2014年4月11日
4月の日本からの便りは何と言っても『桜』。Facebookの桜の投稿を見るたびに、花の時季のちょっと肌寒くなる感じとか、養花天という風情ある言葉を思い出して日本を懐かしんでいます。
一方のホーチミンといえば、4月は一年のうちで最も暑くなる時期。ここ数ヶ月間、雨の降っていない乾いた地に強い太陽が照りつけ、家々の白い壁が反射する光の強烈さに街全体が白っぽく見えるほどです。夕方の5時を過ぎると夕涼みに外に出てくる人や、会社帰りの人で街は喧騒に包まれます。バイクの騒々しさや元気な子供たちのはしゃぎ声に多少閉口しながらも、空を見上げると綺麗な夕暮れ。その美しさに心を奪われてしまいます。絶え間なく吹くそよ風が時折強く吹いて、季節の変わり目も感じさせます。5月からはそろそろ雨季のスタートです。
▼ 常夏のホーチミン。夏の夕暮れはいつも美しい
さて、この連載は経験も人脈もない私が、人とのつながりと縁に助けられてベトナムのホーチミン市で日本の文化を紹介するイベントを開催するまでの様子をお伝えしています。途中、時差のある日本のスポンサー様とのコミュニケーションに苦労したり、「あのイベント」と言われただけで、大使館の参事官に通じてしまうほど、難易度の高い会場を借りようとしていて開催が危ぶまれていたと後から思い知ったり、誹謗中傷の噂の火消しに奔走したりといろいろ山あり谷ありのイベント準備でした。
頼りになったベトナム人女性リーダー達
イベント開催までの1ヶ月間は3時間前の事がもう3日も前のことのように思え、先週の事が1ヶ月も前の事のように感じるほど時間がゆっくりと過ぎて行きました。それほど密度の濃い時間を過ごしていたのだと思います。事務局にもメンバーが通常の仕事が終わってから集まり日付が変わるまで詰め、毎日毎日、食事を摂る間もないほど、日付が変わるまで打ち合わせや準備に追われました。
そんな時に頼りになったのは、実行委員会の仲間はもちろんですが、特にイベント会社に勤めるベトナム人女性リーダー達でした。若く家庭も持つ身なのに日本人並みに残業や徹夜も厭わず、拙い私の英語も一生懸命理解してくれようとしてくれ、議論には何時間でも付き合ってくれました。イベントを成功させようという一体感が生まれ、優秀で勤勉、情に篤いというベトナム人像が私の中で鮮やかに刻まれた貴重な経験です。
事実確認に追われた日々
こうして一日一日をジリジリと、しかしゆっくりと重たい石の車輪がゴトリゴトリと前に進むように準備をしていた開催10日前。これまで、一つひとつ積み上げてきたものがガラガラと崩れそうになった事件が起こりました。
その日の朝、いつものように、駐日ベトナム大使の秘書と電話で報告や情報交換をしていた時でした。ふとその秘書の方が言いました。
「イベントの会場ですが、『エリアB』ですね?」
一瞬意味がわかりませんでした。
会場として予定していた場所は『エリアA』でした。それを、隣の『エリアB』とは?今からの会場変更はあってはならない事ですし、考えただけでも命も縮むような事態です。
把握している事実もありました。
私たちが実施するイベントの1週間後に他国の団体がエリアAでのイベントを予定していました。2013年は他の国もベトナムとの外交関係樹立40周年の年だったので、日本だけでなく多くのイベントが実施されていました。そのこともあり何か日付等の情報が錯綜しているのではないか。
それから事実確認に追われました(日本のように、管轄の部署に電話して、というような訳には行きません!)
色々と手を打った結果、開催1週間前に当局から最終通告されたのは、『エリアB』での開催。詳細を確認してみると、私たちのイベントを含めて3つのイベントが同じ会場で予約をしていたようでした。実行委員長である、駐日ベトナム大使が「エリアBは良い会場だ」と言ってくださった事もあり急ピッチで会場変更の準備が進んでいきました。イベント会社の社長は、ベトナムで有りそうな事を予想していたのか、会場レイアウトも直ぐに挙がってきて、事務方を担当していた私は出展者様への案内等に追われる日々が続きました。
ベトナム在住エグゼクティブコーチ
石井香織
大学卒業後、大手製薬メーカー勤務。人材開発、本社CSR業務に携わった後、2012年、夫の事業の関係でホーチミンに移住。日本とベトナムの友好の懸け橋になるべく、イベントを企画。東京代々木で毎年開催される「ベトナムフェスティバル」の逆バージョンである「Japan Festival in Vietnam」を立上げ65,000人を集客する。ホーチミン事務局長。その他、経営者層を対象としたエグゼクティブコーチやセミナー講師も務める。ホーチミンで働く女子のためのキャリアアップコーチング、聴き方学校等のセミナー開催。JACリクルートメントベトナムコンサルタント。熱気溢れるホーチミンの今を肌感覚でお伝えしていきます。