2017年12月15日
世界は身近にあるもんだ ~国歌研究家 日本で海外の魅力を探す~ 第13回
「本当は他の国より日本と・・・」 アヤナ貿易大臣に聞く アフリカ経済をけん引するエチオピアの今
国歌研究家 国歌の輪プロジェクト代表 浅見良太
今年9月、エチオピア連邦民主共和国のアヤナ ゼウディ ウォルクネ貿易大臣が初来日しました。
60年前に王政が終わったのち、紛争や独裁的な政権時代があったりとポテンシャルがあるにもかかわらず経済発展が遅れていたエチオピア。しかし近年、民主化が進み政治が安定すると治安も回復。経済政策にも力を入れたことで、過去15年で平均年12%の経済成長を続けています。
最後のフロンティアと言われるアフリカ諸国の中でも注目されているエチオピアの知られざる魅力をアヤナ大臣に伺いました。
アヤナ貿易大臣
貿易の中心はコーヒー 積極的な投資促進政策
―今回が初来日ですが日本の印象はいかがですか―
日本人が持つおもてなしの心、そして治安の面に感心しました。例えば私がテーブルの上に物をおいて離れても誰も取っていかないんですね。それに誰もごみを路上に捨てず街がとてもきれいな点や美味しい日本食などにも感銘を受けました。
国の立場としてはもちろんですが、個人的にも好きな国になりましたね。
―学生時代、経済学を学ばれていたそうですが興味を持ったきっかけは?―
ご存知の通り日本経済は発展し続けています。また途上国の多くも短期間のうちに大きな発展を遂げていますよね。それに対して、なぜエチオピアは彼らの様なスピーディな発展が出来ないのかという事を子供ながらに思っていました。私が子供の頃の貧困レベルは過酷なものでしたから、どのような信念と経済的な戦略がこの国に必要なのか考えていたのです。
なぜ経済なのかと言えば、経済こそが国が発展するためのメイン要素であると考えたからです。政治を学んでいても経済が主要な要素として関わってくるんですね。現状、自国に資源があっても効果的に使用する術が無い。そこで私は経済を学ぶことで、今までと違う経済的な政策を提案し、新たな資源利用を開発することで戦略を充分に発揮できるのではないかと考えています。
経済を学ぶということは生活をどのようにしていくかを考える事と同じなのです。それによって多くの国民が貧困から抜け出すことができるんですね。
経済発展を進めることで国に献身したいと思い経済を学びはじめました。
―今回の来日目的は?―
我が国への支援要請とエチオピアの投資先としての魅力を伝えることです。
日本政府、JICA、JETROに教育や交通整備、森林の管理、環境保護、輸出や投資のPRなどから支援協力をえています。また大学機関の専門家グループが3ヶ月ごとにアドバイスをしにエチオピアに来て協力をしてくれています。今回彼らに会い意見交換をしました。
日本は我が国にとって重要な輸出相手国です。現在エチオピアは主にコーヒー、ゴマ、革製品を日本へ輸出しています。
今回は主要輸出品であるコーヒー産業の再構築を目標に全日本コーヒー協会などとコーヒーの消費形態や追跡可能なコーヒー生産、品質維持のリフォームについて意見交換もしました。
学生時代から経済分野での自国の発展を目指す
―コーヒー発祥の地であるエチオピアですが、コーヒー産業はどれほど重要なのでしょうか?―
産油国での石油と同じです。
エチオピアでのコーヒーは外貨の25%、GDPの5%を占めていて、人口の約25%はコーヒー産業に直接的または間接的に関わっているんですね。そのため現政権はコーヒー産業に力を注いでいます。
日本はドイツ、アメリカ、ベルギー、サウジアラビアに続き第5位のエチオピアコーヒー輸入国です。
2016年、日本は18,000トンのコーヒーを輸入しており年々増加しています。また、日本は最も高い価格を提示している国ですので我々は最も重要な輸出先国と考えています。
日本の方々は品質の高いコーヒーを求めるので、産地の追跡が可能で高品質なコーヒーを生産出来るシステム構築が重要です。エチオピアは市場の再構築が求められていて、そこを改善できればさらに取引は増加されると考えています。
―投資誘致にも力を入れているということですが―
エチオピアは投資に関する多くの資源があり日本の投資家が来ることを望んでいます。それによって国民が雇用の機会を得られるようにしたいのです。その投資により外貨を獲得するだけでなく経済マーケットへの輸出品を創造し、より多くの経済発展や投資による規模を拡大させていきたいと考えています。
継続的な経済成長をしているのはアフリカ諸国の中でエチオピアだけなんですね。これは個人投資と同様に公共投資による雇用の促進を行っているためです。そのため投資の機会が増えています。また、エチオピアの土地や気候は肥沃で安定していることもあり、毎年のように倍の成長率を生み出しています。
また電気代が約0.3セント/kwと安いことも魅力です。これは海外からの投資だけではなく、国内からの投資が増えている要素です。
