バラガンだらけなイスラエル 第4回 SNS大国イスラエル

水谷徹哉
 


先々月の話ですが、「FACEBOOKがWhatsApp Messengerを190億ドルで買収」というニュースが流れました。WhatsAppとはスマートフォン向けのインスタントメッセンジャーアプリです。ユーザーは主に北米や西欧に集中しており、日本では類似のアプリケーションとしてはLINEが圧倒的シェアを誇っているため、読者の方々にはあまり馴染みがないソーシャル・アプリなのかもしれません。そういう背景もありこのニュース自体はあまり日本では大きくは報じられなかったものと思われます。

 

スマホの浸透率は世界トップ


WhatsAppはイスラエルの企業ではありませんし、この話題そのものはイスラエルとの直接の関係は無いのですが、当地ではかなり大きな取り扱いを受けていたのです。これについて筆者は何故なのだろうと考えてみました。WhatsAppの当地における浸透度は相当なものです。ある調査ではスマホ保持者のなんと92%がWhatsAppを使用しているという結果があります(2013年Globes社調査。)。では当地における、スマホ自体の浸透度は?という疑問が普通に沸き上がってきますが、これについても相当なもの。Googleが2013年に主要各国を対象に行った調査では、イスラエルは英国に次いで2位という結果がでています(英国;62%、イスラエル57%、フランス;42%)。

 

実際、私の周りでもスマホを持っていない人は老若男女を問わずほぼ皆無ですし、WhatsAppを知らないイスラエル人などは私自身聞いたこともありません。それこそコンピューター・リテラシーのないようなご老人達が、普通にスマホを携帯し、WhasAppで積極的にコミュニケーションに励んでいる姿を当たり前のように目にします。卑近な例で言えば、まさに私の家内(イスラエル人です。。。)の母親などがその好例で、コンピューターの電源の入れ方すらまともに知らないにも関わらず、スマホを保持し、WhatsAppの複数のグループに参加し、ヒマさえあれば4.5インチの画面に顔が釘付けという日々です。一方の日本においてはLINEがメールに代わるコミュニケーション手段として確率された地位を築いている模様ですが、当地ではWhatsAppがより圧倒的な存在力を持って、人々の私生活に浸透しているものと言えます。



イスラエル自慢のソーシャルアプリ「WAZE」


そのような背景もあり、このWhatsAppがFACEBOOKに買収されたというニュースは当地イスラエル人の大きな関心を呼びました。ただ、それだけではありませんでした。この報道と併せて取り扱われたのが、イスラエルが誇るソーシャル・カーナビ・アプリケーションであるWAZEのGoogleによる買収でした。

 

この買収劇はそもそも昨年の6月の出来事なので、特段目新しいニュースでは決してなく、過去のニュースが類似例として取り上げられたに過ぎません。WAZEの買収については実はGoogleに先駆け、FACEBOOKも検討していたという噂がありました。これが当地では事実として受け入れられているため(FACEBOOKは公式には認めてはいない)、去年の出来事とは言え、類似の出来事として再度掘り起こされたということなのでしょう。

 

このWAZEもWhatsApp同様、日本ではユーザーがほとんどいないようなので、日本の方々にはピンと来ないのかもしれません。ただ、イスラエル人にとってこのWAZEは代表的な「Made In Israel」ブランドの一つであり、それこそ国内ドライバーの殆どがただ単に使用するのみならず、誇りに感じながら日々愛用するスマホ・アプリでもあります。




実際、このアプリがGoogleのような世界企業によって買収されるという報道が国中を駆け回った折、国中がオリンピックで金メダルでも獲得したかのような歓喜でいっぱいとなりました。一企業の買収劇、それこそ一部の企業関係者が粗利を得たに過ぎないニュースの取り扱いとしては、筆者個人としてはちょっと行き過ぎかも、とも感じないでもありませんでしたが。。。

 

公道上でのSNSコミュニケーション


このWAZEが面白い点は、その主要機能であるカーナビとしての側面では決してなく、もう一つの機能である運転手同士のソーシャル・ネットワーキングを可能にした点にあると言えるでしょう。利用者、すなわちこれから車を運転しようとするドライバーが、本アプリを起動と同時にはログインすることにより、地図上に自分の好きなアバターを出現させ、同じく公道を走行中で且つログインしている使用者とのコミュニケーションを図ることができるのです。

 

筆者自身も車を運転する際には頻繁に使用するこのアプリですが、ナビゲーションそのものの機能よりもむしろ、他のドライバーが提供してくれる情報を重宝したりします。例えばこれから車を運転しようという際、スマホのディスプレイに表示された3Dの地図を、目的地付近までスライドさせると、これらアバターが提供してくれる渋滞状況やそれこそ事故状況などが写真付で表示されていたりします。ただ、同じドライバーとして、これら情報を共有してくれているのが運転手本人ではなく、助手席に座る人たちであることを願うのみですが。。。(笑)




さて、WAZE買収の話が出たついでに、もう一つのイスラエル企業買収の話題で本稿を締めくくりたいと思います。同じく先月、これはあまり大きくは取り上げられなかったのですが、何と日本の大企業によるイスラエル企業の買収ニュースがありました。その日本の企業とは我らが「楽天」。そして同社が買収したイスラエル企業は「Viber Media」という、これもチャットやインスタント・メッセンジャーを主体とするアプリ製作会社です。

 

いよいよ日本企業も本格的に、イスラエルに埋もれる「お宝」の発掘に目覚め始めたようですね。今後も一層期待したいところです。

 

 
 

水谷徹哉

イスラエル在住
水谷徹哉

名古屋大学卒業(修士)。在イスラエル大使館専門調査員(05’)、JICAパレスチナ事務所企画調査員(12’)。計10年間日本国政府ODAによる対パレスチナ支援に従事する。主にガバナンス分野における国際機関経由、またJICA技術協力案件の実施管理を担う。2013年よりイスラエル国Galilee International Management Instituteに勤務。主に日本向けのコンテンツの開発等を担当。

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