海外ビジネスに関連するコラム

コスモポリタン〜時代や環境を超えて生きる人は何が違うのか?〜 第1回

「時代や環境に左右されない生き方」

プロインタビュアー  早川洋平

 

何が起こるかわからない今、身につけておきたい力とは




2000年代に入り、気付けば15年。21世紀はその甘美な響きとは裏腹に、世界を震撼させる米同時多発テロで幕を開け、僕たちも東日本大震災を経験。原発問題にも直面しました。そしてイスラム国による日本人拘束事件。ここ数年を振り返るだけでも、日本と日本人を取り巻く環境は一層厳しさを増しています。

そして雇用問題。インターネットの普及でたくさんの仕事が海外へアウトソーシングされるなか、「誰にでもできる」仕事の多くは、低賃金の外国人労働者に取って代わられつつあります。業界を問わずこの流れを肌で感じている人は僕だけではないと思います。

そんな21世紀をみなさんはどう描いていますか? 社内やビジネスパートナーと話はしていますか? 大切な家族や子どもたちの将来は? 「いつ何が起きるかわからない今」、確かな未来予想図を描ける人がどれほどいるでしょうか。しかし、そんな時代や環境にあっても「大好きなこと」をし続けて豊かな人生を送っている人がいるのも事実です。

実際、僕がこれまでに国内外でインタビューした1,000人以上の人やそのネットワークのなかにもそうした人たちがいました。彼らと僕たちは何が違うのだろうか。とことん突き詰めて考えたとき、そこにはある共通点があることに気がつきました。

それは、彼らがみな


①世界と日本(自国)両方を見る力
②既成概念にとらわれずに思考・発想する力
③想定外を乗り越える力


を持っているということでした。加えて、彼らの多くは、海外に在住している(または拠点がある)という事実もありました(それゆえ、僕は彼らを総称して「世界人」の意を持つ“コスモポリタン”と呼ぶようになりました)。

「彼らの本質にもっと迫りたい。そのためには直接会いに行って話を聞くしかない!」。そんな思いから僕は、昨年から毎月現地でインタビューをする音声マガジン『コスモポリタン』の取材をスタートさせました。




ヨーロッパ、アメリカ、アジア……世界各地でコスモポリタンたちに出会って、話をよく聞いて強く感じたこと。それは、彼らがはじめから今のライフスタイルとマインドを持っていたわけではないということでした。むしろお金、時間、能力、経験、人脈……さまざまな不足や制約がありました。しかし、そんな中にあっても彼らは歩みを止めなかった。「想定外」の困難や逆境、人との出会いといった数多のターニングポイントをきっかけに「既成概念を打ち破られる経験」をして、自らも徐々に「既成概念にとらわれない」発想・思考ができるように変わったそうです。その結果として「大好きなことをしながら自由に生きる」スタイルを確立していったことがわかりました。


大切なのは誰に触れるか、触れ続けるのか


では、彼ら同様の「既成概念を打ち破られる経験」をするためには、絶対に海外へ行かなければならないのでしょうか? 答えはNOだと僕は思います。海外に行っても「既成概念に凝り固まったまま」の人はいますし、日本に住んでいても「グローバルな」人や「自由な生き方をしている」人はいます。

それなら、どうしたらいいのか。僕はこう思います。効果的なのは、もともとは「普通の人」でありながら、「既成概念を打ち破られる経験」をして、「大好きなことをしながら自由に生きる」ライフスタイルを確立したコスモポリタンのロールモデルに直接触れ続けること。それもできるだけたくさんのモデルに。

たとえすぐに「この人!」と思いつかなかったとしても、今日からアンテナを張り巡らせていれば、必ず見つかるはずです。それはテレビや雑誌で見つけた人かもしれませんし、友人の友人かもしれません。今は便利な時代。手の届く人であればもちろん会ってみる。手の届かなそうな人でも講演やイベントなどをしているかもしれません(最初から直接コンタクトをとるのももちろんアリです)。いずれにせよ「リアルで触れる」ことをおすすめしますが、どうしても難しければ彼らの著書やブログを読むことから初めても良いでしょう。

大切なのは「誰に触れるか」「触れ続けるか」だと思います。手塚治虫や赤塚不二夫、藤子不二雄……かの有名な「トキワ荘」は、なぜこれほどまでに数多くの漫画家が輩出したのでしょうか。これはまさに「環境が人をつくる」ことの体現そのものですよね。

僕自身、コスモポリタンの思考法や発想法に触れ続けることで、生き方が大きく変わってきました。なかでも衝撃的だったのは、ロンドンのハットン・ガーデンで出会った内海直仁さん。彼は、靴職人を目指し18歳で渡英。「当初は生活費を稼ぐためだった」というオリジナルジュエリーの製作が大成功。いまではデザイナーとして活躍しながらロンドンと東京にお店を持つ経営者でもあります。




「一度しかない人生だから、好きなことへ“逃げる”ことも1つの手段」「人を変えるより、自分を変える方が早い」。内海さんの言葉はどれも心を強く揺さぶるものでしたが、インタビューも終盤に差しかかったときの彼との問答を、僕は一生忘れることはできません。

早川─内海さんがいちばん大切にしている考え方は何ですか?

内海─どれだけ儲かるかではなく、自分がどれだけクリエイティブでいられるかです。

早川─そのためにはどうしたらいいのですか?

内海─自分がクリエイティブになれる環境をどれだけクリエイトできるか?に尽きると思います。

内海さんはアーティストとして生きるうえでの信条として語ってくれましたが、最後のひとことは、すべての人にあてはまる真理ではないかと僕は感じます。そして、彼はこの信条を貫くことで、結果的に「儲かり続けている」事実も見逃せません。これはまさに僕にとって「既成概念を打ち破られる」体験となりました。


時代や環境に左右されない力を身につけるためにいちばん大切なのは、やはり「誰に触れるか」「触れ続けるか」。そのための「環境をいかにクリエイトするか」。この連載がみなさんにとってその一助となるよう、これから毎回世界中のコスモポリタンを紹介していきたいと思います。

 

早川洋平

プロインタビュアー
早川洋平

新聞記者を経てプロインタビュアーに。2008年、インターネットラジオ番組「キクマガ」をスタート。よしもとばなな、加藤登紀子、茂木健一郎、高城剛ら150人以上のゲストが出演、年間200万ダウンロード超の番組となった。
近年は、ユニクロやネスカフェなどグローバルブランドのCM等にもインタビュアーとして携わる。13年からは「世界を生きる人」に現地インタビューする月刊オーディオマガジン『コスモポリタン』を創刊。世界各国での取材活動に精を出している。

代表をつとめるキクタス株式会社では、企業・機関・個人のメディアを創出するプロデューサーとしても活動。中核となるポッドキャスト配信サービスは、公共機関、教育機関、企業、マスコミ、作家などに広く活用されている。

キクタスから配信されるインターネット番組のダウンロードは毎月約200万回超。全世界での累計視聴回数は7,000万回を超えている。「横浜美術館『ラジオ美術館』」「鳥越俊太郎のニュースの職人チャンネル」「伊藤忠商事『THE 商社マン』」などプロデュース多数。
YOHEI HAYAKAWA.COM
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