等身大の日本をベトナムに! 第2回 私がベトナムで感じた焦燥感〜相互理解が足りない日本とベトナムの現実〜

石井香織
 


Chuc mung nam moi ! 

常夏ホーチミンより、新年明けましておめでとうございます。

年末年始というと、日本では至る所でお正月がしみじみと感じられると思いますが、暖かい気候のせいか、ここ、ホーチミンでは年明けといった、自然と身が引き締まるような感慨深さはないままに2014年を迎えました。 

 

【写真1】 旧正月(テト)に向けた企業プロモーション


日付の変わる大晦日の深夜0時にはホーチミン市の街の中心地で花火があがりはするものの、旧暦(太陰暦)で新年を祝うため、祝日は1月1日の元日のみ。ベトナム人も普段と変わらぬ休日を過ごしたようです。ただ、在住者の私の目からすると、年末のクリスマス前から街はイルミネーションに彩られ華やかになり、旧暦のお正月(テト)に向けて何故かいつも以上にバイクの交通量が増え、なんとなく誰もがソワソワしている雰囲気が伝わってきます。


【写真2】 街のネオンは至ところでもっと華やかになっていく


さて、ご存知のように、ベトナムは親日ということでも良く知られています。

アジア圏を中心にグローバルマーケティング事業等を展開するアウンコンサルティングによる「アジア10カ国の親日度調査」の2012年の調査結果※1によると、ベトナム人の親日度はすべての国の中でトップの97%。「日本が好きか」という設問では、「大好き」45%、「好き」52%、さらに「日本人が好きか」には「大好き」18%、「好き」74%と驚異的な数字です。「日本の商品・サービスが好きか」には「好き」が95%を占め、「好きな商品・サービスは何か」には、1位:家電、2位:食事、3位:アニメ・マンガという結果でした。

実際、生活していても、日本製品の品質の高さに対する評価や日本人のまじめさ、戦後の急速な発展など、ベトナム人の日本に対する評価はアジアの国々の中では断トツといった感じです。

 

本当にベトナムは親日なのか?肌感覚では圧倒的に強い韓国の存在

 

それにもかかわらず、です。

前回ご紹介したように、ベトナム・ホーチミンで強烈に感じたのは韓国の存在感でした。初めてベトナムの地に降り立つと韓国の露出が目立ち、テレビドラマを始め、文化的にも韓国スタイルが際立って生活に浸透しています。

数字で見るのと生活で感じるこの温度差。とても違和感がありました。確かに生活していてベトナム人と接していると親日というのは充分に感じるのですが、生活の中での肌感覚では数字で見るほどの突出した日本を感じなかったのです。

 何故かわかりませんが焦りました。

 当時、円高の影響もあり日本国内でベトナムが注目されていたためか、日系開発オフショアの拠点として起業家のほか、ベトナムでの可能性に懸けて、日本の店をたたんで来た、といって移り住んでいる個人事業主たちが私の身近にいました。

  それだけに、この温度差は何なのか、知りたいと思いました。この自分の中の違和感を解消できないかと思いました。

確かに日本はベトナムの為に多くのお金を出して、ホーチミン市内にも大きな橋を作ったり、綺麗な幹線道路が出来たりしています。でも、それは、市内観光をした時のベトナム人添乗員さんが「はい、あれは日本がODAで作ってくれた橋です」と、わざわざ紹介してくれたときに知ったのです。逆に言うと紹介してもらわないと分からないという印象です。それはベトナム人の日本に対するインパクトも同じなのではないか、と思いました。


安い労働力をベトナムに求める日本企業、でも本当にそれだけでいいの?


 温度差の原因は、日本という国が、ベトナムに表面しか理解浸透していないせいなのではないか。日本家電の人気にしても、ホーチミン市を離れれば、エアコンもない家も多いベトナムのこと、ベトナム人には結局、日本家電は高嶺の花で憧れの商品にすぎず決して”身近な日本製品”ではないのではないか。2013年、国内・外資系企業の月の最低賃金水準はホーチミンでは235万ドン(約11,000円)なのだから当然と言えば当然かもしれません。そして日本企業も、製品を投入する市場としてベトナムをみるのではなく、ベトナムの魅力は安い労働力としか見ていない企業が多いのではないか。

 このままでは、経済発展著しいベトナム、ホーチミンで、日本は競争に負けてしまうのではないか。逆に考えれば、もしこの数字で見る親日と肌感覚の親日の温度差がなくなったらどれほどのパワーが生み出されることだろう。

 もっとベトナム人に今の日本を知ってもらって、技術や製品、文化、食がベトナム人にとって身近になったら、日本の競争力が高まり、ビジネスに活気が出るのではないか。私はマーケティングや経済の専門家ではありませんからただただ思いを巡らすことしかできませんでした。

 

親日のベトナム人に更に日本のファンになってもらう方法

 

そしてある時、まずは親日のベトナム人にもっと日本のファンになってもらえばいい。日本の製品や文化、食が身近になるにはまず広く知ってもらえばどうか。知ってもらって良さを分かってもらえば、購買意欲やビジネスに結び付き、そしてそれがきっかけで今まで以上に国を越え日本人とベトナム人との交流が増えたとしたら。そうしたら今後の日越関係だって良くなるはず!と思い至りました。単純で恥ずかしいですが真剣でした。しかし、どうしたら日本のファンになってもらえばいいのか。全く分かりません。

そんな思いに悶々としていた時、たまたま『ベトフェス』というキーワードを知りました。東京の代々木公園で2008年から開催されている、ベトナムフェスティバルの事です。調べてみると毎年15万人もの来場者数を集めるイベントです。

 

これだ!と思いました。

 

日本人にベトナムの事を知ってもらうのに、日本ではもう5年も前からベトナムフェスティバルをやっている。ホーチミンではどうだろう?ベトナム人に日本の事を知ってもらうベトナム人の為のイベントを『ジャパンフェスティバル』として立ち上げたらどうだろう。

 ちょうど2013年は日本とベトナムの外交関係樹立40周年となる友好年で両国の良好な友好関係発展の為に、数々の記念イベントが企画されているところでした。

 有休消化もせずに、ベトナムに移住する一カ月前まで大手企業の本社最前線で働いていた私には、それまでにイベントを立ち上げた経験はもちろん1度もありません。でも閃いてしまったのです。初めての海外生活、知り合いも人脈もない、コネも経験も肩書きもない、社会的存在感的には何者でもなかった私の新たな挑戦が始まろうとしていました。

 

【参考資料】

※1:「アジア10カ国の親日度調査」アウンコンサルティング プレスリリースhttps://www.auncon.co.jp/corporate/2012/110602.html

 

 
 

石井香織

ベトナム在住エグゼクティブコーチ
石井香織

大学卒業後、大手製薬メーカー勤務。人材開発、本社CSR業務に携わった後、2012年、夫の事業の関係でホーチミンに移住。日本とベトナムの友好の懸け橋になるべく、イベントを企画。東京代々木で毎年開催される「ベトナムフェスティバル」の逆バージョンである「Japan Festival in Vietnam」を立上げ65,000人を集客する。ホーチミン事務局長。その他、経営者層を対象としたエグゼクティブコーチやセミナー講師も務める。ホーチミンで働く女子のためのキャリアアップコーチング、聴き方学校等のセミナー開催。JACリクルートメントベトナムコンサルタント。熱気溢れるホーチミンの今を肌感覚でお伝えしていきます。

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