ベトナム・ハノイ工場立ち上げ奮闘記〜契約から本格稼働まで〜 第4回 ハノイにおける勤務に向けての準備

石井希典
 

在住と業務開始に向けての様々な準備

アパートを借り、工場建設もはじまり、信頼できるコンサルタントとの業務契約締結と進む中、急ピッチで進めたハノイ在住および勤務に向けての準備に関して紹介しようと思う。

 

 

ベトナム法人におけるポジションは副社長

もともと、現地代表ということで入社をしたので、本来であればベトナム法人社長という肩書でもよかったのだが、あえて副社長という肩書にすることを、社長に提案、合意を得た。現地法人社長は、あくまでも日本法人の社長と同一であり、自分は、業務執行上の代理であるということを、肩書で明確にした。

 

小さい企業であるから、トップはあくまでもC社日本法人と同一の方が、見た目にもすっきりするだろうと感じたし、たとえば、役所等から判断に迷うリクエスト(寄付の依頼等)を受けた際、「自分では判断できないので日本に確認する」という逃げ道を作り、ワンクッションを置くことで、被害(?)を最小限にとどめるための対応である。実際の通常業務は、自分の判断で遂行可能と合意を得ていたし、万一の際は、電話等で対応できるので、それほど時間がかかるわけもなく、あくまでも対外的なメッセージである。

 

他にも処理の違いは、あるが、割愛する。

 

委任状の準備

一方、法人としての正式な書類発行や承認には、つねに代表者のサインと社印が必要になり、このままでは常に日本にいる社長のサインをもらう必要がでてくる。そこで、自分が委任をされているという書類を準備し、公証をするという段取りが必要だった。

 

労働許可証の取得

更に、労働許可証がないと、人事や労務関連等で、自分のサインが有効にならないため、急ぎ、当該許可証の取得をベトナムに行う必要がある。ちなみに、オーナーである社長は、労働許可証の取得は不要で、日本から雇用者が赴任する場合に必要となる。


【労働許可証とレジデンスカード。取得当時は有効期限が3年だったが、今は2年になったとのこと】


テンポラリーレジデンスカード(在住ビザ)の取得

労働許可証が取得できると同じ年数のビザが取得できる。15日以内のベトナム訪問に関し、ビザは不要だったので、当初はビザなしで訪越、C社入社後、日本のベトナム大使館で取得できる最長期間のビザ(三か月)を取得して、ハノイに滞在し、在留ビザの取得ができるのを待った。

 

労働許可証、レジデンスビザ取得に向けての準備

労働許可証の取得、ビザの取得といっても、何をどうやってよいのか、実はよくわからない。JETROや先に進出している企業から情報をもらい、この二つを取得するためには、かなり多くの書類を日本およびベトナムで準備する必要があると理解した。

 

それら書類をもって、ベトナムにゆき、日本大使館で公証をしてもらったうえで、ベトナム政府で認証、その上で申請するという方法。これはJETRO等のガイダンスでも提示されている方法だが、とにかく、時間がかかるとのこと。

 

そこで、一度は、すべての書類をハノイに持ち込んではいたものの、それらを日本に持ち帰り、公文書は外務省で、私文書は、公証役場で公証をしてもらい、その書類を日本のベトナム大使館で認証を受けた上で、ベトナムへ再持込みをすることにした。その書類がそろえば、前回紹介したミー氏が、申請処理をやってくれるとのこと。ちなみに、この日本への持ち帰りを提案したのもミー氏で、時間的にみても2-3週間は短縮できるとの事だった。

 

外務省で公証してもらった(申請翌日に受け取り)公文書は、無犯罪証明書(霞が関の警視庁に申請。申請してから受け取りまでに10日間ほどかかる)と大学の卒業証明書(大学にゆき申請し、後日郵送)。公証役場で公証をしてもらった私文書は、職務経歴書とC社からの赴任辞令。これらの公証終了後、ベトナム大使館に提出し、認証をしてもらった。


【東京のベトナム大使館。小田急線の代々木八幡駅から近く、閑静な住宅地の中にある】


これらを再持込みの後、ベトナムの病院で健康診断を受診。日本での健康診断書は有効ではないとのことから、ハノイで受診するしかない。ハノイ市内に、対応できる病院は数か所あるとのことだったが、自分はSOS病院という西湖(Ho Tay)の東にある病院で受診した。

 

ここは、日本語の通訳がいるとのことだったが、自分が英語を話せるとわかったせいなのか、日本語での受付があったものの、あとはすべて英語だった。通訳が必要な場合には、予約をしなければいけないのかもしれない。

もっとも、特に健康上、問題がなく、過去の病歴等、説明する必要がなければ、会話することは、ほぼないとは思う。医者と多少長く話をしたのは、問診のときだけだった。

ちなみに、日本の健康診断との違いは、HIVの検査があった事が目立った程度で、むしろ日本での人間ドックの方が、項目は多いのではないかと思う。

又、レジデンスカード取得のためには、在留の証明が必要とのことで、アパートのオーナーにお願いして、公安にいってもらい在留証明をとってきてもらった。

 

