海外ビジネスに関連するコラム

世界は身近にあるもんだ ~国歌研究家 日本で海外の魅力を探す~ 第18回

将来はヨーロッパ進出の拠点に ジェルジ・テネケチェジウ駐日アルバニア共和国大使インタビュー

国歌研究家 国歌の輪プロジェクト代表 浅見良太

 
「アルバニア」と言われ想像ができる人は多くないでしょう。しかし、双頭の鷲が描かれた国旗を持つ国と言えば思い浮かぶ人もいるかもしれません。同国はギリシャの上、イタリアとは海を挟んで東側に位置するバルカン半島にある国です。日本には馴染みのない国かもしれませんが、今回ジェルジ・テネケチェジウ駐日アルバニア共和国大使にお話を聞き潜在能力の高い国だと感じました。政府の取り組み、人材、そしてなりよりも立地が良い事は大きな強みでしょう。また、アルバニアの魅力的な品々が日本に入ってきていない点も今後新たなビジネスを始めたい方にとって面白い国です。
ジェルジ大使にアルバニア経済の魅力を聞きました。

九州大学への留学経験もあるジェルジ大使


“歴史” “人” “親日”  多くの魅力を持つ国 アルバニア

―アルバニアとはどのような国ですか?―

99%の日本人はアルバニアについてよく知らないと思いますが、実はとても歴史の長い国なのです。古くは前2世紀から500年以上に渡るローマ帝国による支配化の時代や約400年間にわたるオスマン帝国支配等がありました。そして第1次バルカン戦争後の1912年にオスマン帝国からの独立を宣言します。ヨーロッパの中でも最も歴史の長い国の一つなんですね。

また、EU議会にアルバニアの加盟についてオープンに話し合ってもらえるよう働きかけ始めました。アルバニアは今後さらに国際的な存在感を高めていくでしょう。

―アルバニアの方々が大事にしている教えがあると聞きました―

「besa(約束を守る)」という精神的な柱があります。besaは絶対的な約束事であり、besaを守るためなら人を殺すことも厭わないと考える人もいるという少し過激な側面もあるほどです。日本語で説明するのが難しいのですが・・・例えば旅行者がアルバニアに行くとbesaに守られていると実感出来ると思います。アルバニア人の家に行けば、安心感や歓迎感、ホスピタリティーを感じることができる。これもbesaです。アルバニアを治安面でも比較的安全・安心できる国たらしめる要因の一つと言えます。

―大使から見て日本はどのような国に見えますか?―

実は、九州大学で経済学を勉強するために来日した経験があります。日本人はとても気さくで大学でも多くの友達ができてとても素晴らしい日々でした。

アルバニアでは日本はよく知られている国で、黒澤明や渡辺謙、村上春樹、香川真司、トヨタ、ソニーなど皆よく知っていますね。日本とアルバニアとの関係は政治的にも外交的にも良い方向に向かっています。実際、日本はJICA等を通じてインフラ、エネルギー、鉱業、教育、健康増進等様々な分野でアルバニア経済の発展の一旦を担った国であり、アルバニアとしてとても感謝しています。

アルバニア人の誇りマザーテレサの肖像画が飾られている大使執務室


アルバニア経済が魅力的なワケ

―アルバニアへの投資について教えてください―

残念なことに日本からアルバニアへの直接投資はまだ少ないです。その原因は日本企業や投資家のアルバニアに対する心理面にあるのではないかと考えています。例えば、日本企業はビジネスをする上で治安面の状況をとてもとても気にしますね。ですが2017年1月にアルバニアの首都ティラナに日本大使館が開館しました。そのことは日本企業にとってアルバニアでビジネスをする上で大きな意味をもつと言えるのではないでしょうか。

