等身大の日本をベトナムに! 第3回 ベトナムでジャパンフェスティバルを開催へ

石井香織
 

ベトナムは旧暦で新年を祝います。

今年は1月31日が旧暦の元日になりました。ベトナム人と話していると、年末、というと旧正月前をさすので混乱します。

大晦日から元日へ日付が変わると同時にサイゴン川沿いでは花火があがり、敬虔な仏教徒の家では各家庭の仏壇にお線香を手向け礼拝する姿が見られました。


▼旧正月を祝うグリーティングカード


元日は朝早くから遠くの路地から太鼓や銅鑼のお囃子が賑やかに聞こえてきて、近くのお寺からは早朝から参拝している人達が撞いているのか、普段は聞こえない鐘の音が長い間、聞こえていました。日本では除夜の鐘は大晦日の夜、年が変わる元旦にかけて撞きますが、文化が似ているとはいえ異なるところが海外に住んでいて面白いところです。旧正月(テト)の元日を『1日』と数えていくので今年は2月1日が『2日』となりました。この習慣は、だいたい10日を過ぎると西暦に戻るそうで、テトの最中にベトナム人の友達と何か約束をするときには注意が必要ですよ。

さて、ここまでのコラムでも書いてきましたが、親日のベトナムの中での韓国の存在感を見るにつけ、日本のプライオリティをもっと高めたいという、焦りに似た気持ちがムクムクと湧きあがってきました。日本にもっと頑張ってほしい、日本頑張れという気持はそのまま自分にも跳ね返ってきました。コネなし、人脈なし、経験なしではあったけれどもベトナムの人たちに日本を知ってもらいたい、ベトナムと日本が交流できる場づくりがしたい、という気持ちが原動力となり、企画を持ち込み立ち上げたイベントが『Japan Festival in Vietnam 2013』です。

最大のスポンサーである近畿日本ツーリストや日本のベトナムフェスティバルの実行委員会のメンバーと実行委員会を組織し、ホーチミン事務局の事務局長として、日本側と連携・協力し合いながら昨年2013年11月16日・17日に第1回目を開催しました。

ホーチミン市の街の中心にある公園で開催したこのイベントは、出展数は40店舗を超え、ステージプログラムは29組、そのうちベトナムからも4組出演してもらうことができました。2013年は日越外交関係樹立40周年ということもあり、政府の日越友好40周年の記念イベントとしての認定もいただくことができました。多くの方のご協力を得て開会式には駐日ベトナム社会主義共和国フン大使や青柳陽一郎議員、在ホーチミン日本国総領事館の日田春光総領事などにご登壇いただき華やかに幕を開け、2日間の開催でのべ65,000人もの方に来ていただくことができました。今年も継続して開催していく予定です。


▼敬虔な仏教徒たちは元日の早朝から寺院を訪れる



ベトナム国内で、ジャパンフェスと言われるようなイベントは沢山開催されていました。しかし、どれも単独で開催されているような印象を強く持ちました。私は、これをベトナム国内で単独のイベントとして行うのではなく、日本のイベントと関係性を持っているようなものにして、国の懸け橋になるようなイベントにしたら面白いのではないかと考えていました。そんな時に耳にしたのが、日本の東京代々木で行われているベトナムフェスティバルです。2008年から開催されているこのイベントは、日本の中でも唯一のベトナムフェスティバルということで、日本中から多くのベトナム人も集まり、会期中は15万人もの来場者数を集めるイベントです。実行委員会の役員には駐日ベトナム大使も名を連ね、ベトナムから来日するアーティストなどのステージプログラムも豊富で、この時ばかりは、代々木公園がベトナム様式に様変わりします。こうした“国同士が友好の気持ちで繋がっている”と実感できるイベントの姉妹イベントとして、日本では「ベトナムフェスティバル」、ベトナムでは「ジャパンフェスティバル」を開催したらどうだろう、と思い立ちました。連続した関連性のあるプログラムを日本とベトナムで実施すれば、同じメッセージを発信することもでき、また互いの国をイベント目当てに行き来してくれる人も増えるのではないか、と思ったからです。その他に同日に開催して、ユーストリームなどで日本とベトナムを繋いで、互いのイベントの様子を映し出しても面白いのでは、と思いが膨らんできました。

まずは、知人を通じ、2012年の9月にベトナムフェスティバルの実行委員会の1人を紹介してもらい、事務局長代理に企画を持ち込みました。ベトナムフェスティバルも、実際にベトナムで開催したことはない、とのことで、事務局長の青柳陽一郎議員にも面会が叶い、いよいよホーチミンでも始動の運びとなりました。