とにかく書類の取得等を急いだものの、最終的に認証付きの書類が揃ったのは、3月末になってしまい、それからの申請になったことから、労働許可証、レジデンスカード(在留ビザ)が取得できたのは、4月中旬になってしまった。

 

それでも、書類をミー氏に渡してから半月強で、労働許可証、在留ビザが取れたのは、かなり早い方であったと思う。この後、在越企業の集まりなどで聞いた話では、申請してもなかなか取得できないことも多いとのことだった。


【健康診断を受けたハノイのSOS病院】


その他の準備

1)予防接種

11月、12月の訪越時、赴任者に予防接種は必要か?と聞いたところ、ほぼ全員からしておいた方がよいと言われた。また、ハノイでも接種は可能と言われたが、注射針の管理に不安があった(実際には大丈夫とのことだが)ので、すべて日本で接種をした。当初は、日本とベトナムを行ったり来たりしていたので、帰国した際に、接種を受け続けることになった。

接種した予防接種は、A型肝炎(3回)、B型肝炎(3回)、狂犬病(3回)、腸チフス、日本脳炎、破傷風(各一回)。

そもそも、日本在住であれば、不要な接種も多く、在庫がないケースもあることから、専門のクリニックに予約をいれて、接種する。一回の予約で3本とか、筋肉注射を打ったのだが、ほぼ帰宅後、猛烈な倦怠感に襲われ、その晩は寝込んだ。激しい運動とアルコールは厳禁と言われたが、言われるまでもなく不可能だった。考えてみれば、体に毒を入れるのだから、体調も悪くなるというもの。


【赴任した当初、週末の朝、ジョギングをしていた統一公園(Cong Vien Thong Nhat)。朝6時過ぎで、多くの地元の人が訪れている】


この中で、当初、接種しなくてよいかな?と思っていたのは、狂犬病。なぜならば、「ハノイには、野良犬はいないよ。みな食べてしまうから。」と聞いていたからだが、行ってみて公園を朝ジョギングしていると、放し飼いの犬が、あちこちに。大型のシェパード等が自分の横を駆け抜けてゆくのに驚いた。又、飼い犬の予防接種の接種率が20%とか30%とか(真偽不明)と聞いたことで、接種を決意した。もっとも接種したからといって、万が一噛まれた場合、発症の可能性はゼロではないし、発症したら死亡率100%。ハノイ在住中、犬がそばにくると、あとずさる生活が続いた(苦笑)。

もっとも狂犬病の心配のない国は、日本以外には、あまりないとは思う。

 

2)そして引っ越し

当初は、引っ越し業者による配送も考え、見積もりを取ったりしたのだが、前述のとおり、日本との往復が多かったことと、思いのほか引っ越し費用がかかる(見積もりでは20万円を超えていた)ので、すべてをハンドキャリーで持ち込んだ。

 

航空会社によって、違うが、日本航空だと、エコノミークラスでも23kgの荷物を二個まで運べるし、ベトナム航空だと、ひとまずスーツケースひとつであれば重量の制限は言われなかった。

 

また、ハノイ側の税関も、赴任者の持ち込みは比較的甘く見ていてくれているようで(女性の映っている雑誌やビデオの類は厳しいらしい)、着替え以外に、たくさんの食料品(冷凍食品やレトルト食品)、家庭用品(シャンプー等の液体類)をスーツケース一杯に詰め込んでいっても、没収されることはなかった。

 

後日聞いた話では、日本でかった牛肉(霜降り牛など、ハノイにあるわけがない)のブロックを冷凍して、保冷パックにいれて持ち込む赴任者もいるとの事だった。このあたり大目にみてもらっているのだとは思うが、USA入国等とは、随分違う。

 

ただし、一回、友人が、カップヌードルライスを、3000円分ほど、宅急便で送ってくれたことがあるのだが、関税を1500円程支払った。よって、ハンドキャリーは、あくまでも大目に見てくれていたのであって、ルール通りだとかなりの高額の関税を払う必要があっただろう。

 

ちなみに、自分が、家庭用品や食料品を、大量に持ち込んでいるときのスーツケースは、大概、バゲッジクレームエリアで引き取れるのが、最後に近かったので、何度も検査をしているのか、開けて検査をしていたのではないか?と想像される。

 
 

石井希典

元某自動車パーツメーカーベトナム法人副社長
石井希典

石井 希典 (いしい まれすけ)
1960年生まれ
1982年日本ビクター(株)に入社後、1990年、ソニー(株)へ転職、20年間在籍したのち、(株)メルコホールディングスに3年ほど在籍。
常に、新規事業を創出するための事業開発、事業企画および、事業運営に携わる。
2013年1月より、とある自動車部品メーカーに入社。現地代表として、単身ベトナムに渡り、工場建設から陣頭指揮し、11月に本格稼働をさせた。一定の成果をあげたことと、家庭の事情により、職を辞し、次なるチャレンジに参画すべく、充電中。

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