2016年9月20日
世界は身近にあるもんだ ~国歌研究家 日本で海外の魅力を探す~ 第8回
アフリカの隠れた優良投資先!? トーゴ共和国の魅力に迫る ~ セダミヌ トーゴ共和国臨時代理大使 インタビュー ~
国歌研究家 国歌の輪プロジェクト代表 浅見良太
先月、TICAD(アフリカ開発会議)が初めてアフリカ大陸で開催されました。
国際的に存在感を年々増しているアフリカ。
アフリカ大陸の人口は現在11 億人ですが、2050 年には、およそ25 億人になると言われています。現在はもちろん、未来においても大きな市場になる事は間違いないでしょう。
実際、南アフリカやエチオピア、ケニアなどの成長は著しく日本企業も進出しています。
その一方で日本にとって未開の国々があることも事実。多くの魅力を持っている国にもかかわらずです。
今回はそんな隠れた潜在能力を持つ国の一つ、トーゴ共和国をご紹介します。
今年8月に着任されたばかりのセダミヌ トーゴ共和国臨時代理大使にトーゴ共和国の魅力を聞きました。
とても気さくで笑顔が素敵なセダミヌ大使
取材を行った駐日トーゴ共和国大使館
初来日で駐日トーゴ共和国臨時代理大使 着任
―8月3日に来日して3週間ですが(取材は8 月25 日)、日本の生活はいかがですか?―
すごくいい印象があります。
例えば気候ですね。
日本に着いたら夏で暑かったのですが、非常に寒いエチオピアから参りましたので良い季節に来たなと思っています。
―日本への着任が決まった際のお気持ちは?―
日本に来たのは今回が初めてなので、日本とのかかわりは個人的には無いのですが、トーゴは日本との協力関係を大事にしていますので嬉しかったですし、その決断をした当局の人への感謝の気持ちが溢れました。
―文化が全く違う日本ですが、ご家族はいかがですか?―
確かに大きな変化はありますが日本の環境に適応しています。
日本人は働き者で非常に正直でまじめと伺っていますし。
日本がおもてなしの国でオープンだから、これだけ居心地が良いんだと思いますよ。
トーゴも同じくオープンな国なので、私の家族は「同じオープンな国に行くんだ」と言っていました。
今回、オープンな2つの国が出会ったということですね。
―趣味が空手とお聞きしました―
松濤館流なんですが、若い頃によくやっていました。今も大好きで情熱を持っています。
若い頃を思い出しますね!
発展の潜在能力の持つ国 トーゴ共和国
―大使が思うトーゴの魅力は?―
先程申し上げたように、トーゴはオープンな国です。
ECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)のメンバーであり、
西アフリカはもちろん、アフリカ全体に対して開かれた国なんですね。
また政治的にも安定していて非常に可視性が高いです。
トーゴは投資の潜在力を持った国と言えます。
―『港湾立国』を目標に掲げるトーゴですが、近隣国にある港との違いは?―
ロメ港は14メートルの水深があるため、その分大型の船舶が出入港できます。
最新型の船舶を受け入れる事が出来るのは、西アフリカの海岸では唯一ロメ港だけなんですよ。
これにより港を持つ近隣国もハブ港としてトーゴを通じて貿易を行っています。
また近年、海路だけでなく国際的基準を満たした新たな国際空港が竣工しました。
利用客が以前の空港に比べ4倍になり、アフリカ・ヨーロッパとの直通便があります。
これらの開発は国内を発展させる事はもちろんですが、
トーゴだけでなく西アフリカと国際社会との繋がりとして重要な役割を担っています。
インフラ面の整備に力を入れています。
―アフリカの玄関口とも言えますね。それは投資先として魅力的です。ソフト面でのトーゴ政府の取り組みはいかがですか?―
政府は貿易を促進するために色々な政策をしています。
例えば、ちょうど昨日(8月24日)、投資及び自由貿易地域の促進のための国の機関が出来ました。
