの小売店に自身がデザインした服を卸すという長年の夢を実現させるとともに、イタリアで最大部数を誇る日刊紙Corriere della Seraで取り上げられる等、ヨーロッパのファッション業界に大きなインパクトを残すことに成功する。
PITTI IMMAGINE UOMOへの出展を4シーズン続けた後に「敢えて茨の路へ!」と決意、完全なインディペンデントの立場を得るためにA WORKROOMを解散させ、2012年に自身のテーラーショップLOUD GARDENと自身のブランドRYOJI OKADAを設立。
「独力での日本発世界」を目指して、”Love, Passion and The Heart of Rock’n Roll!”な日々を生きている。

LOUD GARDEN official website www.loudgarden.com
RYOJI OKADA official website www.ryojiokada.com

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