私たちは投資がしやすい環境を作るために様々な改善を行ってきました。ワンストップショップサービス(様々な投資に関するサービスを一か所で済ますこと)を普及させ、方々へ出向かずともその場で取引できるようになりました。また以前は企業に多くの書類処理を求めていましたが、最近その問題は解決されつつあります。産業用地ではどの企業も平等に充分にサービスを受けられますし、サービスデリバリ(ITサービス)の改善を進めています。
取り組みによって日本の投資は大きくなってきています。昨年には日本たばこ産業(JT)が進出しました。
“本当は他の国より日本と・・・” 鍵は日本企業がリスクを負う覚悟
―日本との貿易をする際の問題は?―
私たちは日本がエチオピアに投資をするという決断を瞬時にしないことを知っています。
なぜか分かりませんが、日本が投資を実行するまでの動きが中国に比べると遅い。
コーヒー輸出業界で働く私の友人が日本の顧客をつかむには約2年の歳月がかかると言っていました。それは日本人がすぐに決断しないからです。分析に時間を要し中国ほどすぐに進出せず投資に慎重です。日本人は品質に関して保守的であるからだと考えています。
なぜ日本人が即座に投資の決断をしないのか。日本の貿易会社の社員が言うには、システムが複雑であるからだそうです。またリスクの無い他国での投資をしようとしているとも考えられます。しかし常にリスクはつき物です。中国人はリスクありきで物事を考える習性がある。
エチオピアの問題は品質です。品質の観点からすると日本の投資家は評価が高く、日本製品も品質が高い。なので我々は日本の投資家に注視しています。
日本は決断に時間がかかりますが、始まれば途中でやめることなくしっかりやってくれる。なので他の国より日本と一緒にやれたらと思っています。
また、化学薬品の問題があります。日本人は薬品に関して繊細で心配しがちです。
以前、麻袋に薬品が付着していたことで中にあったコーヒーの輸出に制限がかかったことがありました。そういったこともあり現在、コーヒー業界から意見を集め改善と予知に尽力しています。より多くの良さを生み出していくには協働が必要です。私としては政府の研究機関や企業をよくしていきたい。
―今後のエチオピアの課題と対策は―
投資や貿易の各ライセンスを与える手続きに多くの時間が費やされていました。それは改善する必要があると感じています。
また外国の直接投資を充分に履行するための課題として、電力の供給問題が挙げられます。私たちは現在6,000ワット/時を作り出す大型ダムの建設を行っていて、電力不足問題は3年以内に解決されるでしょう。
インフラの改善も課題です。エチオピアの貿易の95%が港を使っているため、より効率的な流通を行うに鉄道の建設も必要です。もちろん鉄道だけでなく、より早い物流の基盤作りが必要でしょう。
どんな質問にも気さくに答えてくれる
エチオピアは投資を検討すべき潜在能力を持つ国
アヤナ大臣はエチオピアだけでなくドイツなど海外でも経済を学ばれていた事もあり客観的に自国を分析しているという印象を持ちました。そんな人物が経済分野の政治的なリーダーとして手腕をふるっている事はエチオピアにとって有益です。
エチオピアには今回話に出なかった様々な魅力があります。実は日本との直行便を持つアフリカ大陸唯一の国で、アフリカ諸国への玄関でもあります。
また内陸国なのですが、近年隣国ジブチにある港と鉄道で繋がり海運も可能となりました。
「それでもアフリカに投資はかなりリスクが・・・」
と思っていませんか?
現在、インドの車生産でトップシェアを誇るスズキが同国に進出したのは30年前。
当時はインフラ整備がほとんどなかった同国への進出には勇気のいることだったと思います。そんなリスクを背負い挑んだ結果が今出ています。
エチオピアは30年前のインドに比べリスクが少ない事は間違いありません。経済も順調に成長し整備も整いつつあり、30年前と違いインターネットという世界をより身近にするものがあります。
大臣の言うようにまだまだ改善できる点は多々あるものの、国の全面バックアップのもとで環境が整いつつある今が一番の投資好機なのではないでしょうか?
アフリアの最有力投資先としてエチオピアから目が離せません!
国歌研究家国歌の輪プロジェクト代表
浅見良太
埼玉県出身。テレビ番組制作会社を経て現職。
大学2年の時、ヒッチハイクで埼玉~屋久島間を19台乗り継ぎ往復し、自分の知らない世界に触れ、様々な人に出会える旅の面白さを知る。
2007年、初めての海外旅行でインド・ネパールを1ヶ月周ったことをキッカケに就職するまでにバックパッカーで計30カ国を訪問。
旅中、出会った人に出身国の国歌を歌ってもらい、それをボイスレコーダーで録音する“国歌録音活動”を始め、数多くの国歌を収録。国歌の奥深さ、面白さにはまる。
2010年、名古屋の東海テレビプロダクションに入社。情報番組、バラエティ番組、スポーツ番組などでディレクターを務める。同社在社中も仕事の合間をぬって国歌録音、執筆活動を継続。
2015年に退社後、”国歌研究家”として「国歌を通じた国際交流」の普及を目的に、国歌に関する執筆活動や講演、イベント運営などを行っている。
同年4月、国歌を通じた国際交流の普及を目的とした団体「国歌の輪プロジェクト」を立ち上げ、代表を務める。