海外ビジネスに関連するコラム

世界は身近にあるもんだ ~国歌研究家 日本で海外の魅力を探す~ 第3回

国歌はこんなに面白い! ~雑談で使えるネタに国歌はいかが?~

国歌研究家 国歌の輪プロジェクト代表 浅見良太

 

国歌はユニークで面白い


”国歌”というとどんなイメージがありますか?
よくこの話をすると

     ”政治色が強い” ”とっつきにくい” ”暗い”

以前、とある役所に国歌の輪プロジェクト主催イベントのチラシを置かせて欲しいとお願いの電話をしたことがありました。
最初は国際交流のイベントということで好意的に受け取ってもらえていたのですが・・・

担当者「ちなみにどんなことをするんですか?」
筆者 「国歌をみんなで歌います」
担当者「・・・思想に偏りがあるかもしれないので一度役所にお越しいただいてご説明ください」

私は日本での国歌を”不遇の歌”だと思っています。
残念ながら国歌は取っつき難い触れてはいけない物のようなイメージがありませんか?
でも世界には(日本を含め)多種多様で知れば知るほど面白い国歌がたくさんあるんです!
今回はそんなバラエティに富んだ素敵な国歌たちの極々一部をご紹介します。


イタリア「マメーリの賛歌」 ~アップテンポ!一緒に歌ったら盛り上がる国歌~


筆者が国歌にはまるきっかけになった歌です。
君が代=国歌だけだった世界が一気に広がりました。
とてもアップテンポでノリがいい。
前奏がある国歌!?
しかも途中に間奏が入るなんて!
国歌というものの概念を破壊してくれる曲です。

イタリア「マメーリの賛歌」



スペイン「国王行進曲」 ~鼻歌で歌う国歌~


いつも国歌の多様性について話す時に必ず例に挙げるのがスペイン国歌です。
なんといっても特徴的なのが

歌詞が無い!!

ということ。
国歌と言えば国の象徴として国民で合唱するもの。
なので歌詞があるのは当然だと考えがちです。
出会ったスペイン人女性に歌ってもらった時、最初は戸惑いました。
メロディだけじゃなくて歌詞をつけて歌ってほしいと言うと
「これが私たちの国歌なのよ、歌詞が無いの」
その場には何カ国かの人がいましたが全員驚いていました。もちろん筆者も。
歌詞が無いのには理由があります。それはまた別の機会に!

スペイン国歌「国王行進曲」 


ネパール「何百もの花々」 ~国の雰囲気を感じられるメロディ~


まずは聞いて下さい。
ネパール国歌「何百もの花々」 

どうですか?どこか民族音楽のような雰囲気がありませんか?
素朴でどこか懐かしい。
国歌は国威高揚の意味合いを持つものが多いためこういった曲は珍しいんです。
また歌詞も美しくて楽しめるのが特徴。下記は冒頭部分。
「何百もの花々からなる一つの花輪 それこそ我らネパールの民」
一人一人が花びらとなり国という美しい花を咲かせるというとても詩的な内容です。



オランダ「ヴィルヘルムス・ファン・ナッソウエ」 ~歌詞に隠れた作詞家のゴマすり~


国歌にはもちろん作り手がいて彼らの思いが強く感じることができる歌詞やメロディがあります。それは作り手が独立運動家だったり政治家だったり軍人だったり・・・
「ヴィルヘルムス・ファン・ナッソウエ」もそのうちの一つ。
でも他の国歌と明らかに違うのはその思いが隠されているということです。
オランダ国歌の歌詞となる詩は全部で15節。
書かれた当時のスペルで冒頭部分を書き出します。

Wilhelmus van Nassouwe・・・(1節)
In Godes vrees te leven・・・(2節)
Lydt u myn Ondersaten・・・(3節)
Lyf en goet al te samen・・・(4節)
Edel en Hooch gheboren・・・(5節)
Mijn schild ende betrouwen・・・(6節)
Van al die my beswaren・・・(7節)
Als David moeste vluchten・・・(8節)
Na tsuer sal ick ontfanghen・・・(9節)
Niet doet my meer erbarmen・・・(10節)
Als een Prins op gheseten・・・(11節)
Soo het den wille des Heeren・・・(12節)
Seer Prinslick was ghedreven・・・(13節)
Oorlof, mijn arme schapen・・・(14節)
Voor Godt wil ick belijden・・・(15節)

各節の冒頭部分のアルファベットを並べると以下の文章が浮かび上がります。
「WILLEM VAN NASSOV」
直訳すると”ナッソウ(家)のウィレム”。
16世紀にスペインとの独立戦争を率いたオラニエ公ウィレム1世のことで、
現オランダ王室の初代当主です。作者はウィレム1世の側近だった人物。
こんなゴマすりを家臣からされた君主はさぞかし喜んだんでしょうね!

オランダ国歌「ヴィルヘルムス・ファン・ナッソウエ」


いかがでしたか?
国歌に対するイメージが少し変わりましたか?
居酒屋や職場で雑談のネタとして使えそうじゃないですか?

今後も様々な国歌を紹介できればと考えています。
今回も最後までお読み頂きありがとうございました。


【国歌の輪プロジェクト】
『国歌をコミュニケーションツールに』の普及活動をしています。
様々な国の国歌紹介、各地で行われる国際交流イベントルポなどを不定期に更新。

【ワールドフードラリー】
”国歌の輪プロジェクト”主催イベント。
日本では馴染みの無い国を知る機会はなかなかありません。
しかし東京都内だけでも80の国と地域があるという国際化が進んだ日本。
このイベントは都内にある海外料理店を周り、
その国の料理を堪能し
音楽や踊りなどの文化を体感し
最後に国歌を歌って様々な国を知ろうというものです。
毎月1回開催し、9月には高田馬場にあるミャンマー料理店で行いました。
10月31日(土)には赤坂にある日本で唯一のトーゴ料理店でトーゴ大使館協賛で開催。
11月28日(土)には新中野にあるチリ料理屋でチリ大使館の後援で行いました。
興味のある方は是非お問い合わせください。



 

浅見良太

国歌研究家国歌の輪プロジェクト代表
浅見良太

埼玉県出身。テレビ番組制作会社を経て現職。
大学2年の時、ヒッチハイクで埼玉~屋久島間を19台乗り継ぎ往復し、自分の知らない世界に触れ、様々な人に出会える旅の面白さを知る。
2007年、初めての海外旅行でインド・ネパールを1ヶ月周ったことをキッカケに就職するまでにバックパッカーで計30カ国を訪問。
旅中、出会った人に出身国の国歌を歌ってもらい、それをボイスレコーダーで録音する“国歌録音活動”を始め、数多くの国歌を収録。国歌の奥深さ、面白さにはまる。
2010年、名古屋の東海テレビプロダクションに入社。情報番組、バラエティ番組、スポーツ番組などでディレクターを務める。同社在社中も仕事の合間をぬって国歌録音、執筆活動を継続。

2015年に退社後、”国歌研究家”として「国歌を通じた国際交流」の普及を目的に、国歌に関する執筆活動や講演、イベント運営などを行っている。
同年4月、国歌を通じた国際交流の普及を目的とした団体「国歌の輪プロジェクト」を立ち上げ、代表を務める。