▼Japan Festival in Vietnam 2013 開会式の様子


イベントの開催までの道のりは当然平坦なものではありませんでした。

まずはホーチミンで場所探しです。当時は2013年が日越友好年40周年にあたるので、政府からも商工会を通じて記念事業をするようにとの通達が出ていました。記念事業関連の申請をする場合には、大使館か、総領事館の文化広報担当官に連絡をという情報をHPで見つけ、まずは大使館に電話。英語で大使館に電話をかけるなんて、経験がないので、おっかなびっくりです。ようやく総領事館の担当官にアポイントが取れました。

当時の担当官は忙しい中何度も時間を割いてくれ、場所に関する事から、ホーチミンで気をつけないといけない事を逐一細かく教えてくださいました。私が全くの素人である事を見抜いていたからでしょう。何よりも難問はイベントを開催する為のライセンスとのことでした。ベトナムではビジネスだけでなく、人が集まって何かをする際には注意が必要とのことで何をするにも「ライセンス」が必要です。社会主義のせいか、政治的な集会を阻止する目的もあるようです。総領事館主催のイベントも毎年行われているのですが、総領事館でも全てのライセンスの取得に6カ月はかかり、その間に何度も訂正と再提出を求められるということでした。特に外国人がイベントを開催する際には、申請が厳しいそうです。

1つのイベントを行うにも、形態によりますが、ホーチミン市役所、文化スポーツ観光局、広告管理局、交通運送局、ホーチミン市投資管理局、公園管理局といったところのライセンスが必要となりました。その他に、人民委員会や、公安といった、物々しい機関の名前も幾度となく耳にしました。

特に、場所を確約するためのライセンスを取るのは時間がかかりました。

イベントを実施しようと考えていた公園は、街の中心で観光客もベンタン市場にほど近い市民の憩いの場でした。大きさも立地もイベントをするにはまさにうってつけの場所です。ところが、現地のビール会社がイベントを開催したり、比較的大きなイベントが行われていたにも関わらず、不思議と日系関連がイベントを開催したという話を聞かない場所だったのです。総領事館からも、野外でのオープンスペースでのイベントは、安全にイベントを実施するための警備等が難しく、公安からのチェックも厳しいとアドバイスは頂いていたのですが、何よりもまず、どのようにライセンスを取ればいいのか経験のある日系の組織がありませんでした。総領事館も経験がないとのことでした。つまり、ライセンスを取る難易度が高い、ということなのです。

こうなると全てを私個人で出来ることではないので、現地のイベント会社を探してパートナーシップを組み依頼していきます。イベント会社も様々で、日系の大手は予算が高くつき、現地のベトナム人の会社では、私自身相場がわからないという弱みがありました。幸い、ベトナムへの愛情が深く、公園使用のライセンスも依頼できる日本人が経営している現地のイベント会社とパートナーシップを組むことができました。その会社によると申請の手続きを進めるうちに、この公園は管轄が、他の場所とは異なる特殊な場所で普通のイベントとは申請手順も違うということがわかってきました。規模が大きかったこともあり、ライセンス関連の手続きを一手に引き受けてくれたパートナーのイベント会社は仕事とはいえ、本当に大変だったろうと思います。

その他に提出する書類の中には、日本からアーティストを招聘しようとすると、曲名のリストだけでなく歌詞に政治的な思想が盛り込まれていないか、歌詞を全てベトナム語に翻訳して提出する必要がありました。演目にベトナム人にも馴染みのある、ヨサコイ踊りのソーラン節もありましたが翻訳者もソーラン節には困惑した事と思います。ご当地アイドルの招聘については、衣装について肌の露出が過剰ではないか、当日はどうか、などもチェックされるポイントでした。

その他にも色々と乗り越えてきた壁はあったのですが、また追々ご紹介する機会でお伝えしていければと思います。山あり谷ありの準備も急ピッチで進んでいき、いよいよ開催1週間を迎えようとしていました。

ところが、1週間前になってもまだまだ安心は出来なかったのです。

 

 
 

石井香織

ベトナム在住エグゼクティブコーチ
石井香織

大学卒業後、大手製薬メーカー勤務。人材開発、本社CSR業務に携わった後、2012年、夫の事業の関係でホーチミンに移住。日本とベトナムの友好の懸け橋になるべく、イベントを企画。東京代々木で毎年開催される「ベトナムフェスティバル」の逆バージョンである「Japan Festival in Vietnam」を立上げ65,000人を集客する。ホーチミン事務局長。その他、経営者層を対象としたエグゼクティブコーチやセミナー講師も務める。ホーチミンで働く女子のためのキャリアアップコーチング、聴き方学校等のセミナー開催。JACリクルートメントベトナムコンサルタント。熱気溢れるホーチミンの今を肌感覚でお伝えしていきます。

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