2017年6月7日
“芸”はコミュニケーション能力の1つだと思っています。
コミュニケーション能力というと“会話能力”というのが出てくるかと思いますが、落語に代表される“話芸”と一緒です。
話芸を操る落語家は舞台に上がる前にある程度話すネタを決めています。そして舞台に上がってネタを話す前に小話をして客の好みや教養レベルなどを図りベストのネタを決定するのです。
これは日常の会話でも同じです。初めて会った人と話す時
「この人はどんなことに興味があるんだろう」
と考えながら自分が持ついくつかの引き出しを出しながら探ります。
これってまさに“芸”!
コミュニケーションとは“芸”なんです。
英語がほとんど話せない筆者は海外で現地の人と仲良くなりたいと思い試行錯誤してきました。
そこで行きついたのは“芸”を身に付け旅をするということでした。
今回は“芸”をコミュニケーションツールとして用意したことで得たメリットをご紹介します。
メリット① 覚えてもらえる
長期同じ町に滞在する場合、宿泊先の近くに行きつけの店を作っていました。
地元の人たちの社交場であるカフェがあれば最高です。
そこで芸を披露します。筆者は南京玉簾を用意していました。
お客さんやお店の人は
『日本人』
ではなく
『南京玉簾の男』
と認識してくれます。
これなら他の日本人旅行客とは違う目で見てくれます。
『あの何だかわからない芸をする日本人』
とタグが付くと格段に顔や名前を覚えてもらえるようになるのです。
アルジェリアを旅行中、カフェで1人のアルジェリア人男性に国歌を歌うと
自分の国の国歌お歌えることに驚きちょっと待ってろと言って店を出ていきました。
彼は
「アルジェリア国歌を歌える日本人がカフェにいる」
友人たちに声をかけに行っていたのです。
彼は8人の友人や職場の同僚を連れ再び現れもう一度国歌を歌うよう頼まれました。
歌うと友人たちも喜んでくれ、以降彼らとお茶友達になることが出来たのです。
メリット② 仲良くなれる
これは経験上の話なので根拠はないのですが、『日本人』と認識されるより『南京玉簾の・・・』と認識されている時の方が距離が近いように思えます。
更に後者の方が話が弾みます!
「今日はアレやらないのか?」
「どうやってやるんだ?」
とか相手が話しかけられるようなネタを提供しているので交流が自然と始まるんです。
あと、当然のことですが芸をすると喜ばれます!
特に南京玉簾の様に他では見たことがない物だとなおさらです。
メリット③ 物事が円滑に進む
『芸は身を助ける』という言葉を実感した出来事がありました。
アフリカ北部、アルジェリアとチュニジアの国境でのこと。チュニジア入国時の検査で足止めされました。
迷彩服を着た2人の男性国境警備員が厳しい表情で旅の目的など様々な事を聞いてきます。さらに荷物検査。そこで出てきたのが南京玉簾でした。
警備員「これはなんだ?」
筆者「南京玉簾です。日本の伝統芸能なんです。」
と言って実際披露しました。
これがウケて今まで表情がなかった警備員の顔が笑顔になり
「分かった、分かった。行っていいぞ。いい旅を」
と言って通してくれたんです。
コミュニケーション能力はトラブルを打破する力を持ちます。
ビジネスにおいても同じです。困難な交渉でも相手との信頼関係があれば、ある程度の問題をクリアにすることが出来る。
相手はロボットではなく人間ですから。
その信頼関係を築く手段として“芸”は役立つのです。
あなたが会社の中で『若手』の立場なら、接待などの飲みの場で“芸”を披露してもいいかもしれませんね。
さらに、相手が同じ“芸”を持っていれば距離は一気に縮まります。
共通の会話ほど強力なコミュニケーションツールはありません。
次回は“芸”の選び方をご紹介
いかがでしたか?
武器を持たずに戦いに挑むより、何かを持って臨んだ方が勝率は上がります。
“芸”を持って損することはありません。
「とは言ってもそんな簡単に“芸”は身につかない」
と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな方にお勧めの“芸”を次回ご紹介します。
お楽しみに!
国歌研究家国歌の輪プロジェクト代表
浅見良太
埼玉県出身。テレビ番組制作会社を経て現職。
大学2年の時、ヒッチハイクで埼玉~屋久島間を19台乗り継ぎ往復し、自分の知らない世界に触れ、様々な人に出会える旅の面白さを知る。
2007年、初めての海外旅行でインド・ネパールを1ヶ月周ったことをキッカケに就職するまでにバックパッカーで計30カ国を訪問。
旅中、出会った人に出身国の国歌を歌ってもらい、それをボイスレコーダーで録音する“国歌録音活動”を始め、数多くの国歌を収録。国歌の奥深さ、面白さにはまる。
2010年、名古屋の東海テレビプロダクションに入社。情報番組、バラエティ番組、スポーツ番組などでディレクターを務める。同社在社中も仕事の合間をぬって国歌録音、執筆活動を継続。
2015年に退社後、”国歌研究家”として「国歌を通じた国際交流」の普及を目的に、国歌に関する執筆活動や講演、イベント運営などを行っている。
同年4月、国歌を通じた国際交流の普及を目的とした団体「国歌の輪プロジェクト」を立ち上げ、代表を務める。