2013年12月17日
韓国の存在感が大きいホーチミン
ホーチミンに移住するかもしれない
そんな話が具体的になったのは、2011年8月のこと。それまで未知だったベトナムという国への興味関心が高まり、意識するようになりました。すると、とにかく目につくのです。2012年8月にホーチミンに実際に移住するまで、日本の紙面では「ベトナム」や「ホーチミン」などのベトナムに関するキーワードを見ない日はないのではないか、というほど。もともと、日本のベトナムに対するODAは世界でトップ(2010年の対ベトナムODA拠出額は、約12億ドル)。ベトナムは親日、という話も聞いていましたし、日本でのベトナム熱がこんなに高まっているのだから、ベトナムは日本の企業や文化に対して非常に好意的なのだろうと、期待も高まりました。
ところが、実際にベトナムに降り立ってまず驚いたことは、韓国の存在感。2012年当時は、円高ウォン安の追い風の影響もあってか、SAMSUNG、LGなどの韓国の電化製品が街中に溢れているように感じ、ハンバーガー業界で唯一進出していたロッテリアや、大型ショッピングモールのロッテマートが目立っていたこと(日系のショッピングモールは2014年オープン予定)。テレビを点ければ韓国ドラマの吹き替えが流れ、世界中で大ヒットしていた、PSY(サイ)のカンナムスタイル(北米ミュージックビデオダウンロードチャート1位(iTunes))を街中で耳にし、若者向けのショップではK-popが流れているような状況で、ベトナムの生活に強く浸透しているように感じました。主要な東南アジアの国々では、華僑の経済力を感じますが、社会主義共和国のせいか、ベトナムでは他の東南アジア諸国に見る中華系の色がそこまで強く感じられません。そのことも韓国の存在を感じさせたのでしょう。韓国の進出はベトナムに限った事ではありませんが、特に親日と聞いていたベトナムでもここまでその存在を感じるのか、と驚きました。
<遠くからでも目立つロッテマート>
<空港のすぐそばには韓国人街が広がる>
「昔は、テレビと言えばソニー、エアコンと言えばパナソニック。でも今は、韓国製品は安くて性能がいい。」
もちろん、日本の大企業の看板もよく見かけます。Canonや三菱、家電でも信頼が高いのはSonyなど。ホーチミンを代表するタクシー会社が使う車はもちろんトヨタ車です。ホーチミンの風物詩とも言える街中を走るバイクにおいては、HONDAが実に64%のシェア(2011年度)を誇り、ベトナムでは欠かせない企業となっています。しかし、なんとなくインパクトが薄く感じます。それは、何故か。ベトナム語を習っていた大学の先生が話すには「昔は、テレビと言えばSony、エアコンと言えばパナソニックと買い物が決まっていた。でも今は違う。韓国製品は安くて性能がいい」。 そういえば、ベトナム語で自己紹介をする時間に『私は韓国人です』という例文を一番最初に習いました。当時、通っていたベトナム語クラスで約半数が韓国人を占めたこともあるのでしょうが、ホーチミン在住の日本人が約1万人、韓国人はその10倍の10万人といわれていることもあり、ベトナム語を学ぶ韓国人が多いことにも驚いた記憶があります。
<テキストの例文でも一番上に韓国“Han Quo”の文字>
若いベトナム人のファッションのお手本は韓国アイドル
韓国の戦略は巧みです。円安ウォン高になった今でも、サービス面では存在感を高めています。ホーチミンっ子はよく国営放送で韓国ドラマを見ています。ベトナムのドラマも放映されているのですが、韓国ドラマの方が良くできていて面白いのだそうです。ドラマや映画に出てくる韓国アイドルの髪型はホーチミンの若い男性にも人気です。日本のEXILEのようなワイルドな感じよりも、優しい細身の男性が好まれるようで、最近若いベトナム人のファッションアイコンにもなっている男性歌手 Ông Cao Thắng (オンカオタン)も韓国アイドルの影響を受けているように感じます。こうした韓国文化の刷り込みがメディアや流行に反映されてくると、親日や日本に関心がある人たちも、実際には生活の中で触れている韓国製品や文化に特に親近感が湧くのかもしれません。こうした影響が予想される一方、日本は放映権の関係なのか、特別企画でもない限りテレビドラマが放映されることはなく、日本のアイドルや俳優を目にすることはありません。クールジャパンが盛んに言われている今、アニメやコスプレだけではなく、こうした生活の中に知らず知らずのうちに取り込まれ浸透していく韓国のやり方は参考になりそうです。
等身大の日本をベトナムに届けたい
私自身も、せっかくベトナムで生活しているのだし、こんなに日本が好きと言ってくれるベトナム人が多いのだから、アニメやコスプレだけではない等身大の日本をもっと身近に知ってもらうためにも何かしたいという思いを日々強くしたのでした。
ベトナム在住エグゼクティブコーチ
石井香織
大学卒業後、大手製薬メーカー勤務。人材開発、本社CSR業務に携わった後、2012年、夫の事業の関係でホーチミンに移住。日本とベトナムの友好の懸け橋になるべく、イベントを企画。東京代々木で毎年開催される「ベトナムフェスティバル」の逆バージョンである「Japan Festival in Vietnam」を立上げ65,000人を集客する。ホーチミン事務局長。その他、経営者層を対象としたエグゼクティブコーチやセミナー講師も務める。ホーチミンで働く女子のためのキャリアアップコーチング、聴き方学校等のセミナー開催。JACリクルートメントベトナムコンサルタント。熱気溢れるホーチミンの今を肌感覚でお伝えしていきます。