税務調査で担当官はここを見る!~国際税務編~ 第3回 寄附金 VS 移転価格(赤字販売)

片瀬 陽平
 
 さて、税務調査で担当官はここを見る!~国際税務編~、第3回の今回は「寄附金課税と移転価格課税」のケーススタディをお伝えしようと考えています。少し実務よりの内容になりますので、実務と規定の考え方を合わせてご確認いただければ幸いです。

<海外子会社に対する赤字販売を行うケース>
【取引概要】
■当社は数年前に中国子会社(100%出資)を設立している
■当社は日本本社にて製造を行い、中国子会社にて販売(子会社に営業部門はなく、日本本社からの指示による販売)を行っている
■関連会社間の取引規模は、日本円でおよそ6億円程度である
■日本本社と中国子会社の契約においては、日本本社が為替リスク及び在庫リスク等の各種リスクを負担することとなっている
■グループ全体での連結損益は赤字であり、その中で日本本社は中国子会社の赤字を軽減するために製品を原価割れの価格にて販売している
■中国子会社には倒産が見込まれるような客観的事実はない
■この価格調整は、中国では単一機能の赤字企業へ積極的に移転価格の調査が入っているためにやむを得ない状況にある

【見解】
 この中で寄付金や移転価格に該当するかを判断するに当たりまず確認しなければならない項目は「グループ全体での連結損益は赤字であり、その中で日本本社は中国子会社の赤字を軽減するために製品を原価割れの価格にて販売している」となります。

 そもそも赤字取引は異常な取引であり、通常行われるべきものではありません。独立企業であれば利益の獲得を当然の目的としてビジネスを行っているために赤字取引があった場合には、税務調査等において必ず指摘を受ける項目であるとの認識が必要となります。その上で赤字取引を正常な取引と主張できる可能性を模索していくこととします。

■そもそも日本本社は、なぜ赤字取引を行ったのでしょうか?
 ここで考えるべくは「日本本社は中国子会社の赤字を軽減するため」と「中国では単一機能の赤字企業へ積極的に移転価格の調査が入っているためにやむを得ない状況にある」この2つの項目です。税務調査でこのように主張を行ってしまうと子会社の損失補てんと指摘され、経済的な利益の無償の供与として寄附金課税される可能性が高まります(倒産が見込まれる客観的事実はないために法基通9-4-1の適用もありません)。税務調査(関連会社間取引項目)ではやはり寄附金と指摘されることが多くなるものと思われますので、前回に引き続き寄附金の意義を確認してみます。

【寄附金の意義】
 寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝費、見本品費、交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く)をした場合におけるその金銭の額若しくは金銭以外の資産の贈与時の価額又は経済的利益の供与時の価額による

 今回の赤字負担は広告宣伝費、見本品費、交際費、接待費、福利厚生費には明らかに該当しませんので、税務調査ではほぼ間違いなく寄附金と指摘されてしまうことになるでしょう。

 ただし、独立企業において赤字取引を通常の取引と主張し、税務調査において認められているケースも存在しますので、次はそのポイントを確認してみます。

 ポイントとなるのは「日本本社と中国子会社の契約においては、日本本社が為替リスク及び在庫リスク等の各種リスクを負担することとなっている」この項目です。今回のケースでは日本本社が各種リスクを負担し、日本本社が販売の指示を行っているために、赤字の責任を負うのは日本本社であると考えられます。日本本社は将来の大きなリターン(シェアや大口顧客)を得るために赤字販売を行っており、赤字販売を行っているからと言って一概に寄附金であると指摘することは、たとえ税務当局でも行うことはできません。つまり、将来の大きなリターンを得るために赤字取引を行っているという主張を行えば寄附金とされる可能性は、「子会社負担のため」や「広告宣伝費等である」等の主張を行うよりも格段に低くなります。

 対価が何かを明確にすることが寄附金とされない大きなポイントになりますので、是非確認してみてください。

 最後に中国では単一機能の赤字企業へ積極的に移転価格の調査が入っているために赤字取引によって損失の一部を日本で負担していたとしても、(赤字又は定期利益水準などを理由とし)中国側では移転価格の指摘を受ける可能性が十分にありますので、日本だけではなく中国を含めた諸外国の現況をしっかりと認識し、その上で移転価格のポリシーを構築することが重要となります。
 
 

片瀬 陽平

株式会社マイツシニアコンサルタント
片瀬 陽平

税理士業界が縮小の一途をたどる中、国際ビジネスのみが税理士業界
に残された最後の領域であると考え、2013年3月にメキシコに渡る。
渡墨後は、日系企業のメキシコ進出サポートを主に行っていた。
2015年1月に株式会社マイツに入社し、現在東京オフィスにて活動している。
専門は国際税務分野であり、特に中堅中小企業の海外進出サポートを中心に行っている。

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