海外ビジネスに関連するコラム

世界は身近にあるもんだ ~国歌研究家 日本で海外の魅力を探す~ 第9回

大使館と仕事をすることの難しさと面白さ

国歌研究家 国歌の輪プロジェクト代表 浅見良太

 

大使館と一緒にイベントなどの仕事をすることになっておよそ2年になります。

大使館という特殊な機関と仕事をすると理解できないことがたくさんあり、「大使館と一緒に何かをするというのは難しいな」と頭を抱え、ハラハラすることもある一方で、大使館と仕事をすることで得られるものが多々あります。

今回は、大使館と何かをしたいと思っている方々へ私が経験から学んだ“大使館との付き合い方”を書きたいと思います。

大使館とイベントをすることの難しさ

いくつか挙げると
①返信がない
②突然の変更がある
③担当者が安定しない

~①返信がない~

まず話を聞いてくれるかが重要です。
アポイントを取るために大使館HPに書かれたアドレスにメールを送るわけですが返信がないのは当たり前。運よく「検討します」と返信があってもそのまま連絡がないことがほとんどです。

そのため、まず送る側は『返信がないのが普通』という気持ちで挑まなければいけません。そうでなければ気持ちが折れます。とはいっても返信がなければ話が進みません。

そこで返信率を上げる方法として、実際に職員に会いに行くという手段があります。とはいっても大使館へアポなしで行っても相手にしてもらえません。

ではどうすれば・・・
『大使館が参加するイベントに行く』という方法があります。

都内では大使館関係のイベントがたくさん行われています。そういったイベントで大使館職員と交流し顔見知りになる。そして大事なことは名刺交換をして、その担当者の個人アドレスをゲットすることです。

HPで公開されているアドレスは大使館共通の物で、まず日本人スタッフがチェックします。本文が日本語なら英語などに翻訳し、担当の職員に振り分けるというシステムです。場合によっては職員に辿り着かずに終わる事もあります。

それを避けるためにダイレクトに届けられる担当者個人のアドレスを知ることはとても大事なんです。当然のことですが、急にメールが送られてくるよりも一度話をした後の方が資料を見てくれますよ。

~②突然の変更がある~

連絡が取れ打合せをし、ついにイベントをすることになりました。
この段階で決まっていたことが急に変更になるということがあるということも考えておかなければいけない大使館リスクです。

例えばこんなことがありました。私が主催するイベントの前半、突然職員が寄ってきて「通訳はあと少しで大使館を出なくちゃいけない」と耳打ちしてきました。イベントの宣伝で“英語が話せなくても通訳がつきます”と書いていた手前、焦りました。打合せで通訳が最初から最後までいてくれるという話だったのに。この時は通訳を務めてくれるという気さくなゲストがいたため事なきをえました。

その他にもあるはずの物がなかったり、いるはずの人がいなかったり。ゲストに予告していたことを提供できないリスクを常に持っているということになります。イベント主催者としてこれは大きな問題でしょう。

私は打ち合わせやメールでのやり取りで必ずイベント内容や用意してもらいたい物などをリスト化して確認をしています。それでもうまくいかないことがあり、試行錯誤の日々です。

主催者ができる大事なことはゲストに“内容が予告なしに変更されることがある”と伝えておくこと。これは言い訳のためではなく、その心積もりで来てもらうことが大事だからです。

内容は変更されたことによってイベントに不満を持ち、最悪、協力してくれた大使館の国自体をゲストが嫌いになる可能性もあります。それは大使館とイベントをする者が一番やってはいけないことです。事前に可能性を伝えるだけで参加者の反応は全く違うはず!

~③担当者が安定しない~

外交官は外務省に所属する公務員です。彼らは3~4年周期で別の国の大使館または本庁へ異動します。せっかく大使館とパイプと作ったのに3年後にはゼロに戻る可能性があるわけです。

そんな事態を避けるため現地採用の職員とパイプを作ることが大切です。現地採用職員というのは日本に住む職員のこと。彼らは一定周期で異動する外交官と違い日本に定住しており、いなくなる心配がありません。そして異動してきた外交官が頼るのは日本に詳しい現地採用職員たちなのです。そんな彼らとパイプを作っておくと長く大使館とお付き合いをすることが出来ます。

大使館と一緒に仕事をする面白さ

様々な難点がある大使館ですが、それでも彼らと何かをするというは魅力的であることも紹介させてください。

①隠れたビジネスチャンスをつかむ可能性
>②ゲストが求めている刺激がある
③特権がある

~①隠れたビジネスチャンスをつかむ可能性~

もしあなたが輸入ビジネスを狙っているなら、この話はもってこいでしょう。
大使館は自国の利益になるよう活動しているわけですが、特産品の紹介をし日本とのビジネスを活性化させるというミッションを持っています。そうなると大使館と交流していくうちに、日本ではまだまだ知られていない品々を知ることが出来ちゃうんです。

例えばエチオピア大使館と交流する中でテフというエチオピアではメジャーな穀物があります。まだ日本では認知度が低いですが、ヨーロッパではスーパーフードとして消費者が急増している事を知ります。

それだったら「日本にもテフビームを作ることが出来るんじゃないか」と考えるわけです。もしかしたら大使館でビジネスチャンスをつかむことがあるかもしれません。

~②ゲストが求めている刺激がある~

“大使館での開催”
刺激を求めるゲストを惹きつける魅力的で強力なワードです。
普段入ることが出来ない施設に入ることが出来るというステータスは強いセールスポイントになります。また、大使館だからこそ用意できるその国の料理や人材、物品などを提供できる事も大きなポイントとなります。

~③特権がある~

大使館は政府機関です。そのため個人や企業には無い特権を持っています。

例えば、フェスなどのイベントをする際、大使館が主催になると場所代が無料になる所があります。

そういった恩恵にあずかることが出来るかもしれません。

大事なのはその国をリスペクトすること

いかがでしたか?
大使館というと、とっつきにくい印象がありますが、中には積極的に話を聞いてくれる所もあります。

私が彼らと付き合う中で大切にしていることがあります。それは、一緒にその国の事を考えて大使館と付き合うということです。

その想いが職員に伝わることで「また一緒に何かしたいな」となるわけです。

是非ウィンウィンな大使館との共同活動をして頂けたらと思います。

 

浅見良太

国歌研究家国歌の輪プロジェクト代表
浅見良太

埼玉県出身。テレビ番組制作会社を経て現職。
大学2年の時、ヒッチハイクで埼玉~屋久島間を19台乗り継ぎ往復し、自分の知らない世界に触れ、様々な人に出会える旅の面白さを知る。
2007年、初めての海外旅行でインド・ネパールを1ヶ月周ったことをキッカケに就職するまでにバックパッカーで計30カ国を訪問。
旅中、出会った人に出身国の国歌を歌ってもらい、それをボイスレコーダーで録音する“国歌録音活動”を始め、数多くの国歌を収録。国歌の奥深さ、面白さにはまる。
2010年、名古屋の東海テレビプロダクションに入社。情報番組、バラエティ番組、スポーツ番組などでディレクターを務める。同社在社中も仕事の合間をぬって国歌録音、執筆活動を継続。

2015年に退社後、”国歌研究家”として「国歌を通じた国際交流」の普及を目的に、国歌に関する執筆活動や講演、イベント運営などを行っている。
同年4月、国歌を通じた国際交流の普及を目的とした団体「国歌の輪プロジェクト」を立ち上げ、代表を務める。