自由貿易地域において投資の承認を得るための申請数が非常に多くなってきたため、手続きがより効率的かつスムーズに行えるようにするために設立されました。
―投資先としてはどんな分野が挙げられますか?―
トーゴは農業国でして、投資分野の優先順位としてはまず農作物の加工品分野が挙げられます。
鉱業面ではリン鉱石や石灰が採れ、色々な可能性を秘めています。
また環境保全、再生可能エネルギーの分野への投資促進に力を入れています。
―投資先の優先順位がもっとも高い農作物の加工分野ですが、具体的にはどういったことへの投資に期待されていますか?―
トマトやヤム芋、ピーナッツなどが採れるんですが、
腐ってしまったり、天候によって収穫量が変わってしまいます。
ですのでこういった問題に左右されない、長期に渡って保存できる形にしたいんです。
そのための加工技術が大事になります。そこで国外のパートナー、投資家が必要なんです。
―現状、国内で加工は行われているんですか?―
トーゴでは多くの綿花を栽培していまして一部はトーゴで加工し輸出しています。
他にもカカオなどの一部をトーゴで加工しています。
より多くの作物がトーゴで加工されるようになることを目指しています。
―再生可能エネルギー分野も投資先として挙げていらっしゃいましたね―
そうですね。これは農業と関係があります。
現在気候変動が国際的な問題になっていますがトーゴも同じです。
気候変動は農作物の収穫量に大きな影響を及ぼします。気候に左右されず安定した生産が出来るような技術の提供や投資を必要としています。
それに加え、気候変動問題を解決する再生可能エネルギー分野に力を入れているんです。
まだトーゴに進出している日本企業は少ないので、トーゴ政府の名のもとに投資を呼び掛けています。日本の方々に是非投資してもらいたいと考えています。
日本はトーゴと独立直後から国交がある
他にもトーゴ政府は手厚い支援政策を行っています。
例えば、会社設立にはお金がかかります。
そこで政府は銀行を通して融資を受けやすいよう、銀行がより積極的に融資が行えるような環境作りをしています。
また遅くて48 時間、早くて24 時間以内に会社を設立できるようになっています。
―それはすごいですね、海外の方もそれらの政策の対象なんでしょうか?―
もちろんです。トーゴはとても とても とても とてもオープンな国なんです。
聞き手が安心するような穏やかな話し方をされる大使
前進し続けるトーゴ共和国
―トーゴが日本に求めていることはなんですか?―
投資はもちろんですが、様々な面における交流を期待しています。
社会的な全ての分野ですが、教育や医療、技術文化面、特に日本の海洋における経験に期待しています。
今年の10 月15 日にアフリカ連合の特別サミットが首都ロメで行われます。
そのテーマが”海洋安全とアフリカの発展”なんですね。
海洋国家である日本は海洋面での経験が豊富だと思いますので、その経験を分けてもらえることを期待しています。
―大使が個人的に力を入れたい事は?―
5つあります。
①日本からトーゴへの投資の促進
先程からお話ししているようにトーゴは投資先として潜在的能力を持った国です。
大使館が投資に関する説明会を開いたりするなど多くの日本の投資家に魅力を伝えたいです。
②日本や国内外問わず多くの人にトーゴを知っていただく事
③トーゴ以外に住む(駐日トーゴ共和国大使館の管轄県内の国に住む)
在外トーゴ人がトーゴ発展のために協力してもらえるようにすること。
それほど多くはないですが、日本にはトーゴ人が住んでいます。
彼らが日本で積んだ色々な経験をトーゴに分けたりトーゴ人同士で共有できるように出来たらと考えています。
④大学間の協力関係の促進
現在、トーゴの大学は様々な国の大学とパートナーシップ交流があります。
私は日本の大学とのパートナーシップ交流も実現させたいです。