―投資対象国としての魅力を教えてください―

イタリアやドイツへ飛行機で約1時間・クロアチアやギリシャには車ですぐ行けるという地理的な強みがあります。アルバニアは周辺のイタリアやドイツのような大国と比べると小さな国であり、経済の規模もそれほど大きいとは言えません。日本企業はアルバニアより大きい国とのより大きな経済の関係を持ちたいという思惑がやはり強いように感じます。ですが、先ほど述べた利点からアルバニアは日本企業がヨーロッパに進出していく良い「足掛かり」となりうる国です。特に旧東側共産体制の影響が今なお色濃く残るバルカン半島に位置していながら周辺国に比べてより「西欧的」な国であるため、日本企業にとっては尚更ヨーロッパ進出の「足掛かり」となりうる国であると確信しています。

他にもアルバニア人の多くがイタリア語や英語等の外国語に堪能な点、EUと友好的な関係にあるという点、会社設立等の初期手続が簡素であり数日あれば会社を設立できるという点、治安が安定しているなどビジネスを行っていく上で様々な強みがあり、ビジネスの環境がよく整っていると言えます。

また電気事情も良い方向に向かっています。95%のエネルギーは人工池を使った3つの水力発電所でまかなっています。乾季の時期が不安定だった電気供給が日本やドイツ、世界銀行のおかげで安定した稼働が可能になりました。

―貿易について教えてください―

取扱量はイタリアとギリシャの比率が高いです。両国は地理的にも歴史的にも深い繋がりがありますから。特にイタリアには大きなアルバニア人コミュニティがあり14世紀くらいから繋がりがあります。ギリシャにも100万人規模のアルバニア人がいるんです。この比較的限られた貿易のおかげで2008年の世界的な金融危機の時もアルバニアは景気後退せずに済みました。

輸出品として最も大切なのはクロムという金属です。他には服飾産業、ワイン、ハーブティなど魅力的な物がたくさんあります。しかし、残念な事に日本にはアルバニアの物が輸入されていません。その1番の障壁は 関税が高いことだと考えています。両国間の協定などを結ぶことでこの課題を解決していきたい。

ハーブティだけでなくスパイスも生産されているもののにほんでの輸入は始まっていない(2020年6月時点)


―アルバニアの経済は堅調な成長を続けていますが、その理由は?―

まずは政治が安定していることが最も大きな理由でしょう。そのおかげで人々の生活も安定しています。若年層人口、 生産年齢人口が多いことも理由ですね。

また観光産業がかなり成長・発展を遂げていて、 食事、歴史、綺麗なリビエラの風景、文化、等豊富な観光資源・観光地を求めて特に北欧や西欧からの観光客数が急増しています。先日、日本人ジャーナリストをアルバニアに招いてアルバニアの観光の魅力を発信してもらうツアーも行いました。私としてはもっと多くの日本の方々に来て欲しいと思っています。

―今後の目標を教えてください―

日本人にアルバニアをもっとプロモートしたい。それによって観光客や直接投資、貿易を増やしたいと考えています。

アルバニアのサッカー代表チームユニフォームと。大変気さくなお人柄

 

浅見良太

国歌研究家国歌の輪プロジェクト代表
浅見良太

埼玉県出身。テレビ番組制作会社を経て現職。
大学2年の時、ヒッチハイクで埼玉~屋久島間を19台乗り継ぎ往復し、自分の知らない世界に触れ、様々な人に出会える旅の面白さを知る。
2007年、初めての海外旅行でインド・ネパールを1ヶ月周ったことをキッカケに就職するまでにバックパッカーで計30カ国を訪問。
旅中、出会った人に出身国の国歌を歌ってもらい、それをボイスレコーダーで録音する“国歌録音活動”を始め、数多くの国歌を収録。国歌の奥深さ、面白さにはまる。
2010年、名古屋の東海テレビプロダクションに入社。情報番組、バラエティ番組、スポーツ番組などでディレクターを務める。同社在社中も仕事の合間をぬって国歌録音、執筆活動を継続。

2015年に退社後、”国歌研究家”として「国歌を通じた国際交流」の普及を目的に、国歌に関する執筆活動や講演、イベント運営などを行っている。
同年4月、国歌を通じた国際交流の普及を目的とした団体「国歌の輪プロジェクト」を立ち上げ、代表を務める。