海外ビジネスに関連するコラム

アフリカ人にあこがれて 第5回

アフリカでトイレパニック

フォトグラファー  ヨシダナギ(nagi yoshida)

 

「 アフリカでは、トイレってどうしてるの? 」

これは私がよく人から聞かれる質問の1つ。勿論、アフリカにだってキレイなトイレは少ないけれど、大半のトイレは皆さんが想像している通り汚い。いや、それ以上に酷いかもしれない。しかし、ココでただ普通に汚いのトイレの話をしても仕方がないので、今回は私が本気でぶったまげたトイレの話をいくつか紹介してみようと思う。※前回のゴキブリ話に続いて、こんなしょうもない話ばかりしていていいのかと少々悩んだが、私にはこのような話題しかないのでもう開き直って行きたいと思う。

~ まさか、アイツが私の股間に‥‥ ~

1つ目のトイレは、ウガンダの最も貧しい町でNPOのお手伝いをしながら、ホームステイをさせてもらっていた家のトイレで起きた話。私がホームステイさせてもらっていた家は町の中でも裕福な方ではあったが、町のインフラが十分に整っていない為、水道の蛇口から水が出るなんてこともないし、夜になれば真っ暗になってしまう。その為、真夜中にトイレで目を覚ましてしまうと、暗闇の中、フラッシュライトを片手に無数の奇妙な虫や生き物が待ち構えているガレージを通ってトイレまで行かなくてはならない。

でも、どんなに暗闇が怖くてもフラッシュライトを点けてはいけない。ライトで照らした瞬間、四方八方から私の最も苦手とする蛾や得体の知れない生き物に襲撃されてしまう( チビりそうになった )これは小心者の私には非常に耐え難いので、どんなに暗闇が怖くても我慢した。ただ、万が一の時の為だけにフラッシュライトは手に握っていた。

そして薄気味悪いガレージを通ってトイレに入り( 和式タイプの便器 )まさにショボショボショボと出し始めた時、私は自分の股間に今まで感じたことのない衝撃を感じ、驚愕のあまりオシッコをまき散らしながら絶叫した。恐る恐るフラッシュライトで便器を照らしてみると‥‥

2 0 c m 以 上 は あ る 不 細 工 な 1 匹 の カ エ ル が 私 の こ と を 見 つ め て い た 。

( 私の股間にぶつかってきたのはお前だったのか! )と、カエルと睨み合いをしていると、私の叫び声に驚いて飛び起きてしまったママが “ナギ!大丈夫!?何があったの!?” と大きなホウキを抱えて走ってきた。ママに事情を説明すると「 も~う!ビックリさせないでよ。でも、無事ならよかったわ」という優しい言葉と共に、凄まじい勢いでホウキを振り下ろし、大きなカエルを一撃で殺してしまった。さすが、アフリカ。手が早い。

それにしても私のオシッコをかけられて一生を終えることになってしまったなんて、あのカエルには本当に悪いことをしたと思う。何故、あの時、フラッシュライトを点けて便器を確認しなかったんだろうと未だに悔やんでいる。それ以来、私は1匹でも多くの生き物の命を守るべく、暗闇でトイレを使用する際は便器を一度ライトで照らすようになった。

~ 波打つ便器 ~

2つ目も、これもまたウガンダのトイレの話。NPOのお手伝いをしていた先で私が「 近くにトイレない? 」と尋ねると、なんと徒歩3分圏内に公衆便所が4棟もあるという。しかし、そのうち使えるトイレは1棟の1室のみ。その使えるであろうトイレへと向かい、中へ入ってみると、そこには和式タイプの便器があった。問題はその中だった。便器の中に1本や2本用意されてるくらいでは驚きもしないが、なんと便器いっぱいに土らしきものがビッシリと詰まっていたのだ。

普通ならそれが使えるトイレだとは思わず、ココではない!と場所を変えるのが正しいのだと思うが、アフリカの変な文化に慣れしてしまっていた私は「 この土を耕せってことね。アフリカだもんね 」と変な解釈をしてしまい、この溢れんばかりの土に向かって用を足してしまったのだ。そして、次の瞬間‥‥