その大学間の交流を通して、トーゴ人が工業化学やバイオテクノロジーの分野を学び、トーゴの発展に活かしてほしいのです。
⑤文化交流の促進
トーゴは多様性に富んだ国です。
日本の方々がトーゴへ行ったり、トーゴの文化を日本に紹介する機会が作れたらと考えています。
大使館の玄関に置かれているトーゴの民芸品
―最後に大使が大切にしている言葉を教えてください―
” Work in Progress”
前進するためには頑張らないといけません。
『仕事に対する情熱』 『仕事に対する質』 『良い仕事環境作り』とか仕事に対する姿勢の全てを含めた言葉なんです。
あと仕事を続ける事で3つの悪いことから遠ざかる事が出来るんですね。
『退屈(時間をもてあます事)』
『悪行(悪事を行う事)』
『欲求(お金が無い事が理由で手に入らない、生きる上で必要な物を欲する事)』
好きな言葉なので、私はメールの最後に必ずこの言葉を添えています。
日本にとってのフロンティアがまだまだある
トーゴ共和国という国名を日本で聞く機会は残念ながらほとんどありません。
しかし今回の取材で感じた事は日本で知られていない潜在能力の高い国が世界にはまだまだあるという事です。
トーゴは西アフリカ最大規模で近隣諸国のハブ港として存在感を高めているロメ港を持ち、
政府は積極的に投資手続きの簡略化や会社設立の促進を行っています。
政治も安定し治安もよく、金融体制とインフラ整備も進み、国民の教育システムも確立し人材も申し分ありません。
その成果の表れか2012 年から毎年経済成長率5%をキープ。
IMF 調べで経済成長率が189 カ国中30 位、アフリカ53 カ国内なら12 位という高い水準で発展しています。
アフリカが投資先として注目されて久しいですが、
日本人の私たちはまだまだ把握しきれていない事が多いように思えます。
グローバル社会で生き残るためにはトーゴの様な潜在能力を持つ国をいかに早く見つけ、
どのタイミングで投資するかの判断が大事になってくるだろう。
”アフリカの笑顔”と称されるトーゴ。この大使の笑顔を見れば納得です
セダミヌ トーゴ共和国臨時代理大使 略歴
アフォニョン・クアク・セダミヌ トーゴ共和国臨時代理大使
1978 年 コートジボワール共和国生まれ
2003 年 ロメ大学修士号(公権)取得
2007 年 トーゴ国立行政学院(外交専攻)修了
2008 年 トーゴ共和国外務・地域統一省 入省
2014 年 駐エチオピア連邦民主共和国トーゴ共和国大使館 一等書記官
2016 年8 月 駐日トーゴ共和国臨時代理大使
フランス語、英語、スペイン語を使いこなす。
趣味は空手と読書(特に法学関係)。
既婚。2人の子供がいる。
もっとトーゴ共和国を知りたい方
●駐日トーゴ共和国大使館
●駐日トーゴ大使館Facebook
●国歌の輪プロジェクト トーゴ大使館訪問
国歌研究家国歌の輪プロジェクト代表
浅見良太
埼玉県出身。テレビ番組制作会社を経て現職。
大学2年の時、ヒッチハイクで埼玉~屋久島間を19台乗り継ぎ往復し、自分の知らない世界に触れ、様々な人に出会える旅の面白さを知る。
2007年、初めての海外旅行でインド・ネパールを1ヶ月周ったことをキッカケに就職するまでにバックパッカーで計30カ国を訪問。
旅中、出会った人に出身国の国歌を歌ってもらい、それをボイスレコーダーで録音する“国歌録音活動”を始め、数多くの国歌を収録。国歌の奥深さ、面白さにはまる。
2010年、名古屋の東海テレビプロダクションに入社。情報番組、バラエティ番組、スポーツ番組などでディレクターを務める。同社在社中も仕事の合間をぬって国歌録音、執筆活動を継続。
2015年に退社後、”国歌研究家”として「国歌を通じた国際交流」の普及を目的に、国歌に関する執筆活動や講演、イベント運営などを行っている。
同年4月、国歌を通じた国際交流の普及を目的とした団体「国歌の輪プロジェクト」を立ち上げ、代表を務める。