私 の オ シ ッ コ を 浴 び た 便 器 の 中 の土 が ワ ーン と 静 か に 波 打 ち 始 め た 。

初めて見る光景に驚き早く逃げ出したかったのだが、中々止まらない。その間にも便器の中の土は勢いを増し、より激しく波打ち、終いには突如何かがピチピチと飛び跳ね始めた。正直、この動く便器は気味が悪かった。が、生まれて初めて見る波打つ便器に物凄く興味を惹かれた。

( 今このチャンスを逃したらもう2度とこの動く便器を見ることが出来ないかもしれない‥‥ )

そう思った時、私は思いっきり便器に顔を近づけて観察していた。そして、驚きの事実を発見した。

便器にビッシリ詰められていたのは土ではなく”大量の人糞”だったのだ。そして、その中で命を宿らせた無数のミミズのような小さな生き物が私のオシッコを天の恵みと勘違いしたのか、元気よく飛び跳ねたことにより便器の一部だと思っていた部分がグワーンと波立ったのだ。

この後、トイレの場所を教えてくれた人に「 何年使ったらあんなにキレイにウンチが便器に溜まるの? 」と尋ねた時に初めて自分が教えられたトイレとは別のところを使用してしまったことに気が付いたのは言うまでもない。が、今となっては間違えたからこそ、見ることの出来た奇怪な便器として私の脳裏にハッキリと焼き付いている。私は一生あの波打つ便器を忘れないと思う。

~ 飛び出すトイレ ~

3つ目はナミビアのローカルサイドで出くわしたトイレ。途中でオシッコに行きたくなり、小さな村に寄り、トイレを借りることにした。小さな村故に地面に穴をササッと掘って、仕切りすらないような丸見えの簡易トイレなんだろうなと思っていたのだが‥‥違った。村人は「 アッチに普段は使っていない来客用のトイレがあるんでソコを使って下さい! 」と、私を家の外にあるトタンで囲われた小さな小屋へと案内してくれたのだ。もしや、珍しくキレイなトイレを使えるのかと徐々にテンションが上がり始める私の目の前に現れたのは‥‥

便 器 が 一 面 ク モ の 巣 だ ら け の 洋 式 ボ ッ ト ン 便 所 。

( 少しでもキレイなトイレを想像した私が間違いだった‥‥ )

小屋の中もクモの巣だらけで、真っ直ぐ立つものならば頭にクモの巣がかかってしまうという状況。しかし、私の膀胱は限界に近付いている。贅沢を言ってトイレを選んでいる場合ではない。

しかし、ココはアフリカのトイレ。 “有り得ないものが飛び出してくる”ということをウガンダで十分に学んでいた私は尿道括約筋に気合を込めながら、クモの巣がビッシリと張られた便器をフラッシュライトでジックリ照らして確認した。が、クモの巣が張られている以外は普通のトイレだった。

( そもそも、こんだけクモの巣が厚く張られていたら生き物が中に入り込むことも出来ないし、その中に何かがいるなんてことはもっと有り得ないだろう )と、流石に便座に尻をつけるのは気が引けたので便器の前で膝を曲げ、お尻だけを便器に突き出す態勢で用を足すことにした。

ショボショボと用を足し始めると、その水圧でクモの巣が徐々に破け始めたのだ( この光景がまた私には異様に面白く感じられたのだ )”このクモの巣をキレイさっぱり破ってやろう!“なんて思って、ノリノリに用を足していた時にその出来事は起こった。

破れたクモの巣の間から私の下腹部目がけて蛾が勢いよく飛び出してきたのだ。

まさか、クモの巣の下で大嫌いな蛾が待ち構えているなんて予想もしていなかったものだから、1人トイレの中で大騒ぎ。驚いて飛び跳ねた際にクモの巣が頭に引っかかるし、オシッコはまき散らすし‥‥そしてしまいには、私の叫び声に驚いた村人がトイレのドアを開けてしまい、醜態を晒したというのは言うまでもない。

ただ、クモの巣を破って蛾の尊い命を助けたのは他でもない私のオシッコである。

~ 追われるトイレ ~

ウガンダやナミビアで上記のようなトイレに遭遇して以来、私は“下手にトイレを借りるよりも、青空の下で済ませた方が安全なのではないか”と思うようになった。これはエチオピアの田舎町の外で、用を足していた時の話。

外でオシッコをする時は人気が少ない場所を選ばなくてはならないので意外と神経を使う。それ故にスポットを探すのに何分も捜し歩くことは少なくはない。そして、やっと見つけた茂みで腰を下ろした時、予想外のハプニングに見舞われた。

なんと何処からともなく子供たちが大声を出しながら猛ダッシュで私の方に迫ってきているではないか!

嫁入り前の日本人女性たる者、尻を丸出しにして用を足している姿など子供たちに見せてはならない。しかし、一度出し始めものがそう簡単には止まってくれるわけもなく‥‥現地の子供たちに現場を取り囲まれるというハプニングが起きてしまった。ああ、恥ずかしい。

この恥ずかしい経験は偶然の珍事かと思いきや、実はエチオピア以外の国でも経験している( よっぽど運が悪いのかもしれない )勿論、外で用を足す際は、しっかり周りを確認している。が、アフリカ人の並外れた視力には身を隠すことが出来ない。どんなに数キロ離れていようが彼らの目にハッキリと私が見えているのだから。特にそれがローカルサイドの子供となると、よそ者が珍しくて仕方がなくて、人が排尿中だろうと関係なしに興奮気味に迫り来るのだからたまったもんじゃない。マリではあまりにも大人数が目の前から迫ってきて、パンツを履ききる前に尻丸出しで逃げたこともある。

この経験をキッカケに私は渡航中にロングワンピースをよく着るようになった。「 ロングワンピースなんて動きにくいでしょう? 」と言われるが、外で用を足す時なんかは丁度いい。お尻隠せるし、最悪パンツを履ききる前に追いかけられてもお尻は晒さずに逃げることが出来る。だからアフリカへ行く女性人にはロングワンピースやロングスカートを強くおすすめしたい。

といったようなクダラナイ話しか出来ない私ではございますが、2015年1月10日(土)上北沢の賀川豊彦記念 松沢資料館・礼拝堂にてトークショーをやらせていただくことになりました。当日はこのコラムに綴っているような感じで私のアフリカ現地での撮影裏話や珍事などをスライドショーとともにお話しさせて頂こうと思っております。堅苦しい話は何一つないので( 出来ないので )肩の力を抜いてお気軽に会場まで足を運んで頂ければ嬉しゅうございます。トークショーの詳細は下記のページで確認出来ますので、ご覧下さいませ( ちゃっかり宣伝してスイマセン! )

【 Pinpoint Forum VOL.3 | nagi yoshidaのアフリカ生存記録 – 裸は国境を超えて - 】

日程:2014年1月10日(土曜日) 10:30~12:00
会場:賀川豊彦記念 松沢資料館・礼拝堂(京王線・上北沢駅下車南口徒歩3分)

詳細:https://www.pinpoint.ne.jp/event/2014/12/16/pinpoint_forum_vol3.php

チケット購入:https://www.pinpoint.ne.jp/shop/for_mailmagazine/shop.php

※当日会場で当日券を購入して頂くことも可能です。

※きれいなトイレあり。

 

ヨシダナギ(nagi yoshida)

フォトグラファー
ヨシダナギ(nagi yoshida)

1986年生まれ、フォトグラファー。
幼少期からアフリカ人に意味の分からない憧れを抱き「自分も大きくなったらアフリカ人のような姿になれる」「彼らと一緒に同じ生活が出来る」と信じて生きる。

イラスト・写真を独学で学び、2006年よりイラストレーターとして、2009年よりフォトグラファーとして活動。アフリカからインスピレーションを受けた独特の色彩感覚と世界観、ユニークなタッチが欧米のアニメーションスタジオなどから評価を受け、2011年頃からは国内外問わずキャラクターデザインをメインに活動中。イラストを描く傍ら、アフリカや発展途上国に訪れ少数部族などのポートレート写真を撮り始める。大使館後援イベントへの写真展示オファーを機にフォトグラファーとしての仕事を確立。現在は海外でポートレートを撮りながら、アーティストやモデルの宣材写真などの撮影も行う。今夏(2014)、第一弾写真集を発表予定。

WEB SITE : http://nagi-yoshida.com/
BLOG : http://ameblo.jp/bohemiandays/
Twitter : @nagi_yoshida